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 ナオコを異世界に閉じ込め、エネルギーを利用し、ダンジョンの崩壊を防ぐ。
 それが異世界の神の狙いだ。

 神の使いである黒い影に、そんな話をされたナオコは当然、従うわけはない。
 彼女は強力な冒険者、黒い影と戦うことも考えた。
 しかし、黒い影は言った。

 もしナオコが断れば、ダンジョン崩壊を防ぐために人間のエネルギーを求め、トンネルを使い人間界と異世界を繋ぐ、と。
 しかし、それはダンジョンのバランスを崩すため、最終手段だ。

 ナオコは自分が異世界であるこのレベル100のダンジョンに留まり人間界を守るか、モンスターに人間界を滅ぼされるかの選択を迫られた。

 理不尽な申し出だが、ナオコは異世界に留まるしかなかった。
 ナオコは最後に一度だけ人間界に戻りたいと言った。
 黒い影はナオコがそのまま逃げ出す心配はしていなかった。
 ナオコが逃げれば、人間界が滅ぶからだ。ナオコが1番恐れているのはそれだと異世界の神は分かっていた。

 ◇

「う、嘘だろ……? ナオコにそんなことが……」
 怒りで震える金剛寺。

「異世界の神……? クソ、ふざけるなっ!」
 机を叩く虎石。

「ああ……そしてナオコは最後にこちらに戻ってきた時に、この話をアタシだけにしたんじゃ。
 そして、この事は絶対秘密にしてほしいと」

「な、なんでだよ……! ナオコのバカ野郎!
 俺たちにも話してくれれば……」
 悔しそうな金剛寺。

「この話を金剛寺たちが知ったら何が何でも止めただろう?
 そうすればモンスターがトンネルを通じ人間界にやって来てしまう……
 ナオコが異世界に囚われていると知ってもお前たちなら、なんとしてもレベル100の扉を探し出し、助けに行くだろうと。
 だからナオコは自分が行方不明と言うことにしたんじゃ。この世界と……お前たちを守るためにな……
 あの頃のお前たちではレベル100のダンジョンなんて行った日には瞬殺じゃ」

「……うぅ、バカ野郎……」
 泣き崩れる金剛寺。

「ナオコは特に金剛寺には言わないでくれと念を押されてな……婚約者だったお前にはな……」

「え!? ナオコさんは店長の……婚約者!?」
 衝撃の事実を知ったアキラたち。
 金剛寺が昔話を語りたがらなかったのはこのせいなのだろう、と思ったアキラ。

 20年越しに婚約者の悲しい秘密を聞いた金剛寺は憔悴した様子だ。

「金剛寺……黙っていてすまなかった」

「うぅ……遅ェんだよ……もっと早く知っていたらっ! 今更、そんなこと知ったって……」

「金剛寺! いつまで泣いてるんじゃ!」
 老婆が金剛寺を怒鳴りつける。

「なぜ、今はアタシがこの話をしてるか分かるかい?」

「うるせェババア……な、なんでだよ……?」

「やっと……やっと、ナオコを……孫を助け出す準備ができたからじゃよ!」
 老婆はニヤリと笑う。

 言葉を失う金剛寺。
「……ナ、ナオコは生きてる……?」
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