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第一話 着火マンは追放された
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「お前のような初歩魔法しか使えない出来損ないは、伝統あるデズモンド魔導伯爵家には要らぬっ!! この家から出て行けっ!!」
豪華な大広間に父の声が響いた。
父の隣で従兄弟のビオランテがニヤニヤ笑っている。
いきなり勘当宣言された私なんだが、とても困惑している。
初歩の攻撃魔法しか使えないって?
私は大学で専門的に魔術を習ったのであるが。
成績の方も首席で卒業したのだが。
これは困ったなあ。
「父上、お考え直し下さい、私は魔法によって領内経営に貢献しております」
「黙れ黙れ黙れっ!! デズモンド家にとって魔法とは攻撃魔法だっ!! 我々は魔法による武力によって王国に貢献しておる魔導伯爵家だっ!! 姑息な魔法で平民どものご機嫌取りをする家では無いっ!!」
いやいや、父上は何百年前の貴族魔法概念なのかと。
アセット魔法で戦うなんて、魔力の無駄でしか無いんだが。
と、言おうと思ったのだが、どこから説明すれば良い事やら。
もうね、デズモンド家の魔法の概念は古いんですよと、王都の魔法大学では新しい魔法利用理論が続々と確立されていましてね、戦闘する魔法使いなんて古いと思うんですよ。
と、説得したいのだが、父はゴリゴリの攻撃魔法主義だからなあ。
納得させられる気がしない。
「マレンツ、お前を廃嫡し、このビオランテを次代のデズモンド家当主に据える。これは決定だっ!!」
「はあ?」
「はっは、貴様のような出来損ないはこの家から出て行け、デズモンド家の当主には、三属性に適正があり、四階層までの攻撃魔法が使えるこの俺ビオランテこそふさわしいのだっ!」
「はあ」
三属性四階層攻撃魔法なあ、さぞや強いんだろうな、ビオランテよ。
だけど、だけどお前、それアセット魔法だぞ。
どうしようかね。
……。
…………。
別にいいかあーっ。
もう大学も出して貰ったしなあ。
私はデズモンド領を魔法で改革しようと頑張ってきたけど、父が気に入らないならなあ。
どうせ魔法の研究ならどこでもできるし。
元々貴族の付き合いとかあまり興味無いしな。
「わかりました、父上、これまでお世話になりました」
私は父に向かって深くお辞儀をした。
「今すぐ出て行け、顔も見たく無いっ!」
「ははっ、負け犬の無能力者めっ、これからのデズモンド家は俺がもり立ててやるから安心して野垂れ死ねっ」
ビオランテが顔をゆがめて笑いながら言った。
「それでは出て行きますが、支度金などは……」
「ふざけるなっ! 着の身着のまま出て行けっ!! お前が無駄遣いした学費を返済させないのが親の情けと思えっ!」
なんで、こんなに父に嫌われたかな。
ビオランテが何か吹き込んだかもね。
まあ、魔法の基礎研究ばっかりで、攻撃魔法とか覚えなかったからなあ。
唯一使えるのは基礎魔法の【着火】だけだし。
なにか攻撃魔法を覚えて父のご機嫌を取っておくべきだったかな。
だけど、所詮はアセット魔法だしなあ。
それに、私は魔力保有量低いんだよ。
「それでは失礼します。父上これまで育てて頂いてありがとうございました。体にだけはお気をつけください」
父はじろりと私を睨むと、しっしと犬を追い払うように手を振った。
自室に戻り、トランクに着替え等を詰め込んだ。
私のこれまでの人生は、学校の寄宿舎だったり、大学の研究室にいたりで、領城の自室もそんなに使って無かったから荷物もそれほどでも無い。
トランクを持って廊下に出ると、メイドのステイシーが駆けよって来た。
「やあ、ステイシー、これまでありがとう」
「マレンツさまっ! この家をお見捨てになられるのですかっ、あなたが居なければこの家は没落してしまいますっ!」
「そんな事はないだろう、これまで何百年も魔導伯爵家としてやってきたんだ、きっとビオランテでも何とかなるよ」
「ですが、あれほどまでの功績のあったマレンツさまを、たかが攻撃魔法を覚えないというだけでっ」
ステイシーは目に涙を浮かべて私に訴えかけてきた。
「マレンツさまはやめてくれよ、もう私は平民だから、マレンツで良いんだよ」
「私にとってマレンツさまはマレンツさまですっ! あなたさまこそがっ」
うん、ステイシーの好意が嬉しいね。
「家令のセバスチャンによろしく、挨拶もしないで出て行ってごめんねって伝えてよ」
「どちらに行かれるのですか、また大学にお戻りに?」
さて、どうしようかなあ。
大学に戻るのは簡単なんだけれども、アセット魔法の解析とかはやらせて貰えなさそうだ。
自分がやりたい研究は、自分でお金を稼いでからかな。
「せっかく平民になったから、迷宮都市で冒険者になろうかな」
「そんな、マレンツさまは失礼ながら運動神経がそれほどよろしく無いのに……」
うう、真顔で酷い事を言うねステイシーは。
「迷宮都市で頑張って駄目だったら大学に潜り込むさ。ステイシーも元気で。できたら父上の健康を気を付けてあげてね、最近はお酒を飲み過ぎみたいだし」
「マレンツさまぁ~」
感極まって泣き始めたステイシーの頭を撫でてから私は歩き出した。
さて、目的地は迷宮都市、冒険者になってお金を儲けて、アセット魔法の謎を解明するぞっ。
豪華な大広間に父の声が響いた。
父の隣で従兄弟のビオランテがニヤニヤ笑っている。
いきなり勘当宣言された私なんだが、とても困惑している。
初歩の攻撃魔法しか使えないって?
私は大学で専門的に魔術を習ったのであるが。
成績の方も首席で卒業したのだが。
これは困ったなあ。
「父上、お考え直し下さい、私は魔法によって領内経営に貢献しております」
「黙れ黙れ黙れっ!! デズモンド家にとって魔法とは攻撃魔法だっ!! 我々は魔法による武力によって王国に貢献しておる魔導伯爵家だっ!! 姑息な魔法で平民どものご機嫌取りをする家では無いっ!!」
いやいや、父上は何百年前の貴族魔法概念なのかと。
アセット魔法で戦うなんて、魔力の無駄でしか無いんだが。
と、言おうと思ったのだが、どこから説明すれば良い事やら。
もうね、デズモンド家の魔法の概念は古いんですよと、王都の魔法大学では新しい魔法利用理論が続々と確立されていましてね、戦闘する魔法使いなんて古いと思うんですよ。
と、説得したいのだが、父はゴリゴリの攻撃魔法主義だからなあ。
納得させられる気がしない。
「マレンツ、お前を廃嫡し、このビオランテを次代のデズモンド家当主に据える。これは決定だっ!!」
「はあ?」
「はっは、貴様のような出来損ないはこの家から出て行け、デズモンド家の当主には、三属性に適正があり、四階層までの攻撃魔法が使えるこの俺ビオランテこそふさわしいのだっ!」
「はあ」
三属性四階層攻撃魔法なあ、さぞや強いんだろうな、ビオランテよ。
だけど、だけどお前、それアセット魔法だぞ。
どうしようかね。
……。
…………。
別にいいかあーっ。
もう大学も出して貰ったしなあ。
私はデズモンド領を魔法で改革しようと頑張ってきたけど、父が気に入らないならなあ。
どうせ魔法の研究ならどこでもできるし。
元々貴族の付き合いとかあまり興味無いしな。
「わかりました、父上、これまでお世話になりました」
私は父に向かって深くお辞儀をした。
「今すぐ出て行け、顔も見たく無いっ!」
「ははっ、負け犬の無能力者めっ、これからのデズモンド家は俺がもり立ててやるから安心して野垂れ死ねっ」
ビオランテが顔をゆがめて笑いながら言った。
「それでは出て行きますが、支度金などは……」
「ふざけるなっ! 着の身着のまま出て行けっ!! お前が無駄遣いした学費を返済させないのが親の情けと思えっ!」
なんで、こんなに父に嫌われたかな。
ビオランテが何か吹き込んだかもね。
まあ、魔法の基礎研究ばっかりで、攻撃魔法とか覚えなかったからなあ。
唯一使えるのは基礎魔法の【着火】だけだし。
なにか攻撃魔法を覚えて父のご機嫌を取っておくべきだったかな。
だけど、所詮はアセット魔法だしなあ。
それに、私は魔力保有量低いんだよ。
「それでは失礼します。父上これまで育てて頂いてありがとうございました。体にだけはお気をつけください」
父はじろりと私を睨むと、しっしと犬を追い払うように手を振った。
自室に戻り、トランクに着替え等を詰め込んだ。
私のこれまでの人生は、学校の寄宿舎だったり、大学の研究室にいたりで、領城の自室もそんなに使って無かったから荷物もそれほどでも無い。
トランクを持って廊下に出ると、メイドのステイシーが駆けよって来た。
「やあ、ステイシー、これまでありがとう」
「マレンツさまっ! この家をお見捨てになられるのですかっ、あなたが居なければこの家は没落してしまいますっ!」
「そんな事はないだろう、これまで何百年も魔導伯爵家としてやってきたんだ、きっとビオランテでも何とかなるよ」
「ですが、あれほどまでの功績のあったマレンツさまを、たかが攻撃魔法を覚えないというだけでっ」
ステイシーは目に涙を浮かべて私に訴えかけてきた。
「マレンツさまはやめてくれよ、もう私は平民だから、マレンツで良いんだよ」
「私にとってマレンツさまはマレンツさまですっ! あなたさまこそがっ」
うん、ステイシーの好意が嬉しいね。
「家令のセバスチャンによろしく、挨拶もしないで出て行ってごめんねって伝えてよ」
「どちらに行かれるのですか、また大学にお戻りに?」
さて、どうしようかなあ。
大学に戻るのは簡単なんだけれども、アセット魔法の解析とかはやらせて貰えなさそうだ。
自分がやりたい研究は、自分でお金を稼いでからかな。
「せっかく平民になったから、迷宮都市で冒険者になろうかな」
「そんな、マレンツさまは失礼ながら運動神経がそれほどよろしく無いのに……」
うう、真顔で酷い事を言うねステイシーは。
「迷宮都市で頑張って駄目だったら大学に潜り込むさ。ステイシーも元気で。できたら父上の健康を気を付けてあげてね、最近はお酒を飲み過ぎみたいだし」
「マレンツさまぁ~」
感極まって泣き始めたステイシーの頭を撫でてから私は歩き出した。
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