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番外編【【初めてのクリスマス】】中

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のれんの中にはショッキングピンクの棚に色々な玩具やきわどい衣装が並べられていた。

「何か買う?」
「どうするか。・・・・・・そうだ、せっかくだからプレゼントってことでお前好きなの選ぶか?」
「・・・・・・」

 予想外過ぎる提案に、思わず本気かと思いつつどこか楽しそうな笑みを浮かべる冬真をみればごまかすような笑みを返された。

「そんなドン引いた顔するなよ。ちょっとした冗談だって」
「別にそこまで引いてねぇけど。浮かれるにもほどがあるなって」

 本気とは思っていないが、それにしてもどうかと思いながらも、力也は棚に並ぶ卑猥な玩具をみる。
 馴染みが深い、バイブやローターだけでもリアルな物からカラフルな色合いの物まで色々とある。その他にも、主に女性向けだが露出が高いコスプレ衣装などがある。

「あ・・・・・・発見」
「なんかいいのあった?」

 まさか本当に欲しいのがあったのかと少し驚きながら、力也が持ち上げた物を見た冬真は顔をしかめた。

「冬真の奴」
「却下」

 見て、見てと楽しそうに見せた冬真が出演しているAVは、嫌そうな顔と共にあっさりと却下された。
 昔お世話になっていた身の力也からすると懐かしい思い出の品かも知れないが、とうの本人の冬真からすれば黒歴史とも言える物だ。

「こんなにあるのになんで見つけてんだよ」
「丁度手に取ったらあった」

 棚には多くのAVが並んでいるのに、それをすぐに見つけ出したのは喜んでいいのか複雑な気持ちになりながらそのAVを取り上げ一応見る。

「これか」
「覚えてる?」
「一応」

 内容としてはあまり代わり映えのない内容だが、相手がSubと聞いたのにSubではなかったというハプニングがあったので覚えていた。

「まだ売ってたのかよ」
「回収も難しいしな。やっぱ買って回収しとく?」
「どうすっか・・・・・・」

 Sub相手ではなかったためコマンドもグレアも使っておらず、Sub向けのアダルトPlayビデオと考えると微妙な為、あまりいい気がしない。
 とはいえ、自分で買うのは嫌すぎる。

「回収したいなら俺が買うけど」
「これ回収したら、また入荷とかないよな」
「ないと思う」

 常備仕入れている物ではないので売れたらすぐに補充する訳ではないだろう。そう考えればここで回収して、再び来る可能性のあるこの店から無くしたい。

「よし、力也頼む」
「了解。ついでに他にもないか探しとく?」
「いい、これだけにしとく」

 沢山あるAVの中から探し出すのも嫌で、他は諦めることにして再び力也の手に戻す。無駄な疲労を感じながら、気分を変えようとなにか面白い物はないかと目線を動かす。

「ついでにこれも、一緒に」
「・・・・・・え?」
「後これも」
「・・・・・・これも?」

 手渡された物に、力也は固まった。それは女性のキャラクターが描かれた、突き抜ける形のホールと、両手両足を上げたまま固定する拘束具だった。
 そうして買う物を渡すと、今度は先ほどまでお菓子を入れていた籠を力也から奪い片手に持った。

「・・・・・・」
「力也、GO」【行け】
「プレゼントどこいったんだよ!」

 プレゼントと言いながら、羞恥Playになってしまったことに、突っ込みを入れつつ、しかたなくアダルトコーナーから若干離れた場所にあるレジを確認する。
 混んでいる店内では人目につかずにここを出てレジまで向かうのは難しく、人に見られるのは覚悟しなくてはならない。
 隠しながら持って行くにしても他になにも持っていないし、冬真が渡した箱がかさばり隠すのは難しい。DVDだけなら隠せたのに、何故よりにもよってわかりやすい絵が描かれた箱を二つも渡したのか。

「どうした? 買ってきてくれるんじゃなかったのか?」
「ちょっと待って」

 忙しい為か二人体制の店員を確認すれば一人は女性で一人は男性だった。同性の方が出しやすいかと思い、男性だけになった瞬間に覚悟を決める。

「よし」
「あ、これも追加で」
「・・・・・・」

 悩んでいたペナルティーか、更にローションまで足されてしまった。思わず睨むが、そんな力也の顔にニヤニヤとした顔で笑い返すと、冬真はその背を押した。

「やる気満々だってみられてこい」

 そんな風に言われ、アダルトコーナーから押し出されてしまった力也に、一瞬他の客からの視線が送られた。
 手に持った商品を見て、慌てたように目をそらされたがその仕草が力也の羞恥心をかき立てる。
 すぐに目線はそらされたが、見られたという思いだけで、体温が上がるのを感じる。なにも悪いことはしていないのに、顔を上げられずに徐々に大きくなっていく心臓の音を聞きながらレジに向かう。
 すれ違う人が全員自分の手にしている商品をみている気がする。先ほど冬真が言っていたように、やる気満々だと思われているのだろうか?
 AVとオナホと拘束具と、ローション、これだけでは力也が使うほうか、それとも使われるほうかはわからない。Subだとわからなければ力也がつかわれる方だとは思われないだろう。かといって、力也が誰かにそれを使う姿も似合わない。
 あり得るのは、罰ゲームかお使いだ。まさか、これからこれで悪戯される予定だとは誰も思わないだろう。
 そうは思っても、後ろからついてくる冬真が早足になろうとする力也の腰のベルトをつかんだことで全てがバレた気がした。
 こうなると完全な羞恥Playだ。離して欲しくとも振り払うこともできずに、力也は恥ずかしさに耐えながらレジに行くと、冬真は手を離し階段の傍へ行った。
顔を見られたくないと言っていたから、離れるのはわかるが離れて欲しく無かったと思いながら店員さんに頷くだけで会計を済ませた。
 年齢確認だろうが、チラリと顔を確認された事で更に体温が上がる。

「ありがとうございました」

 そう言った一瞬店員の目が力也をしっかり捕らえた気がした。しかしその次の瞬間店員は慌てたように即座に目をそらした。
 紙袋に入れられた商品を持ち、慌ててその場を離れた力也はそれに気づかず、冬真の傍に来ると息をついた。

「力也Good Boy」【よくできました】

凄く恥ずかしかったが、そう言われ頭を撫でられればそれだけで嬉しくなる。

「恥ずかしかった」
「恥ずかしがってる力也可愛かった。俺の代わりに買ってきてくれてありがとう」

 とんだお使いをさせられてしまったが、昔もこういう羞恥Playをされた時はもっと酷かった気がする。使う方か使われる方かわからないような物ではなく、もっと過激で使用用途がわかりそうな物を買わせられた覚えがある。
 しかも、店員の前で話しかけられたりもした。今回の冬真がやったのはそれに比べればただのお使いに近いように思えた。
 確かに凄く恥ずかしかったが、なにより安心感があった。好奇の目にさらしてやろうという訳ではなく、ちょっとした悪戯のような遊び心が全面にでている物だった。

「もうこれ、冬真が持ってよ」
「はいはい」

 袋に入っているから問題ないだろうと押しつければ、笑いながら冬真はそれを持った。そうして、もう一度撫でると力也の手をつかんだ。

「ご褒美においしい物買おうな」
「冬真のおごりだからな」
「わかってるって」

 楽しそうに笑うその手から、籠を奪うと力也は生鮮食品もあるコーナーへ向かって早足で歩いて行った。
 その後、散々悩んだ挙げ句に、大きめのケーキとチキンやピザなど、おいしそうな料理を手に入れた。

 施設にお菓子を届け、力也のマンションに戻ってくるととりあえず二人で料理の用意をして料理を食べることにした。

「しっかし、気づいたら列すげぇことになっててびっくりしたな」
「入った時はそこまでじゃなかったのに、あんなに並ぶなんて思わなかったよな」

 アダルトコーナーで遊んでいた所為もあり、気づいたら予想外の時間がたっていた。おかげで、クリスマスイブということもありレジには凄い行列ができていた。

「冬真が余計な遊びをしなければ、もう少し早くいけたかもしれなかったけど」
「思いつきでやったからな。ちょっと刺激も足りなかったし、今度は俺が馴染みの店でやるか」

 嫌みが全く通じていないどころか、次回の提案までされ、どうしていいのかわからず戸惑いの表情を返せば、冬真は苦笑を浮かべた。

「お前の気遣い利用して悪かったって。そんなに嫌ならやらねぇから」
「・・・・・・そこまで嫌じゃなかったけど・・・・・・」

 顔色を伺うように言われてしまうと、恥ずかしかったが実際嫌なわけでも、二度とやりたくないと思うほどではなかった。

「けど?」
「馴染みの店って?」
「王華学校の生徒達がいくとことか、AV男優してたときよく利用してたとことか。興味ある?」
「少し・・・・・・」
「じゃあ、今度連れて行ってやるよ」

 まるで強請っているようで恥ずかしくて、顔をみることもできずにいた力也はぎゅっと抱きしめられた。

「今度はちゃんとタグも見えるようにして、二人で楽しめるのゆっくり選ぼうな」
「また羞恥Play?」
「ダメ?」
「考えとく」

 恥ずかしいと同時に冬真が傍にいる安心感も感じられ、ご褒美も貰える羞恥Playは嫌ではないが、はっきりとやりたいと答えられる物でもなくそう返すしかなかった。

「ありがとう。楽しみにしてる」
「ほら、そんなことより! ピザ!

 抱きしめられている所為で手を止め、固まっている様子に調子に乗り、ご褒美代わりに首筋にキスをしようとした瞬間、力也が暴れ始めた。恥ずかしさが限界に達したのか、腕から逃れるとトースターの方へ押され笑い返す。

「はいはい」

 まるで怒っているかのようなその態度に、笑いながらピザを取り出し、それをクルクルと丸めた。

「力也、あーん」

 呼ばれ振り向いたその口の前に丸めたピザを出せば、すぐに食いついてきた。指先に残ったチーズをなめつつ、顔色をうかがえばおいしそうな顔に笑みが浮かぶ。

「どう?」
「うまい」
「ならよかった」

 チキンとサラダを盛り付けている力也の頭を撫でると、冬真は残りのピザを焼き始めた。
 
 絵に描いたような恋人同士の甘いクリスマスと言うのは、こういうものなのかと力也はどこか他人事の用に思っていた。

「力也、あーん」

 ほくほくとした顔で、自分の口にではなく力也の口に料理を運ぶ冬真は、楽しそうでどこで止めていいのかわからない。
 それに、これが冬真の考える普通のクリスマスだとしたら止めるのは躊躇われる。

(誰が見てる訳でもないし、楽しそうだし)

 止めるほどのものではないかと切り替え大人しく食べさせられた。
 
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