上 下
33 / 183

33

しおりを挟む
【まどかチャンネル視点】

 ネットショッピングで大量のダンジョンアイテムを購入したまどか。
 早く届かないかと楽しみ待っている。

 しかし、なかなかインターホンは鳴らない。
「おかしいわね……今日には届くはずなのに……」

 そうこうしているうちに夜になってしまった。
 当然、こんな夜遅くに、もう配達はこない。

「もう! ムカつくわね! 届くのは明日なの!?
 あーイライラする、お風呂入ろっ!」

 残念ながら、楽しみに待っていた配達物が届かなかった。
 ネットショッピングではたまにあることだが、一刻も早く花子に勝つために、顔出し配信をしたかったまどかは怒っていた。

 この時、まどかは知らなかった。
 大量のダンジョンアイテムの段ボールは配達ミスで隣人の家に届いていることを……

『ピンポーン』

 入浴中のまどか、家のインターホンが鳴る。
「え!? もしかして……くっ、こんな時に限ってパパもママも出かけてるなんて!」

 まどかは風呂を飛び出す。
 当然、普段なら入浴中のインターホンなど無視をする彼女だが今日は違う! ダンジョンアイテムが届いたのかもしれないのだ。

「えっと……とりあえずタオルだけ巻いて……っと」
 当然、普段の彼女はタオル一枚で配達物を受け取ることは無い! しかし今日は違う……普通のJKの持つ羞恥心は吹き飛んでいた。

 タオル一枚で配達物を受けとる、そんなA〇のようなシチュエーションだが、今の彼女は必死だった。

 玄関ドアの覗き穴から心躍らせ外を見る。

 しかし……
「ん……? 誰……?」

 外にいるのはどう見ても配達員ではない、30歳前後のどこかで見覚えのある男性だ。

「なによ……もうっ!」
 ドアを開けず風呂に戻ろうと思ったまどか、しかし、外の男が大きな段ボールを持っていることに気づく。

「あっ! あの段ボールもしかして……? でもどうして!?」

 自分の配達物をなぜ配達員でもないこの男が!?
 不思議なことはたくさんあったが、まどかはドアを少し開く。バスタオル一枚ということあり、慎重に。

「なんですか……?」
 まどかはそとの男に声をかける。

「あ、隣のいちじくです。ウチにオタクの荷物が間違って届いてしまったみたいで、持ってきました」
 隣人のいちじくアキラだった。

(ああ、隣の家の人か。なるほど……配達ミスね……まったく、なにやってるのよ配達員は!)

「あー、すみません。ありがとうございまーす」
 バスタオル一枚のまどかは、少しだけ開いたドアから片手だけ出し、段ボールを受け取ろうとする。

「あの……メチャクチャ重い段ボールなんで片手じゃ持てませんよ……玄関に入れますよ?」

(何言ってんの、この変態! こっちはJKがバスタオル一枚なのよ!!)
 そんなことを知るわけない親切なアキラを理不尽に怒るまどか。

「いいからッ! そこに置いといて!」
 強い口調で怒る彼女。

「じゃあ、ここ置いておくんで!」
 わざわざ荷物を届けたのに、不機嫌な対応をされるアキラはイラついている。

(ふぅ……ちゃんと届いててよかった。早く帰りなさいよ、この男!)
 JKは自分が世界の中心にいると思い込んでいるのだ……

 しかし、そんなワガママJKまどかに悲劇が起こる。
 早く段ボールを取りたいあまり、玄関から身を乗り出すまどか。

 その時、段ボールを置いたアキラは顔を上げ、まどかを見る。

「キャッ! 見ないでぇッ!」

 バスタオル一枚のまどかは恥ずかしがりタオルを抑える。
 しかし、手を滑らせたまどかのタオルは宙に舞う。

「キャッーーーッ!!!」

 あまりのショックにそれからことは覚えてない。男が鼻血を噴き出したことだけが記憶に残っている。

「うぅ……し、死にたい……」
 まどかはベッドで泣きじゃくる。高校生の彼女がハダカを見られたのは初めてのことだった。

「くそ……あの男の記憶を消したい……ハッ! そうか、殺せば……」
 気が動転し、恐ろしいことを考えるまどかであった。
 しかし、アキラは親切心でやってくれたことだ、悪いのバスタオルで外に出たまどかなのだ。

「はぁ……もう嫌だぁ……お嫁にいけないわ……
 せめてもの救いは、あの男がほとんど付き合いのない隣人だったってことね……」

 まどかは自分の部屋から憎き変態、アキラの家を見る。
 それほど立派ではないアキラの家、ふとベランダに目が行く。

「ん? なに干してるのかしら? ああ、ヘルメットね……え!?」

 まどかは気づいた。

「あのヘルメット……あのステッカーは……!?」

 見覚えのあるステッカーの貼られたヘルメット。
 それは間違いない、『アキラちゃんねる』で使われているヘルメットだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

モブ高校生と愉快なカード達〜主人公は無自覚脱モブ&チート持ちだった!カードから美少女を召喚します!強いカード程1癖2癖もあり一筋縄ではない〜

KeyBow
ファンタジー
 1999年世界各地に隕石が落ち、その数年後に隕石が落ちた場所がラビリンス(迷宮)となり魔物が町に湧き出した。  各国の軍隊、日本も自衛隊によりラビリンスより外に出た魔物を駆逐した。  ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。  その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。  彼らは通称カーヴァント。  カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。  カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。  しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。  また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。  探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。  つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。  数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。  月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。  彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。  そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。  勿論二世だ。  斗枡が持っている最大の能力はカード合成。  それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。  彼はその程度の認識だった。  実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。  単純な話ではないが、経験を積むとそのカーヴァントはより強力になるが、特筆すべきは合成元の生き残るカーヴァントのコストがそのままになる事だ。  つまりランク1(コスト1)の最弱扱いにも関わらず、実は伝説級であるランク10の強力な実力を持つカーヴァントを作れるチートだった。  また、探索者ギルドよりアドバイザーとして姉のような女性があてがわれる。  斗枡は平凡な容姿の為に己をモブだと思うも、周りはそうは見ず、クラスの底辺だと思っていたらトップとして周りを巻き込む事になる?  女子が自然と彼の取り巻きに!  彼はモブとしてモブではない高校生として生活を始める所から物語はスタートする。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...