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第1章 妹と新学期
第1話 妹は入学式にて窮地
しおりを挟む「くぁぁっ……ぅぅん…」
昨日あんなに昼寝をしてしまったのによく眠れた
餅丸より先に起きてしまったな
でも入学式の当日だし早起きでも何も問題はないね
さてさて、着替えたら餅丸を起こしに行こうかな
そうしていつもの服に着替える…ん?待てよ入学式なら正装じゃないといけないじゃん
正装が汚れてしまっては困るので、先に餅丸を起こしに行くことにした
家の横に隣接してある鳥小屋に入っていく
ひと部屋分ほどの間取りがある小屋だが中にいるのは餅丸1人、いや1羽である
「おっはよ~もっちまr……!?」餅丸の可愛いおしりの下に何やら白いものが見えた
「も、もしかして卵?」疑心暗鬼に近づくと餅丸がそこから動き、白いものの全貌が見える
なんと卵でした……餅丸ぅ…お前メスだったのかぁ…………
6年以上過ごしてきた愛鳥の性別が今になってわかりショックを受けた
そんな落胆しているわたしをよそに餅丸は日課を行う
”コケコケッッコケコッコココッッッーーーー!!!”
さてさて、そんな事がありましたが今日は待ちに待った入学式
わたしもきちんと正装に着替えてから学園へ向かいます
今日の学食は入学をお祝いしてアサドリの唐揚げなんだとか
食堂には行かないようにしよう……弁当も持っていっとこ
というか生徒たちの晴れ舞台の日に何考えてんだわたしは
あれ?今日って7時集合だった気がする
わたしは予定表を取り出し確認する、そこには7時集合とちゃんと書かれていた
慌てて時計を見ると…”6時55分!!”
わたしはすぐに家を出た
◆◆◆
初日から遅刻をかますかと思われたがなんとか間に合った
え、間に合わんだろ!って?でもわたしは転移魔法が使えるんですよねー
だから間に合いました!自分の魔法に感謝しなければ
そんなことより集合の理由です
最終打ち合わせ的なので呼ばれたんだとか
魔法学園と言っても根は普通の学校と変わらないからねー
学長いわく生徒入場は9時からだそうだ
それまでに生徒にクラス表が配布され、クラス順に並ぶんだとか
4年前にやったの思い出すな~あの頃は何もかも楽しかったっけ
自分が鼻歌を歌っているのに気づかないほど浮ついているわたしは休憩室に歩いていった
朝に飲みそびれたコーヒーを飲んでいると、またもやリリアが現れた
「リリアとは休憩室で絶対会うね~」率直に思ったことを言うと
「あ、えと、それは私がシア先生を追いかけてるからでして………」もごもごとそんな事を言った
「え!ストーカーッ!?」ふざけてみる
「ちっ違いますっっ‼‼」顔を真っ赤にして涙目になっている、可愛いなあ
わたしがリリアの頭をそっと撫でて”冗談だってぇ~”と言うと
「泣き虫ですいません、もう20歳になるっていうのに恥ずかしいです…」と言った
泣き虫でも可愛いから良いでしょ・・・ん?
今、20歳って言ったな。わたしより4つも上じゃないか
「リリアってわたしより4つも上だったんだね」どんな反応がくるのか
「だってシア先生の学生時代知ってますからね」
「ちょっと待って、それは良くない」あんまり学生時代の話は掘られると困る
「良いじゃないですか~私ばっかり揚げ足取られてるんですから!」ぷくっと頬を膨らます
とても年上には見えない可愛らしさがある。わたしがないだけかもだけど
「とりあえず敬語やめようよ、なんかむず痒いからさ」話を逸らす
「わかった!入学式頑張ってねシア!」
「いきなり変えたね」
「だって~」
休憩室に2人の笑い声が響いた
ふと、ザワザワと人の声が聞こえてきた
休憩室の窓から生徒寮を覗くとぞろぞろと出てきて整列を始めている
「おっと、そろそろ行かないといけないや」
それを聞いたリリアが納得したようにわたしにこう言う
「頑張ってねシア!陰ながら応援する‼」そんな友達らしい会話をしてからわたしは休憩室を出た
整列した生徒たちは誘導員に連れられて入学式会場へと入場する
ここは本来、魔法の実技授業や魔法の実験といった用途で使われる。それ故にかなり広い
今年入学する生徒は250人で、わたしはそのうちの50人を受け持つことになる
今から不安だなぁ
会場には多くの先生がすでに整列していた
なんかわたし毎回のように遅れてない?それとも皆が早いだけかな?
それはそうとして、わたしも急いで並ぶ
入学式は学長の話、主席挨拶、教員紹介、退場のような順序で進められる
でも、まる半日かかります。なぜかって?
そりゃ学長の話が長いからだよ。わたしのときもそうでした
どの学校の校長とかも長いんだろうけどウチは格別
前置きが30分とか頭おかしいからなぁ、今年の生徒は耐えれるかな?
おっと、学長の話が始まったようだ。ここから地獄だぞ……
耐えれるかな?生徒たち、そしてわたし
◆◆◆
結論から言ってしまおう。学長は2時間話しました
いや、流石に拷問の一種でしょ。何人かぶっ倒れたし
え?わたしですか?周りの先生によると寝てたんだとか
遅刻して寝てってサボりの学生みたいでちょっと恥ずかしい、以後気をつけます
そんな学長の話が終わったあと、ファルカの挨拶が行われる
一国の王子だけあって文に重みがあり、堂々としたスピーチだった。何より短いのが良いところだ
そう思っているうちにファルカが段から降り、次のプログラムに移る
ついに教員紹介の時間だ
緊張するな~しかも1番最初に呼ばれるわけだし、寝てたから目が充血してるかもだし
「それでは次のプログラムに移ります。教員紹介」司会の声が響く
ゆっくりと深呼吸をして、手に”命”と3回書いて飲み込む
これって緊張を抑える効果あったよね?
「1年1組担任、シア・レスターヴ先生」呼ばれました
「はい」プルプルする口をなんとか沈めて、つぶやくように言う
1年1組の列の前に立ち、一礼をして一言…
「今年1年、担任をすることになりました。シア・レスターヴと申します。どうぞよろしくおねがいします」
会場で拍手とざわめきが起こる
そりゃざわめくよな
だってこの国とまったく同じ名前が出たんだもの
この”レスターヴ王国”とまったく同じのね!
何を思って兄はこの国名にしたのか……!!
めっちゃ恥ずかしいし、兄のセンスを疑ってしまう
「静かにしてください。続いて1年2組担任…………
司会がこの場を鎮めてくれて助かった
でなければ、ずっと恥ずかしいままだったし
ありがとう!名前も知らない司会の人…‼
予想はしていたけど、かなり恥ずかしい目にあった入学式だった
兄め、次に会ったときは覚えておけよ……!!恨みがましく思いながら生徒を教室へ連れて行く
「ここが1年1組のホームルームです。毎朝8時30分にはここへ来るようにしてください」
担任の務めもあるのでしっかりしないとね!学長の話は寝てたけど!
今日の授業的なものは自己紹介だけでいいらしい
まぁ学長の話で時間なくなったしねー
「今日は自己紹介をして終わりなんだそうです!それじゃあファルカ君から行きましょう!」
生徒などお構い無しで自己紹介を始めようとする教師…ダメなんだけど皆も帰りたいでしょ
先生なりの優しさってことにしてください
「先生、少し良いですか」ファルカが口を開く
え、なんかやらかした?どこでミスった?やっぱ生徒の意見聞いた方が良かった?
わたしは焦る。てか焦ってばっかりだわ
でも、その心配は次のファルカの言葉で消し飛んだ
「先生はこの国の王の妹なのに何故、教員になったのですか?」
瞬間、教室は静まり返る
長い沈黙がこの空間を包み、わたしを蝕む
今のわたしは追い詰められた死にかけのネズミも同然
生徒全員に目を向けられ、存在意義を問われている
そんな大げさじゃないだろって?存在意義ってオーバーだなって?
馬鹿にしないでほしい。そんなことはない
ならば聞いてもらおう
わたしにとって…わたしにとって…教師という道は………
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