9 / 183
9
しおりを挟む「ここがダンジョン……異世界なんですね……」
花子は興味深そうに壁や地面を触っている。
「配信ではいつも見てましたけど、やっぱり生は違いますね! それにしても、この並んだ扉は本当珍しいです」
花子は番号が書かれた扉を眺める。
「一般的なダンジョンだと、入り口を入るとすぐに冒険が始まるんですけど、アキラさんのダンジョンはこの扉に入ってからが冒険スタートですね」
二人はハシゴを降りた、この扉が並ぶ廊下を『ロビー』と呼ぶことにした。
「さあ、今日はどのレベルにしようか!?」
やっと今日も配信ができるとウキウキのアキラ。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私はダンジョン初めてなんですからね! 低レベルなダンジョンにしておきましょう」
「まあそうだよな。俺だって2回目だし。じゃあ昨日はレベル1だったから、レベル2のダンジョンでいいかな?」
「そうですね。それくらいなら」
「じゃあカッコよく撮ってくれよ!」
アキラは目出し帽を装着する。
「……なんか、空き巣に入ろうとしてる犯罪者にしか見えませんね。服もダサいジャージだし」
「うるさいな! 仕方ないだろ!」
「一刻も早く衣装を用意しますね。あっ、あとこれを耳につけておいてください!」
花子はアキラにワイヤレスイヤホンを手渡す。
「イヤホン?」
「はい! 前回の配信のアキラさんがあまりにも素人っぽかったので、コチラから指示しますね」
花子は胸元に小型のマイクを付ける。
「素人っぽいって……素人だし……」
アキラはしぶしぶ、目出し帽の下にワイヤレスイヤホンを装着する。
スマートフォンを構える花子。
「それじゃあ、『アキラちゃんねる』配信開始です!」
配信を始めてすぐに視聴者が集まる。
『視聴者集まりました! 始めてください!』
ワイヤレスイヤホンに花子の声が聞こえる。
(なるほど、これは便利だな!)
「ゴホン、えーっ、みなさん! 今日も『アキラちゃんねる』の始まりです」
◆コメント欄◆
【名無し お、昨日のやつか。なんだそのマスク!?】
【名無し 今日もやんのか 金あんなぁ】
【名無し 銀行強盗かよwww】
【名無し は? カメラマンつき? 生意気ね】
さっそく書き込まれたコメントに返事をするアキラ。
「お、そうです! 今日からカメラマンでチームメンバーの花――」
『あっー! 待ってください!』
花子は自分を紹介しようとするアキラを止める。
『花子とは言わず、「アシスタントと来た」とだけ! 女がいる感は出さないでいきましょう』
(なるほど……考えもしていなかったが、配信者として活動するなら彼女や異性を匂わすのはよくないんだろうか)
「えーっ、カメラマンとして、アシスタントの人に来てもらってます!」
さっそく、名プロデューサーぶりを発揮する花子であった。
「今日は昨日よりも難易度を上げて……レベル2のダンジョンへ行こうと思います!」
アキラは昨日の戦利品 木の棒を高らかに掲げ、レベル2と書かれた扉を開く。
応援ありがとうございます!
22
お気に入りに追加
687
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる