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しおりを挟む大盛り上がりの体育館裏。
「うおおおお!! キモオタが村田さんを倒したぞ!!」
「す、すげぇ!」
沸き立つギャラリー。
当然だろう。学校1の男に最弱のいじめられっ子が勝ったのだから。
「すごいじゃないですか! ヒーローですね!」
ガイドもどこか嬉しそうだ。
「い、いやぁ……恥ずかしいもんだね……」
『ピーポーピーポー』
「ん? 救急車??」
「私が呼んでおいたの!」
「ひ、姫島さん!」
「すごいね! まあ、こうなるんじゃないかと思ってたけど!」
「ははは……でもやりすぎちゃったかな……」
「相手はナイフ持ってたんだよ? これだけのギャラリーが見てたんだから大丈夫だよ!」
「お、覚えてろよ……キモオタ……」
そう言い残し村田は救急車で運ばれた。
「……」
あれだけ喋れれば大丈夫だろう。
教師たちにはもちろん説教されたが、ナイフを持った村田が襲ったという大勢の証言のおかげで大事にならなかった。
「キモオタ! お前強えんだな!!」
「村田って偉そうにしてて苦手だったんだよなぁ」
すっかり僕はクラスの、いや、学校のヒーローになった。
偉そうな村田の態度にみんな嫌気がさしていたようだ。
……たまらない快感だった。
レベルが上がったことの喜びを改めて感じた。
「キモオタ君! LINE交換してよ!」
「あ、私も!」
「ははは、順番だよ? 」
まさか女子とLINEを交換する日が来るなんて……えっと、バーコードはどうやって出すんだ……?
「ちょっと、キモオタ君。調子に乗っちゃダメですよ?」
「ふふふ、ガイド。僕は長年レベル0の苦しみを味わったんだ! いいじゃないかこれくら―――」
『ピピピピ』
携帯電話が鳴る。
『もしもし? 木本君か?』
「アスカさん!?」
『……確認したいのだが、君の学校の村田とかいう冒険者が病院に運ばれたようだが……木本君は関係あるのか?』
「いや……その……じ、じつは僕が……」
『……バカ者!! こんなことのために強くなった訳じゃないぞ!』
「は、はい……」
夢のような時間からあっという間に現実に引き戻された……
『それに君が強いことは周りにバレないようにと言っただろ!』
「はい……」
『まったく! まあ村田というやつもナイフを持っていたというから仕方ないと言えば仕方ないが……とにかく、もう学校で目立つなよ!』
「分かりました……」
『あーそれから……今日の放課後が病院に来れるか?』
「え……? は、はい……」
病院!? なんだろう? 次回、村田のお見舞い! かな?
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