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第一章 魔術学校編
第24話 選抜大会予選【2】
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「それではBブロックは上がれ」
レイスターの声が会場内に響き、続々と舞台上へと上がっていく。
みんながレントの事などお構い無しに激突してくる。
肩が当たったり、靴を踏まれたり、人によっては真正面から衝突したりしてきた。
まるでレントのことなど眼中に無いとばかりに、その証拠に話かけにに来る人などいなかったのだ。
なんとか落ち着いて周りを見ると、先程の大男と同じチームであろう大男がいた。
先程話したミラの情報からすると守りの要がいるようで、少し警戒を高める。
レントには舞台上を蹴散らす大技がない。
それ故に、先程のような戦いはできないのだがレントには秘策があった。
「これが決まれば早いんだけど……」
見るからに魔術士というより戦士のような屈強な風貌が多いBブロックでは、それが決まるかどうか怪しかった。
「お兄さん大丈夫ですか?」
「ん?」
初めて話しかけられるも辺りを見回しても声の主は見つからない。
改めてキョロキョロしてると、足元から声が聞こえた。
「ここですここ! 下ですよ!」
その声の方向に顔を向けると手のひらに乗るくらいの大きさの人物がいた。
なんだったか、以前本で見た事がある。
「小さいのも考えものですね」
「これは…小人族? にしても小さいな」
「僕は妖精族だぞ」
妖精族……確かに本で見た事ある。
妖精とはよく聞くものだが、妖精族とは違うものだと言うのは理解している。
妖精は羽が生えており、妖精魔術という以前ティル先生が見せた精霊魔術に似た魔術を使うのだとか。
しかし、目の前にいるのは羽を持たず手のひらサイズの小さいただの人に他ならない。
そして、この2つの種族には大きな違いがある。
妖精は概念的なもので目撃例が少なく、それ故に存在自体が幻とされていること、それに対して妖精族はその見た目から妖精に近いということで付けられた名前なだけで妖精とは違い、人族のひとつとされている。
要するに人かどうかの違いがあるのだ。
「妖精族……か」
「はい! お兄さんは人族です……よね? にしては……」
「僕は間違いなく人族だよ」
「ですよね」
妖精族には他の種族には見えないものが見えると聞く。
レントは彼に何かが見えたのだろう、と思うが今はそんなときでは無い。
後でも聞くタイミングはあるだろう。
それよりも今は大会の事だ。
「……」
妖精族の彼がずっとこちらを見つめているが気にしないでおこう。
「よし、集まったな。それじゃ、始めるぞ。ルールは覚えてるよな?」
その確認を聞くと全員が「おう!」「大丈夫だ」等と返答したり頷いたりしてレイスターは満足そうに頷き返す。
「なら始めよう……、始め!」
みんなが一斉に守りを始める中、手にした得物でそんなのお構い無しに飛びかかる者や先程のように吹っ飛ばそうとする者がおり、なかなか混沌としていた。
それでも前回と戦いを見て学んで守りを固めたものが多く、吹っ飛ばそうにもなかなか難しい状況だ。
レントはというと、派手にぶっぱなす方向でいた。
レントなは派手な攻撃魔術こそないが、唯一1つだけ火力に長けた魔術が存在する。
「とりあえず『影の支配』を……、いややらなくても問題なさそうだな」
『影光』
レントの手のひらから出てきた黒い光。
驚くことに黒く染まっているにもかかわらず明るいのだ。
その黒き光はレントの意思で自由に曲げることが出来る。
しかし、大きな欠点も存在した。
影光はその軌道を大きく逸らして上に進む。
光と言いながら目視できるレベルの速度だ。
「これ毎回思うけどほんと遅いよなぁ。下手したら全力で走った大人でさえ追いつけないよ……」
光と名前になっててもそこはやはり影魔術。
遅さこそが代名詞の魔術系統に、直接的な速さの存在する魔術などないのだ。
当たりさえすれば影で蝕み、発動中の魔術を暴走させるくらいのことが出来る魔術なだけあってかなり使いづらい。
「これじゃ光じゃなくて触手だよ……名前考えた人何考えてんだ……」
本来は『影の支配』と併用することでホーミング性能を追加するのだが、今回に限ってはその必要はなかった。
「こんだけ人がいるなら適当にやっても当たるよな」
レントは適当にうねうねと動かしながら様々な人に当てていく。
これが火力というかはさておき、相手の魔術の暴発こそが影魔術での最大火力なのは確かなのだ。
防御ごと飛ばそうとする魔術士達は、なおも攻撃魔術を連発しておりレントの魔術に当たっていく。
するとどうだろう、たちまちその魔力は膨張し爆発を起こすのだ。
そうして1種の自爆とも思える状況にしつつも、防御を固めようと魔術を展開している人にも当てていく。
「レント。なんか変なことしてる」
「なんか、うねうねしたもの出してるね」
ミラとリンシアはレントの状況がよく分かっていなかった。
開始と同時に端へと寄って手からうねっとしたものを出している。
そしてそこからいきなり色んなところから爆発が起きたのだ。
そして、驚くべきことにリンシアは気づいた。
「レント、攻撃されてない」
「んん?? 確かに何もくらって無さそうだ」
そう、こんなに乱戦にでもなれば必ず攻撃は飛んでくるものであり、その攻撃が無傷なことはあれど1度も攻撃されないなんてことは無いのだ。
「何かやってるね、レント」
「そうね」
ミラとリンシアが舞台の戦いに見入っていると、ふと後ろから声をかける者がいた。
「やぁ、どうだい? 戦いの方は?」
聞き覚えのある声にミラは後ろに振り向く。
リンシアもそれにつられて後ろを向くが、その瞬間驚愕の表情を浮かべた。
「えっ、え?」
「レント。あれは?」
「あれは僕の影だよ。授業で習っただろ? 影魔術には影を自分そっくりに変えて動かせるって」
「言ってたけど……あそこまで違和感なく出来るものだったっけ……?」
「出来ない」
それはとある授業中、影魔術についての戦い方と対処法についての話になった時のことだろう。
確かにあの担当の教師は影魔術使いで、レントと同じように影を操っていた。
しかし、それは人と言うよりは人の形をした影だったのだ。少なくとも分身みたいな使い方は出来そうになかった。
「ははは……そこはレントということかな……」
「そうね」
「まぁ、支配領域内っていう縛りはあるけどね」
影ということもあり、普通の人には見ることは出来ても認識はできない。
ここでミラやその他待っている選手が認識できているのは、ここが『影の支配』範囲外だからということだ。
これが戦っているレントが攻撃をされていない理由だ。
魔術を食らってもその相手が自分のことを認識できない、その事を考えるとこれはかなり重宝しそうだ。
「これからこの魔術かなり役立つだろうなぁ」
「視覚などの感覚共有はしてるのかい?」
「してないよ。ただ、僕がこの場で操ってるだけ」
「あぁ、それじゃ偵察とかには向いてないわけだね」
確かにミラの言う通りだ。
ただ単に操っているだけなのでレント自信がその影を目視できないといけないうえ、影が感じたものはレントには伝わらないのだ。
「おっと、そろそろ終わりそうだ」
「レント無双」
「ええっと……」
舞台上のレントはひたすらに影光を操っており、とりあえず魔術を使いまくっている者は排除できていた。
「レント含めて、1……2……3…………7人残ってるね」
「影で戦える?」
「そろそろ戻った方が良さそうだね」
と言ってレントは支配内の影に潜り、自分の影と重なるように出てみる。
こうすれば分からないだろう。
その様子を先程の妖精族がずっと見ていたようでぎょっとしていた。
「さて、あと6人か……」
どうしたものか考えてるとかの妖精族が目に入る。ここらで共闘とするか。
「なぁ、一緒に戦うかい?」
「……!? わ、わかりました。ところで、何かありました?」
「ん? 何がだ」
「いえ、なんでもないです。攻撃は任せてもいいで……いや、そちらをお任せします」
先程から影魔術を使い続けてるので攻撃には秀でてないとの判断だろう。
妖精族が3人、レントが2人を相手してくれとのことらしい。
「いや、この人数ならなんとでもないよ」
「わかりました。では攻撃は任せます」
そういうと彼はその場所からいなくなり、空へと出現した。
羽がなくても飛ぶことは出来るんだな、とレントは思いながら相手に目を向ける。
「うーん、みんな血眼になってるよ……怖いなぁ」
「うおおおお!」
その叫びとともに1人の斧持ちが飛びかかってきた。
「させません!」
『昇炎柱閃』
あまりにも攻撃魔術チックな名前をしながらその魔術はあまりにも防御に寄っていた。
その魔術はレントを中心に火柱が立っていたのだ。
「これは……火の壁?」
「はい、この壁は外からの攻撃を受け付けずに中からの攻撃は通すものです。攻撃を続けてください」
それなら話は早い、レントは影魔術を展開し既に展開している『影の支配』を使って行使する。
『影鋭棘』
その名の通り柱のような大きさの棘がレントを中心にして5本並ぶ。
『影の支配』により追尾能力を得た、もはや三角錐と言うべきそれは一斉に放たれた。
「うお!?」
「きゃぁぁぁ!」
「あだっ」
「ちょちょちょちょ」
「おらぁぁぁぁ」
5人が5人ともそれぞれ違う反応を見せたが、舞台上に残ったのは3人だけのようだ。
先程の斧男は舞台から落ちていた。
「1番威勢のいい声が出てたのに……」
兎にも角にも勝負は決まった。
レントはレイスターに目配せをすると彼は分かったように宣言をする。
「ここまで! 今回の勝者は────
レントも無事予選を突破すると、気になった事を聞きに妖精族の元へと向かう。
彼も予選突破しており、その場から離れてないのですぐに見つかった。
「やぁ、プラティ」
「あぁ、レント……くんだね」
妖精族のプラティ、勝者宣言の時に聞こえたその名前を呼んでみた。
しかし、妖精族と言っても本当に小さいもんだ。
「何か用?」
「いや、君には僕が何に見えたのかなって。ほら、妖精族には見えるものがあるって聞くし」
「あぁ、その話」
彼によるとレントが影を操って分身みたいな事をしてるのは分からなかったが、人族ではない違和感が見えたらしい。
どうやら、内包してる魔力がどーのとか言っており妖精族には色々見えるのは確かなようだ。
認識できないはずの影を見て話しかけられたのもそのおかげだろう。
「話はそれだけ?」
「あぁ、うん。これだけだよ」
「うん、わかった。じゃあまたねレントくん。本線で戦おうね」
「楽しみにしてるよ」
今度は彼が敵となる。
影を見破られたのもあってかレントの中では警戒を強めることになった。
(妖精族……ある意味天敵なのかもしれないな……)
次はリンシアの戦いということもあり、レントは急いでミラ達の元へ戻っていった。
レイスターの声が会場内に響き、続々と舞台上へと上がっていく。
みんながレントの事などお構い無しに激突してくる。
肩が当たったり、靴を踏まれたり、人によっては真正面から衝突したりしてきた。
まるでレントのことなど眼中に無いとばかりに、その証拠に話かけにに来る人などいなかったのだ。
なんとか落ち着いて周りを見ると、先程の大男と同じチームであろう大男がいた。
先程話したミラの情報からすると守りの要がいるようで、少し警戒を高める。
レントには舞台上を蹴散らす大技がない。
それ故に、先程のような戦いはできないのだがレントには秘策があった。
「これが決まれば早いんだけど……」
見るからに魔術士というより戦士のような屈強な風貌が多いBブロックでは、それが決まるかどうか怪しかった。
「お兄さん大丈夫ですか?」
「ん?」
初めて話しかけられるも辺りを見回しても声の主は見つからない。
改めてキョロキョロしてると、足元から声が聞こえた。
「ここですここ! 下ですよ!」
その声の方向に顔を向けると手のひらに乗るくらいの大きさの人物がいた。
なんだったか、以前本で見た事がある。
「小さいのも考えものですね」
「これは…小人族? にしても小さいな」
「僕は妖精族だぞ」
妖精族……確かに本で見た事ある。
妖精とはよく聞くものだが、妖精族とは違うものだと言うのは理解している。
妖精は羽が生えており、妖精魔術という以前ティル先生が見せた精霊魔術に似た魔術を使うのだとか。
しかし、目の前にいるのは羽を持たず手のひらサイズの小さいただの人に他ならない。
そして、この2つの種族には大きな違いがある。
妖精は概念的なもので目撃例が少なく、それ故に存在自体が幻とされていること、それに対して妖精族はその見た目から妖精に近いということで付けられた名前なだけで妖精とは違い、人族のひとつとされている。
要するに人かどうかの違いがあるのだ。
「妖精族……か」
「はい! お兄さんは人族です……よね? にしては……」
「僕は間違いなく人族だよ」
「ですよね」
妖精族には他の種族には見えないものが見えると聞く。
レントは彼に何かが見えたのだろう、と思うが今はそんなときでは無い。
後でも聞くタイミングはあるだろう。
それよりも今は大会の事だ。
「……」
妖精族の彼がずっとこちらを見つめているが気にしないでおこう。
「よし、集まったな。それじゃ、始めるぞ。ルールは覚えてるよな?」
その確認を聞くと全員が「おう!」「大丈夫だ」等と返答したり頷いたりしてレイスターは満足そうに頷き返す。
「なら始めよう……、始め!」
みんなが一斉に守りを始める中、手にした得物でそんなのお構い無しに飛びかかる者や先程のように吹っ飛ばそうとする者がおり、なかなか混沌としていた。
それでも前回と戦いを見て学んで守りを固めたものが多く、吹っ飛ばそうにもなかなか難しい状況だ。
レントはというと、派手にぶっぱなす方向でいた。
レントなは派手な攻撃魔術こそないが、唯一1つだけ火力に長けた魔術が存在する。
「とりあえず『影の支配』を……、いややらなくても問題なさそうだな」
『影光』
レントの手のひらから出てきた黒い光。
驚くことに黒く染まっているにもかかわらず明るいのだ。
その黒き光はレントの意思で自由に曲げることが出来る。
しかし、大きな欠点も存在した。
影光はその軌道を大きく逸らして上に進む。
光と言いながら目視できるレベルの速度だ。
「これ毎回思うけどほんと遅いよなぁ。下手したら全力で走った大人でさえ追いつけないよ……」
光と名前になっててもそこはやはり影魔術。
遅さこそが代名詞の魔術系統に、直接的な速さの存在する魔術などないのだ。
当たりさえすれば影で蝕み、発動中の魔術を暴走させるくらいのことが出来る魔術なだけあってかなり使いづらい。
「これじゃ光じゃなくて触手だよ……名前考えた人何考えてんだ……」
本来は『影の支配』と併用することでホーミング性能を追加するのだが、今回に限ってはその必要はなかった。
「こんだけ人がいるなら適当にやっても当たるよな」
レントは適当にうねうねと動かしながら様々な人に当てていく。
これが火力というかはさておき、相手の魔術の暴発こそが影魔術での最大火力なのは確かなのだ。
防御ごと飛ばそうとする魔術士達は、なおも攻撃魔術を連発しておりレントの魔術に当たっていく。
するとどうだろう、たちまちその魔力は膨張し爆発を起こすのだ。
そうして1種の自爆とも思える状況にしつつも、防御を固めようと魔術を展開している人にも当てていく。
「レント。なんか変なことしてる」
「なんか、うねうねしたもの出してるね」
ミラとリンシアはレントの状況がよく分かっていなかった。
開始と同時に端へと寄って手からうねっとしたものを出している。
そしてそこからいきなり色んなところから爆発が起きたのだ。
そして、驚くべきことにリンシアは気づいた。
「レント、攻撃されてない」
「んん?? 確かに何もくらって無さそうだ」
そう、こんなに乱戦にでもなれば必ず攻撃は飛んでくるものであり、その攻撃が無傷なことはあれど1度も攻撃されないなんてことは無いのだ。
「何かやってるね、レント」
「そうね」
ミラとリンシアが舞台の戦いに見入っていると、ふと後ろから声をかける者がいた。
「やぁ、どうだい? 戦いの方は?」
聞き覚えのある声にミラは後ろに振り向く。
リンシアもそれにつられて後ろを向くが、その瞬間驚愕の表情を浮かべた。
「えっ、え?」
「レント。あれは?」
「あれは僕の影だよ。授業で習っただろ? 影魔術には影を自分そっくりに変えて動かせるって」
「言ってたけど……あそこまで違和感なく出来るものだったっけ……?」
「出来ない」
それはとある授業中、影魔術についての戦い方と対処法についての話になった時のことだろう。
確かにあの担当の教師は影魔術使いで、レントと同じように影を操っていた。
しかし、それは人と言うよりは人の形をした影だったのだ。少なくとも分身みたいな使い方は出来そうになかった。
「ははは……そこはレントということかな……」
「そうね」
「まぁ、支配領域内っていう縛りはあるけどね」
影ということもあり、普通の人には見ることは出来ても認識はできない。
ここでミラやその他待っている選手が認識できているのは、ここが『影の支配』範囲外だからということだ。
これが戦っているレントが攻撃をされていない理由だ。
魔術を食らってもその相手が自分のことを認識できない、その事を考えるとこれはかなり重宝しそうだ。
「これからこの魔術かなり役立つだろうなぁ」
「視覚などの感覚共有はしてるのかい?」
「してないよ。ただ、僕がこの場で操ってるだけ」
「あぁ、それじゃ偵察とかには向いてないわけだね」
確かにミラの言う通りだ。
ただ単に操っているだけなのでレント自信がその影を目視できないといけないうえ、影が感じたものはレントには伝わらないのだ。
「おっと、そろそろ終わりそうだ」
「レント無双」
「ええっと……」
舞台上のレントはひたすらに影光を操っており、とりあえず魔術を使いまくっている者は排除できていた。
「レント含めて、1……2……3…………7人残ってるね」
「影で戦える?」
「そろそろ戻った方が良さそうだね」
と言ってレントは支配内の影に潜り、自分の影と重なるように出てみる。
こうすれば分からないだろう。
その様子を先程の妖精族がずっと見ていたようでぎょっとしていた。
「さて、あと6人か……」
どうしたものか考えてるとかの妖精族が目に入る。ここらで共闘とするか。
「なぁ、一緒に戦うかい?」
「……!? わ、わかりました。ところで、何かありました?」
「ん? 何がだ」
「いえ、なんでもないです。攻撃は任せてもいいで……いや、そちらをお任せします」
先程から影魔術を使い続けてるので攻撃には秀でてないとの判断だろう。
妖精族が3人、レントが2人を相手してくれとのことらしい。
「いや、この人数ならなんとでもないよ」
「わかりました。では攻撃は任せます」
そういうと彼はその場所からいなくなり、空へと出現した。
羽がなくても飛ぶことは出来るんだな、とレントは思いながら相手に目を向ける。
「うーん、みんな血眼になってるよ……怖いなぁ」
「うおおおお!」
その叫びとともに1人の斧持ちが飛びかかってきた。
「させません!」
『昇炎柱閃』
あまりにも攻撃魔術チックな名前をしながらその魔術はあまりにも防御に寄っていた。
その魔術はレントを中心に火柱が立っていたのだ。
「これは……火の壁?」
「はい、この壁は外からの攻撃を受け付けずに中からの攻撃は通すものです。攻撃を続けてください」
それなら話は早い、レントは影魔術を展開し既に展開している『影の支配』を使って行使する。
『影鋭棘』
その名の通り柱のような大きさの棘がレントを中心にして5本並ぶ。
『影の支配』により追尾能力を得た、もはや三角錐と言うべきそれは一斉に放たれた。
「うお!?」
「きゃぁぁぁ!」
「あだっ」
「ちょちょちょちょ」
「おらぁぁぁぁ」
5人が5人ともそれぞれ違う反応を見せたが、舞台上に残ったのは3人だけのようだ。
先程の斧男は舞台から落ちていた。
「1番威勢のいい声が出てたのに……」
兎にも角にも勝負は決まった。
レントはレイスターに目配せをすると彼は分かったように宣言をする。
「ここまで! 今回の勝者は────
レントも無事予選を突破すると、気になった事を聞きに妖精族の元へと向かう。
彼も予選突破しており、その場から離れてないのですぐに見つかった。
「やぁ、プラティ」
「あぁ、レント……くんだね」
妖精族のプラティ、勝者宣言の時に聞こえたその名前を呼んでみた。
しかし、妖精族と言っても本当に小さいもんだ。
「何か用?」
「いや、君には僕が何に見えたのかなって。ほら、妖精族には見えるものがあるって聞くし」
「あぁ、その話」
彼によるとレントが影を操って分身みたいな事をしてるのは分からなかったが、人族ではない違和感が見えたらしい。
どうやら、内包してる魔力がどーのとか言っており妖精族には色々見えるのは確かなようだ。
認識できないはずの影を見て話しかけられたのもそのおかげだろう。
「話はそれだけ?」
「あぁ、うん。これだけだよ」
「うん、わかった。じゃあまたねレントくん。本線で戦おうね」
「楽しみにしてるよ」
今度は彼が敵となる。
影を見破られたのもあってかレントの中では警戒を強めることになった。
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