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有利✕港【俺の獲物】前
しおりを挟む中学に上がる際に行った健康診断でDomと診断された時、俺の両親は“やっぱりそうだったか”と愕然としたらしい。
両親が言うには、俺のDomの兆候は幼いときから出ていて散々手を焼いたらしい。俺はあまり覚えてないが、自分の気に入った物はけして離さず、奪われそうになれば壊してでも奪い返し、挙げ句に自分の気に入るように作り替える。
俺の家には分解され改造された玩具が沢山あった。幼い頃の写真をみれば、つぎはぎだらけになったいびつな玩具を持って俺は嬉しそうにしていた。
普通の人から見ればそれはかなり異常な光景だったらしい。
玩具だけでなく、時に動物にも興味を持った俺に両親は目を光らせていたらしい。
玩具ならばまだいいが、生き物の命を弄ぶようになったらどうしようといつも心配し、俺が深く興味を持つ前になるべく遠ざけるようにしていたらしい。
本来は厳しい両親ではなかったのだろうが、悲惨なニュースを見る度に俺がそうならないように色々と言い含めようとしていた。
その甲斐あってか、俺の中には強い支配欲とそれを隠そうとする思い、その二つが同時に存在している。
多くの人々から言われる優等生の仮面はそうしてできた。
中学でDomと判断されてから俺の両親はすぐに学校を探したらしい。Domの俺を受け入れ教育してくれる学校を。そうして見つけたのが王華学校だった。
だが、王華学校は実家から遠く、高校生からしか受け入れていない。系列の中学校もあったがそこも実家からは遠く、結局両親からすれば目の届かないところにいく不安があったらしい。
それでも、学校に連絡を取り、状況を話しとりあえず地元の学校に通い、なにかあればすぐに移動という結果に落ち着いた。
両親の目が行き届いていて抑制剤も効いているならば、時期を待つのもいいと言うことだった。系列の中学は王華学校とは違い寮がない、ダイナミクスに詳しいだけでダイナミクスを持たない生徒も通う普通の学校だ。
それが理由で俺は地元の中学に通いながら、オンラインでダイナミクスについて勉強することになった。
中学は両親の話もあってか、俺以外にはDomもSubもいないクラスだった。普通の思考と普通の性癖の中で俺は普通の顔をして日々を過ごした。
見た目的には何の問題も無く、勉強も好成績、友人もいるし、抑制剤だって効いていた。だから、両親は次第に少し変わった性癖を持っているだけで普通に暮らしていけるのではないかと思うようになった。俺も思春期の友人達の中で、心配するほど危機迫った内容ではなく自分でなんとかなるのではと思えてきた。
だがその考えは薬を飲み忘れた日にあっさりとなくなった。よりによって出かける日に抑制剤を飲むのを忘れ、その日に限ってSubに出会ってしまった。
それも、パートナーと喧嘩でもしたのか涙を流していた。その瞬間グレアがあふれ出し、支配したいという思いが抑えきれなくなった。
あの時、パートナーのDomが駆けつけなければ俺はそのSubを襲っていたと思う。
結局それがきっかけで中学を途中で転校し、王華学校系列の学校に行きそのまま王華学校に入った。
破壊型と言うことで要注意人物扱いされた俺だが、意外と学校は居心地がよかった。なんと言っても本性を隠さなくていい、警戒するような目を向けられ引かれることはあるが、本性を出しても心の底から拒否されることも見放されることはない。
それが意外と気が楽だった。
そうして俺は無事、学校を卒業し興味を持ってしまったピアッシングの為に外国に行き勉強し帰ってきて店を開いた。
ピアスの専門店を営業する傍ら自分のSubを探した。とは言っても壊す可能性が高いのはわかっていたから、少し過激な事でも受け入れてくれるDom向けの店を利用しながらだったが。
もしどうしても見つからない場合は、Dom向けの店の子をパートナーとして手に入れようかとも思っていた。そんな時だった港に出会ったのは。
たまたま入ったバーで、トイレに入っていたらドアをドンドン叩かれ、慌てて出たらその拍子に外にいた青年の顔にドアをぶつけてしまった。
「イッテ!」
「あ、ごめん」
(Subだ)
ドアが当たった顔を押さえ、涙を浮かべるその表情に俺の中のDom性が騒いだ。ピアスに何度も脱色を重ねたのだろう明るい髪の色、広めに開いた派手なシャツに、動いたら腹が見えそうな短いTシャツ、よく見れば顔は少し青ざめている。
歳はおそらく俺より少し下、未成年かどうかはわからないけどお酒の匂いがする。間違いなく飲んでいる。どこか生意気そうな瞳に浮かぶ涙が好みだった。
「だ、大丈夫? ごめん」
涙を浮かべるその顔をもっとよく見ようと俺は、心配するように顔を覗き込んだ。
どこにドアを当ててしまったのか、赤くなっていないだろうか? 痣にはなっていないか? 傷はないか? それを確かめようと顔を覗き込んだが、次の瞬間吐き気が襲ってきたらしい青年は口を押さえトイレの中に飛び込んでしまった。
「うげぇー・・・・・・うっ・・・・・・」
トイレの中から苦しそうな声と、嘔吐の音が聞こえる。どのぐらい飲んだのかはわからないが、酒にやられたのだろう。苦しそうなうめき声と嗚咽のようなむせる音、その声と共に先ほどの涙目が思い出される。
(参ったな、タイプだ)
立ち去らなくては変に思われるとわかっているのに、足が動かない。自分の心拍数が興奮で確実に上がっていくのを感じる。
名前はなんていうのだろうか? パートナーはいるのか? 好みのPlayは? 彼の事が知りたい。雰囲気はフリーに見えるが、決めつける事はできない。
そう思いながら、その場から動かずにいると個室のドアが開く音がした。
(でてきた)
廊下にいた俺がトイレの個室に通じるドアを開ければ、洗面台のところにうがいをしている彼がいた。青ざめた顔色は先ほどよりも落ち着き、それでも嘔吐が後を引いているのか瞳は潤んだままだった。
「はい、ハンカチ」
「ああ」
うがいを終えた彼に、ハンカチを渡せば意外とあっさりと受け取り口を拭った。
「すっきりした?」
「・・・・・・」
おそらく無意識だったのだろう、口を拭ったあとに俺をぎょっとした目で見つめた。
不審人物をみるような目が破壊欲の強いDom性を更に刺激する。押しつけるようにハンカチを返されそのまま立ち去ろうとするその手を掴まえた。
「ねぇ、君パートナーは? フリー?」
「はぁ?」
ここで逃したくないという思いで、一番聞きたいことを聞いたのに次の瞬間手を振り払われた。
「触んな!」
うなり声をあげる動物のように睨まれ、思わず手を離せば彼は逃げるように俺の横をすり抜け店の中へ戻ってしまった。
「いいな、凄くいい」
にやける顔を手で隠しつつ、後を追いかけ様子をうかがう。やはり、共に来ている友人の中にはDomはいないようだ。
店の中にも今は俺以外にDomはいない。これはチャンス、いや運命なのかも知れない。
少し離れた席に座り様子をうかがっていると、明らかに酒の入ったカクテルを飲む様子が見えた。
(大丈夫なのかな)
先ほどはあれほど酔っていたように見えたのに、更に酒を飲むのを心配してみていたが、意外と平気そうだった。
(うーん、カクテルは大丈夫なのかな)
お酒に弱いという訳じゃないのかと、みていると彼と友人らしい男は立ち上がった。帰るらしい様子に、俺も立ち上がりお金を払い外へ出る。
(どこ行っちゃったかな)
立ち上がった瞬間に少しフラついているようにみえたから、もしかしたらタクシーに乗ってしまったかも知れないと思ったが、大通りに向かい歩けばすぐにその姿をみつける事ができた。
完全に酔っているようで、ぐったりと壁に体を預ける彼を見つけ近寄る。
「大丈夫?」
「あ? ああ」
先ほどの警戒に満ちた目はそのままに、どこかぼんやりとした様子で見上げられ、人好きすると言われる笑顔を向ける。
「大分飲んだでしょ? ダメだよ弱いのに、そんなに飲んじゃ」
「なんだよ、お前・・・・・・」
「お家はこの近く?」
「うっせぇ」
「だれか迎えに来てくれる人はいるの?」
「うっせぇって言ってんだろ」
お酒を飲むと機嫌が悪くなるタイプかなとも思ったが、そういうわけでもなさそうだ。口は生意気だけど、暴れる様子もない。
「ねぇ、素直に答えて欲しいんだけど君にはパートナー、決まったDomはいるの?」
「・・・・・・そんなもんいねぇよ」
グレアを込めて聞いてみれば、彼は少し間を置くとあっさりと答えた。酔っていてもちゃんとグレアは効いているらしい。
(ランクはみたとこ、AかB。グレア慣れはしてなさそう)
「Playの経験は?」
「Play?」
「あれ? Playわからない? 君みたいなSubが俺たちDomと遊ぶことだよ」
「しらねぇ」
グレアを込めたまま聞いているから、それは反抗というより答えだろうと思う。ならば、知らないと言うことは初めてと言うことに違いない。
「Playしたことない?」
「・・・・・・ない」
「そうなんだ。じゃあ、俺と一回してみない?」
「お前と?」
「うん、凄く気持ちいいよ。一回試して損は無いと思うよ」
にっこりと笑みを浮かべたまま、グレアを発せれば、彼は少し間を置き頷いた。その時の嬉しさは、ガッツポーズをしたいほどだった。
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