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十五、リヴェール国について学ぼう
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私の前に運ばれてきた元気の源、もとい本日の朝食はパンケーキである。
薄く、やや小さめに焼かれたパンケーキは二枚。むらなく均等に焼き上げられた茶色い表面に彩を添えているのはカットフルーツだ。それも見た目が美しくなるよう計算された飾りつけである。
これってもしかして本場のパンケーキと言うのではないかしら!?
前世では何時間か並ばなければ食べられなかったものだ。しかも今回も焼き立てとなっている。
ニナに聞いたところ、この世界の朝食は軽めに済ませることが多いらしい。私も朝はあまりしっかり食べる方ではなかったので有り難いことだった。
ぎりぎりまで寝ていたくて、職場の近くに家を借りたんだったわね。遅刻寸前まで寝ていたせいで、朝は軽く済ませることが多かったような……急いでパンをかじったり、ヨーグルトで済ませていた気がするわ。
もう随分と遠い、ありふれた毎日。懐かしい思い出を胸に抱きながら私は手を合わせる。
「いただきます」
さてと、まずは重大な問題があるわね。
パンケーキから食べるか、フルーツから食べるか。それはとても悩ましい問題だ。けれど私は今、何よりも自分の気持ちに正直に生きてみようと思う。パンケーキを味わいたくてたまらない自分に正直になろう!
表面の美しさナイフを入れることを躊躇わせるけれど、私はついに迷いを振り切った。ナイフの感覚からして生地はふわふわというよりも少し弾力があるように思う。
もちもち食感というのかしらね? いいわいいわ! 前世で最後に食べたパンケーキはスフレタイプだったもの。パンケーキというのはね、同じものなんて一つもない。そして私はどこ子も等しく愛しているのよ!
口に運ぶとパンケーキ自体は甘みが少なく、あっさりと食べられる味付けだった。時折フルーツにも手を伸ばせば飽きることなく完食してしまう。もっともフルーツがなかったとしてもパンケーキに秘められた美味しさだけであと二、三枚は余裕だった。
「ごちそうさまでした」
こんなに素晴らしい物を作れる人がいるなんて……ホットケーキなら何度か作ったこともあるけれど、なかなか上手に焼けなかったのよね……
頼めば焼き方のコツを教えてもらえるだろうか。
食事を終えると自由時間が待っている。当初は里帰りをするつもりでいたけれど、知りたいことがたくさん出来てしまった私は急遽予定を変更することにした。
「私はこの国の人間になりました。ですから自分の暮らす国について知りたいと考えています。そこでニナ、貴女に教えを乞うことは出来ますか?」
「わ、私がですか!? 私、奥様に教えられるような知識はとても!」
「私が知りたいのは難しい事じゃないわ。たとえば町のこと、たとえばこのお城のこと。何を食べて、どんなものが売っているのか、そういう当たり前のことでいいのよ。私はまだ何も知らないもの。旦那様に恥をかかせるわけにはいかないし、教えてもらえると助かります」
きっと頼めばイデットさんも教えてくれるはず。けれど叶うのなら、私はニナの口から語られるこの国を知りたいと思った。
「ニナは長くこの辺りに暮らしているそうね。町についても詳しいのでしょう?」
イデットさんはニナを未熟と言った。けど私だって、とてもニナに何かを与えられるほどの力はない。まだまだ未熟なのは私の方。だからこそ、二人で足りない部分を補い合えたらいいと思っている。
丁寧に知りたいことを話せばニナも安心したのか緊張を解いてくれた。
「それくらいなら、私でもなんとか……」
「もちろんニナの仕事の負担にならない範囲でいいわ」
「では今日からにしましょう。大丈夫です。私の仕事は奥様が不自由なく過ごす手助けをすることですから、それ以上に優先される仕事はないんですよ。きっとイデット様も了承してくれますから!」
「イデットさんは随分と信頼されているのね」
旦那様同様にイデットさんも使用人たちから慕われているらしい。
「はい! イデット様は、確かに見た目はちょっと怖い人ですけど、とても頼りになりますし優しくて……あ! あ、あの、私が怖そうだって言ったことは、内緒にしてもらえますか!?」
「安心していいわよ」
「良かった……」
慕われているのは伝わったけれど、この怯えよう。怒らせると怖い人でもあるようね。私も気をつけましょう。
「では奥様、これから実際に町の様子を見に行きませんか?」
大人しいけれどしっかりと自分の意見も持ってる。ニナは頼もしい侍女だった。
それからニナは外出の許可を取り、私のためにてきぱきと服を選んでくれた。私にはあまり違いがわからないのだが、ニナが選んでくれた装いは良家の奥様風ではなく、今どきの町娘を意識してとのことらしい。町歩きに関しては私よりもしっかりしていそうで頼もしかった。
~☆~★~☆~★~☆~★~☆~
訪れたリヴェールの港町はシレーネといった。
「旦那様に聞いたけれど、ここから王都までは随分と遠いのよね?」
「そうですね。シレーネはリヴェールの南部にあって、小さな田舎町ですから」
「これで田舎? 随分と活気があるように見えるわ」
遠くから眺めていた時に肌で感じていた通りだ。実際に足を踏み入れると人の多さに圧倒される。商店の立ち並ぶ大通りは露店からカフェまで、どの店も繁盛しているように見えた。
「私も王都には行ったことがないので、あまり詳しくはないですけど……。イデットさん、あの方は以前は王都のお城で働いていたそうで。イデットさんの話では王都はこんなものではないそうです!」
「ねえ、ニナ。イデットさんは旦那様について王都からシレーネにやって来たわけじゃない? 旦那様はどうしてこの町に滞在しているの?」
いわゆる第一王子でいらっしゃる旦那様。普通王子様というのは王都にいるものではないのかしら? そんな疑問を持つのも仕方のないことだ。
「そこまでは私も……。あの、答えになるかはわかりませんけど、昔シレーネはとある貴族が治めていたんです。けどその人はお城に居座って裕福な生活をするばかりで、町に暮らす私たちのことなんてちっとも考えてはくれませんでした。そんな時、王都から派遣された視察団の長が旦那様だったんです」
「なるほどね。旦那様はその貴族を退任させ、自らあの城の主になった。という話かしら?」
「そうなんです! こんな田舎町には勿体ない人ですよね。問題が起こればすぐに駆けつけてくれますし、どんなに忙しくても私たちの言葉に耳を傾けて下さいます。私のような平民のことも雇ってくれて……」
表情を曇らせたニナの声は次第に小さくなっていく。やがて完全に口を閉ざしてしまった。
「ニナ?」
「案内、やっぱりイデットさんの方が良かったですよね。イデットさんなら奥様の疑問に答えられたかもしれませんし……」
平民という部分を気にしているのか。それとも私がした不用意な質問がいけなかったのかもしれない。不安そうに話すニナに私はきっぱりと告げた。
「旦那様のことは少し疑問に感じただけで、私はニナと一緒に出掛けたかったのよ。町のことは幼いころから港町で育ったニナが適任だと思っているわ。それに私、こうしてもう一度、友達と町を歩ける日が来るなんて夢みたいなの! だからニナが不安に思うことは何もありません」
「夢みたい、ですか? 私なんかが相手でも、ですか!?」
「そうよ。私にも色々と事情があってね」
人魚に転生するっていう予想外のせいでね!
重々しく告げるとニナは全力で役目を果たすことを約束してくれた。私も彼女ならばとニナの実力を信じている。
薄く、やや小さめに焼かれたパンケーキは二枚。むらなく均等に焼き上げられた茶色い表面に彩を添えているのはカットフルーツだ。それも見た目が美しくなるよう計算された飾りつけである。
これってもしかして本場のパンケーキと言うのではないかしら!?
前世では何時間か並ばなければ食べられなかったものだ。しかも今回も焼き立てとなっている。
ニナに聞いたところ、この世界の朝食は軽めに済ませることが多いらしい。私も朝はあまりしっかり食べる方ではなかったので有り難いことだった。
ぎりぎりまで寝ていたくて、職場の近くに家を借りたんだったわね。遅刻寸前まで寝ていたせいで、朝は軽く済ませることが多かったような……急いでパンをかじったり、ヨーグルトで済ませていた気がするわ。
もう随分と遠い、ありふれた毎日。懐かしい思い出を胸に抱きながら私は手を合わせる。
「いただきます」
さてと、まずは重大な問題があるわね。
パンケーキから食べるか、フルーツから食べるか。それはとても悩ましい問題だ。けれど私は今、何よりも自分の気持ちに正直に生きてみようと思う。パンケーキを味わいたくてたまらない自分に正直になろう!
表面の美しさナイフを入れることを躊躇わせるけれど、私はついに迷いを振り切った。ナイフの感覚からして生地はふわふわというよりも少し弾力があるように思う。
もちもち食感というのかしらね? いいわいいわ! 前世で最後に食べたパンケーキはスフレタイプだったもの。パンケーキというのはね、同じものなんて一つもない。そして私はどこ子も等しく愛しているのよ!
口に運ぶとパンケーキ自体は甘みが少なく、あっさりと食べられる味付けだった。時折フルーツにも手を伸ばせば飽きることなく完食してしまう。もっともフルーツがなかったとしてもパンケーキに秘められた美味しさだけであと二、三枚は余裕だった。
「ごちそうさまでした」
こんなに素晴らしい物を作れる人がいるなんて……ホットケーキなら何度か作ったこともあるけれど、なかなか上手に焼けなかったのよね……
頼めば焼き方のコツを教えてもらえるだろうか。
食事を終えると自由時間が待っている。当初は里帰りをするつもりでいたけれど、知りたいことがたくさん出来てしまった私は急遽予定を変更することにした。
「私はこの国の人間になりました。ですから自分の暮らす国について知りたいと考えています。そこでニナ、貴女に教えを乞うことは出来ますか?」
「わ、私がですか!? 私、奥様に教えられるような知識はとても!」
「私が知りたいのは難しい事じゃないわ。たとえば町のこと、たとえばこのお城のこと。何を食べて、どんなものが売っているのか、そういう当たり前のことでいいのよ。私はまだ何も知らないもの。旦那様に恥をかかせるわけにはいかないし、教えてもらえると助かります」
きっと頼めばイデットさんも教えてくれるはず。けれど叶うのなら、私はニナの口から語られるこの国を知りたいと思った。
「ニナは長くこの辺りに暮らしているそうね。町についても詳しいのでしょう?」
イデットさんはニナを未熟と言った。けど私だって、とてもニナに何かを与えられるほどの力はない。まだまだ未熟なのは私の方。だからこそ、二人で足りない部分を補い合えたらいいと思っている。
丁寧に知りたいことを話せばニナも安心したのか緊張を解いてくれた。
「それくらいなら、私でもなんとか……」
「もちろんニナの仕事の負担にならない範囲でいいわ」
「では今日からにしましょう。大丈夫です。私の仕事は奥様が不自由なく過ごす手助けをすることですから、それ以上に優先される仕事はないんですよ。きっとイデット様も了承してくれますから!」
「イデットさんは随分と信頼されているのね」
旦那様同様にイデットさんも使用人たちから慕われているらしい。
「はい! イデット様は、確かに見た目はちょっと怖い人ですけど、とても頼りになりますし優しくて……あ! あ、あの、私が怖そうだって言ったことは、内緒にしてもらえますか!?」
「安心していいわよ」
「良かった……」
慕われているのは伝わったけれど、この怯えよう。怒らせると怖い人でもあるようね。私も気をつけましょう。
「では奥様、これから実際に町の様子を見に行きませんか?」
大人しいけれどしっかりと自分の意見も持ってる。ニナは頼もしい侍女だった。
それからニナは外出の許可を取り、私のためにてきぱきと服を選んでくれた。私にはあまり違いがわからないのだが、ニナが選んでくれた装いは良家の奥様風ではなく、今どきの町娘を意識してとのことらしい。町歩きに関しては私よりもしっかりしていそうで頼もしかった。
~☆~★~☆~★~☆~★~☆~
訪れたリヴェールの港町はシレーネといった。
「旦那様に聞いたけれど、ここから王都までは随分と遠いのよね?」
「そうですね。シレーネはリヴェールの南部にあって、小さな田舎町ですから」
「これで田舎? 随分と活気があるように見えるわ」
遠くから眺めていた時に肌で感じていた通りだ。実際に足を踏み入れると人の多さに圧倒される。商店の立ち並ぶ大通りは露店からカフェまで、どの店も繁盛しているように見えた。
「私も王都には行ったことがないので、あまり詳しくはないですけど……。イデットさん、あの方は以前は王都のお城で働いていたそうで。イデットさんの話では王都はこんなものではないそうです!」
「ねえ、ニナ。イデットさんは旦那様について王都からシレーネにやって来たわけじゃない? 旦那様はどうしてこの町に滞在しているの?」
いわゆる第一王子でいらっしゃる旦那様。普通王子様というのは王都にいるものではないのかしら? そんな疑問を持つのも仕方のないことだ。
「そこまでは私も……。あの、答えになるかはわかりませんけど、昔シレーネはとある貴族が治めていたんです。けどその人はお城に居座って裕福な生活をするばかりで、町に暮らす私たちのことなんてちっとも考えてはくれませんでした。そんな時、王都から派遣された視察団の長が旦那様だったんです」
「なるほどね。旦那様はその貴族を退任させ、自らあの城の主になった。という話かしら?」
「そうなんです! こんな田舎町には勿体ない人ですよね。問題が起こればすぐに駆けつけてくれますし、どんなに忙しくても私たちの言葉に耳を傾けて下さいます。私のような平民のことも雇ってくれて……」
表情を曇らせたニナの声は次第に小さくなっていく。やがて完全に口を閉ざしてしまった。
「ニナ?」
「案内、やっぱりイデットさんの方が良かったですよね。イデットさんなら奥様の疑問に答えられたかもしれませんし……」
平民という部分を気にしているのか。それとも私がした不用意な質問がいけなかったのかもしれない。不安そうに話すニナに私はきっぱりと告げた。
「旦那様のことは少し疑問に感じただけで、私はニナと一緒に出掛けたかったのよ。町のことは幼いころから港町で育ったニナが適任だと思っているわ。それに私、こうしてもう一度、友達と町を歩ける日が来るなんて夢みたいなの! だからニナが不安に思うことは何もありません」
「夢みたい、ですか? 私なんかが相手でも、ですか!?」
「そうよ。私にも色々と事情があってね」
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