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 その頃、虎石と金剛寺は城の奥へと向かう。

「おい! こっち合ってるのか!?」
「しらねェよ! でも、お姫様を閉じ込めておくなら、城の1番上だろううが!」
「……そうなのか? !! おいッ、危ない!」
 走る金剛寺を掴み止める虎石。

『ビュン!』
 止められた金剛寺の目の前に剣が振り下ろされ、髭が数本舞う。

「あ、あぶねェ……おい、てめェは何者だ?」
 金剛寺は剣の主をにらみつける。

『お前らが侵入者の人間か?』
 尖った耳に、青い肌、先程の魔法使いの男によく似た風貌の長身の男が立ちはだかる。
 魔法使いとは違い、長い剣を持っている。

「……お前も神の使いとやらか」
「けっ! 何人いるんだお前らは? かかってきやがれ!」
 金剛寺は斧を構える。

 しかし、虎石は言った。
「……金剛寺、お前は行け」

「な、何言ってるんだ!」
「……ナオコはお前が助けに行け! この神の使いは見たところ剣使いだ。俺に任せておけ」
 虎石は鋭い眼光で剣を抜く。

「くっ……わかった。頼んだぞ、虎石……ナオコを見つけたらすぐに戻ってくる。死ぬんじゃねェぞ!」
 金剛寺は走り出す。

『この俺と一対一とは、見上げた根性だ。
 お前も剣士のようだな。楽しませてくれよ』
 神の使いは長い剣を構える。

 ◇

 アキラたちに召喚獣を放ち、姿を消した魔法使いは異世界の神に侵入者のことを報告する。

 尖った耳に青い肌。年齢は数100歳を超える老人。
 異世界の神、魔族の長老だ。

『なるほど……人間が来おったか……
 あの女、最近何かこそこそやってると思っとったが……。
 仕方ない、少し早いが計画を始めるかの。
 遅かれ早かれ、あの女の力は弱ってきておる。ダンジョンの崩壊は免れん。
 行こうかのぉ。新世界……人間に!』

『かしこまりました。
 ちょうど今、我々四天王の1人が人間界に侵入したところです。
 城に残ってる3人で侵入者を排除します』
 魔法使いは神の前にひざまずく。

『今日は我々魔族の歴史に残る1日になる。
 人間界への大移動の日だ』
 神はニヤリと笑う

 ◇

 召喚獣の蛇を倒したアキラたち。
『魔法の糸電話』が鳴る。

『もしもし、アキラ先輩ですか? そっちはどうですか?』
 電話は人間界に残った御剣からだった。

「俺たちはナオコさんのいる城に着いたよ。
 神の使いとかいう、青い肌の魔族に手こずってるところだ。とんでもなく強い、今まで戦ったどんなモンスターよりも……」

『あ、青い肌の魔族!? そんなのの相手、大丈夫ですか?
 こっちも少し前から、昼だって言うのに空が真っ暗なんです。空からモンスターもチラホラ現れ始めて……今までのモンスター災害とは全然違うんですよ。
 こっちはこっちでなんとかするんで、アキラ先輩たちも気をつけてください!
 出口の扉も壊されないように死守しますから!』

「頼んだよ! 頑張ろう!」

 ◇

「アキラ先輩たち、城に着いたみたいですね」
「ホッホッホ、虎石と金剛寺もおるんじゃ、安心しろ。」

 御剣と共に人間界に残った柳生。アキラたちの入っていった扉を守り、モンスターから町を守ろうとダンジョン省で待ち構える。

「それにしても不気味な空ですね……
 アキラ先輩たちは城で魔族と戦ってるみたいです。
 めちゃくちゃ強いみたいですよ。肌も青いとか?」

「ほう。魔族か……肌が青いというと……あんな感じかのぅ?」
 柳生は空を指差す。
「……え!? 空に人? 肌が……青い……!?」

 薄暗い空の中、長い槍を持った青い肌の男に気づいた柳生と御剣。

『ここが人間界か……悪くないな
 とりあえず、神がいらっしゃる前に邪魔者は消しておくか……』
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