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 アキラの部屋

「だ、大丈夫ですか……?」
 帰ってくるなり、血まみれのアキラに驚く花子。

「ちょっとラッキースケベ……いや、トラブルがあってね……ふふふ」
 血まみれながらも、笑顔のアキラ。彼は幸せそうだった。

「幸せそうで何よりですが、キモいですね……」

 ◇

「アキラさん、今日はもう1本、軽く配信しませんか?」

「えっ? 今日2回目の配信? ゴリラと戦ってクタクタだっていうのに……」

「分かってます。
 アキラさんの剣はボロボロで使えないんですから、無理のない低レベルのダンジョンにしましょう。視聴者も増えてきてる今が大事な時期なんです!」

 熱く語る花子、コンビでの配信になり、登録者も増えた今こそ頑張り時だと彼女は分かっていた。
 せっかく人気が出ても、すぐに勢いの止まってしまった配信者をたくさん見てきたのだ。

 疲れてはいたが、アキラはそんな花子の熱意を感じた。
「よし! 花子さんがそこまで言うなら行こう。
 俺はプロデューサーの事は信じてるよ」

「アキラさん……」
 アキラの言葉に心を打たれる花子であった。

「今が『アキラちゃんねる』の勝負所だもんね! 頑張ろう!」

「はい、その通りです! いきましょう。
 あ、その血まみれの服は着替えてくださいね?」

 アキラと花子は、いつものように机の引き出しからダンジョンへと向かう。

 ◇

 まどかの部屋

 その頃、
 隣の家のベランダに干してある『アキラちゃんねる』のヘルメットを見つけたまどか。

「まさか隣に『アキラちゃんねる』のアキラが住んでいたなんて……
 言われてみれば、さっきの変態男と配信者のアキラは声もソックリだわ」

 まどかは自分の部屋の窓から、双眼鏡でアキラの部屋を覗き込む。

「変態め……『アキラちゃんねる』を終わらしてやるわよ!」

 アキラにハダカを見られた恨み、花子に人気女配信者の地位を奪われた恨み。
 まどかは怒りの炎に燃えていた。

 自分も双眼鏡で覗く、立派な変態なことには気にも留めず、『アキラちゃんねる』の弱点、秘密を探ろうとするまどかであった。

「ん? あ、あれは花子!?」
 まどかはアキラの部屋にいる花子の存在に気づいた。

 これで隣人のアキラ=配信者のアキラが確定した。

「なるほど……悔しいけど確かに美人だわ……
 でもコンビでやってるとはいえ、普通、男の部屋まで来るかしら?
 もしかして2人は付き合ってるの……?
 ふふふ、これは良いことを知ったわ!」

 熱狂的なファンのつくことが多い女性配信者にとって、彼氏の存在は大ダメージだ。
 まどかはいざとなったらこのスキャンダルをリークしてやろうと思った。

「残念だったわね『アキラちゃんねる』! あんた達はもう終わりよ!」

 しばらくアキラの監視を続けるまどか。

「それにしてもあの男……よく見ると素顔も悪くないんだから、ヘルメットなんてやめればいいのに、女性ファン増えそう……ハッ! わ、私は何を言ってるの!? バカバカッ!」

 1人顔を赤らめる思春期真っ盛りのまどかであった。
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