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「で、お前は会社を辞めたいと……?」
「は、はい……」
翌日、アキラは会社に着くとすぐに上司に呼び出された。
緊張感が高まる会議室。
「九……俺は悲しいよ……なあ? 考え直さないか?」
「いえ……もう決めたんです!」
「ぐっ……コイツ、意志が固そうだな……」
アキラの精悍な眼差しに怯む上司。
しかし、上司は引かない。アキラに辞めれると困るのだ。
「おい! 分かってんのか? 部下のお前が辞めるとな……上司の俺の評価が下がるんだよぉぉおッ!!」
上司は顔を真っ赤にし、声を荒げる。
アキラに辞められると、部下の管理力不足の烙印を押されてしまうのだ。
(コ、コイツ……この期に及んで自分のことばかり! まぎれもないブラック企業ソルジャーだ!)
ちなみに、アキラはそれほど優秀なサラリーマンではない。
過酷なブラック企業では、多くの社員は入社してすぐに辞めていく。
ブラック企業のヤバさに気づく賢さを持った人間ほど、早めに脱出するのだ。
そんな中、数年間「ヤバいヤバい」と言いながらも働いてきたアキラは、ブラック企業にとっては必要な人材であった。
アキラのようなエリート・ブラック・ソルジャーは引き止められ、辞めるときは一苦労なのだ。
「俺は……お前を……辞めさせない!! 俺はお前を評価してきたんだ! 厳しいノルマは愛の裏返しだ!」
上司はアキラの胸ぐらに掴みかかみ、熱く説得(脅迫?)する。
「ぐぁっ!」
(す、すごい力だ……部長のパワーなら素手でレベル10くらいのダンジョンクリアできそうだな……)
くそ! 鉄の剣を持ってくればよかった。と思うアキラであった。
「九! 俺と一緒に……この会社で天下を取ろう!!」
キマっている熱い瞳でアキラを見つめる上司、彼もまた、哀しきエリート・ブラック・ソルジャーなのだ……
「て、天下!?」
(なんだろう……最近このワードをよく聞く気がするな……)
『私とダンジョン配信で天下を取りましょう!』
花子の言葉がフラッシュバックした。
(はっ! そうだ……俺は……!)
今までのアキラだったら、上司に説得されて嫌々ながらも会社に残っていたかもしれない。
しかし、今のアキラは違う!
人気チャンネル『アキラちゃんねる』の配信者だ。
花子と天下を取ると誓ったのだ!
「俺は……辞めるんだぁぁぁあ!!」
「ぐわーーっ!」
掴みかかる上司の腕を振り払う。
「はぁはぁ……部長! 長い間、くそお世話になりましたッ!」
一度は言ってみたいと思っていたあのセリフを言い放ち、アキラは辞表を上司の顔に叩きつける。
「部長……チャンネル登録……お願いします!」
パワハラ上司との死闘に勝利し、アキラは会社をあとにした。
清々しい気分だった。
見上げた空の美しさはいつもとは違った。無職になって眺める空は格別なのだ。
「無事、辞めれたようですね!」
会社の外では花子が待っていた。
経理部の花子は辞表を出し、サクッと簡単に辞められたようだ。
「うん、辞められたよ。厳しい戦いだった……」
「これでもう、私たちは配信者として突き進むしかなくなりましたね!」
「ああ! 取ってやろう! 天下を!」
九アキラ26歳 無職、狙うは配信者ドリーム一本だ!
「は、はい……」
翌日、アキラは会社に着くとすぐに上司に呼び出された。
緊張感が高まる会議室。
「九……俺は悲しいよ……なあ? 考え直さないか?」
「いえ……もう決めたんです!」
「ぐっ……コイツ、意志が固そうだな……」
アキラの精悍な眼差しに怯む上司。
しかし、上司は引かない。アキラに辞めれると困るのだ。
「おい! 分かってんのか? 部下のお前が辞めるとな……上司の俺の評価が下がるんだよぉぉおッ!!」
上司は顔を真っ赤にし、声を荒げる。
アキラに辞められると、部下の管理力不足の烙印を押されてしまうのだ。
(コ、コイツ……この期に及んで自分のことばかり! まぎれもないブラック企業ソルジャーだ!)
ちなみに、アキラはそれほど優秀なサラリーマンではない。
過酷なブラック企業では、多くの社員は入社してすぐに辞めていく。
ブラック企業のヤバさに気づく賢さを持った人間ほど、早めに脱出するのだ。
そんな中、数年間「ヤバいヤバい」と言いながらも働いてきたアキラは、ブラック企業にとっては必要な人材であった。
アキラのようなエリート・ブラック・ソルジャーは引き止められ、辞めるときは一苦労なのだ。
「俺は……お前を……辞めさせない!! 俺はお前を評価してきたんだ! 厳しいノルマは愛の裏返しだ!」
上司はアキラの胸ぐらに掴みかかみ、熱く説得(脅迫?)する。
「ぐぁっ!」
(す、すごい力だ……部長のパワーなら素手でレベル10くらいのダンジョンクリアできそうだな……)
くそ! 鉄の剣を持ってくればよかった。と思うアキラであった。
「九! 俺と一緒に……この会社で天下を取ろう!!」
キマっている熱い瞳でアキラを見つめる上司、彼もまた、哀しきエリート・ブラック・ソルジャーなのだ……
「て、天下!?」
(なんだろう……最近このワードをよく聞く気がするな……)
『私とダンジョン配信で天下を取りましょう!』
花子の言葉がフラッシュバックした。
(はっ! そうだ……俺は……!)
今までのアキラだったら、上司に説得されて嫌々ながらも会社に残っていたかもしれない。
しかし、今のアキラは違う!
人気チャンネル『アキラちゃんねる』の配信者だ。
花子と天下を取ると誓ったのだ!
「俺は……辞めるんだぁぁぁあ!!」
「ぐわーーっ!」
掴みかかる上司の腕を振り払う。
「はぁはぁ……部長! 長い間、くそお世話になりましたッ!」
一度は言ってみたいと思っていたあのセリフを言い放ち、アキラは辞表を上司の顔に叩きつける。
「部長……チャンネル登録……お願いします!」
パワハラ上司との死闘に勝利し、アキラは会社をあとにした。
清々しい気分だった。
見上げた空の美しさはいつもとは違った。無職になって眺める空は格別なのだ。
「無事、辞めれたようですね!」
会社の外では花子が待っていた。
経理部の花子は辞表を出し、サクッと簡単に辞められたようだ。
「うん、辞められたよ。厳しい戦いだった……」
「これでもう、私たちは配信者として突き進むしかなくなりましたね!」
「ああ! 取ってやろう! 天下を!」
九アキラ26歳 無職、狙うは配信者ドリーム一本だ!
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