3 / 8
第三話 人魚姫のイルカ馬車
しおりを挟む「報告させていただきます。使用人に扮していたのはまだ14歳の少年でした。彼は平民で、妹と平民街で買い物をしている時に貴族の女性に声をかけかられ、事情はよく知らずにここへ来たそうです」
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
*
「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
------------------
※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
「その女性というのは?」
「名は名乗らなかったそうです。黒いマントを羽織り、フードも深く被っていたようで、顔も分からなかったと。彼の母親は病に倒れており、父親は地方貴族の屋敷で使用人として働き、治療費を稼いでいるそうです。事情を知った女性にある人物に飲み物を手渡すだけで、母親の治療費を全額負担するからと雇われたようでして」
おそらくメアリーかルーシーでしょうけど、確認する方法がなさそうね。
「メアリー様には、気分が悪そうな人は3階にある客室へ案内するようにと指示されただけのようです」
「それについてはメアリーも同じように証言しております。ただ、新しい使用人だと思ったという証言については疑念の余地がありますが」
3階までその少年にアルフレッド様を連れてきてもらい、ルーシーと変わって部屋まで連れてくる計画だったのかしら。
「手渡す相手がアルフレッド様だとはいつ指示があったのですか?」
「はい。どうやら自宅に手紙が届いたようで、そこには指示された飲み物を金髪金目の青年にリリーナからだと言って飲ませること。全て飲み切るのを見届けること。数分してその青年の気分が悪くなったら客室へ連れてくること。と記載されていたようです」
その他にも、公爵邸への行き方や着替えは着いてから手渡すこと、この手紙は読んだら焼き捨てるように、と書かれていたそうで。
「公爵邸内にはメイドが入れてくれたそうなのですが、初めて見た公爵家本邸に圧倒されメイドの容姿は覚えていないようです。また、飲ませる相手が殿下であるとは知らなかったようで、知った時は怯えていました」
その少年も何かおかしいと思ったけれど、治療費が必要だから指示通りに動いたみたい。
証拠が何も残っていないから誰も罪に問えないわね。薬草の入ったグラスにはどちらかの指紋が付いているでしょうけど、指紋を取る技術がないし、仮に取れたとしても照合できないし証拠物としてなりたたないのよね…。
私もルーシーから得た情報を共有しておきましょう。
「ホワイトさんですが、メアリーが王都で雇ったメイドとして邸内に入ったと思われます。彼女を同じ馬車に乗せるため、メアリーは私と共に乗るのを拒否したのでしょう。また、彼女が私のドレスを着ていた理由ですが、アルフレッド様が私と間違えるから、だそうです」
「なんだって?」
まぁ…驚くわよね。
「何も分かってないのね、とも言われました。もしかすると二人が協力関係だと思っているのはメアリーだけかもしれません」
「その可能性は高いと私も思います。メアリーはホワイト嬢がリリーナのドレスを着て会場内にいることには気付いていなかったようなので。彼女を公爵邸内に入れたのは脅されたからだと言っていましたが、恐らくその少年を入れるために連れてきたのでしょう」
お兄様も私と同じ考えのようね。やっぱりメアリーの計画を知った上でルーシーはメアリーを裏切るつもりでいるんだわ。それにしても、メアリーはルーシーを信用し過ぎじゃない?
「必ずまた仕掛けてくるだろうな」
早急に薬草の成分を調べ、分かり次第今後の動きを話し合おうと約束し、今日は解散となった。
*
*
「お兄様。メアリーは利用されていることに気付いていないようですが、教えてさしあげないのですか?」
「教えたらメアリーはホワイト嬢を切るだろうな。動きにくくなった彼女は必ず他に使える人間を見つけるだろう。でもそれはメアリーにも言える話だ。このまま二人で動いてもらった方が一番被害が少なく済む」
メアリーが心を入れ替えてくれるといいんだがと言ったお兄様は、どこか寂しそうな顔をしていた。正直私はどっちでもいいけれど、確かに家族を壊したいわけじゃないなと思いながら自室に戻り眠りについた。
------------------
※余談※
利用された少年の母親の治療費はレオニールが利息無しで貸し出し、少年の家族を公爵家の下級使用人として雇った。返済が終わるまで給料は減額支払いになるけど、公爵家の使用人宿舎に食事付きで部屋を与えられ、また家族みんなで住めるので、少年の家族はレオニールに大変感謝しているそう。
レオニールは、この件で恨まれ行動を起こされてから消すよりも、先回りして動いたほうが処理が楽だからそうしただけ。リリーナは兄だけは敵に回したくないと改めて思ったらしい。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
荷車尼僧の回顧録
石田空
大衆娯楽
戦国時代。
密偵と疑われて牢屋に閉じ込められた尼僧を気の毒に思った百合姫。
座敷牢に食事を持っていったら、尼僧に体を入れ替えられた挙句、尼僧になってしまった百合姫は処刑されてしまう。
しかし。
尼僧になった百合姫は何故か生きていた。
生きていることがばれたらまた処刑されてしまうかもしれないと逃げるしかなかった百合姫は、尼寺に辿り着き、僧に泣きつく。
「あなたはおそらく、八百比丘尼に体を奪われてしまったのでしょう。不死の体を持っていては、いずれ心も人からかけ離れていきます。人に戻るには人魚を探しなさい」
僧の連れてきてくれた人形職人に義体をつくってもらい、日頃は人形の姿で人らしく生き、有事の際には八百比丘尼の体で人助けをする。
旅の道連れを伴い、彼女は戦国時代を生きていく。
和風ファンタジー。
カクヨム、エブリスタにて先行掲載中です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる