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第七十五話【目覚め】後2
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ああ、やはりこうなってしまったかと冬真は一人苦笑した。思えば、Aランクのグレアに耐えていた時点でこうなることは予想できていた。
もしかしたら、力也はずっと前からAとSの間にいたのかもしれない。それが、この一年の間の経験と、冬真というパートナーを手に入れたことが後押しとなり、けっかSランクに届いてしまったのだろう。
「俺がS?」
繰り返し言われたことでやっと理解が追いついたのだろう、それと同時に力也の顔に不安の色が現れる。
「Sって、冬真は・・・・・・」
やはり力也もすぐにそこに気づいたらしい、信じられないかのように、困ったように微笑む冬真を見つめる。
「やだ。いやだ! 俺は冬真の物だ!」
「力也」
「だって昨日だってあんなに気持ちよかった。冬真のグレアが大好きなのに、なんで! 俺はこのままでいい」
涙を流し吠えるように叫ぶ力也に、うれしさよりも胸が痛くなる。パートナーの力では満足できなくなる。その恐怖はSubでなければ理解できないだろう。
特に力也はグレアが効かない事やコマンドに対する反応が遅いことを理由に、Domに距離を置かれてきた過去がある。
やっと自分に合う人に出会い、全てを支配してもらえると思ったのに、それが叶わなくなる。
「落として、俺を落としてください。AだってBだっていい! 冬真のグレアが効くように、落としてください。お願いします」
泣き叫ぶ、力也の言葉は冬真の胸に深く突き刺さる。いつもはぐらかすのにこんなにも思ってくれている。聞いたことのない悲痛な叫びに、冬真の瞳にも涙が浮かぶ。
「残念ながら落とすことはできない」
「そんな・・・・・・。じゃあ、俺このままでいいです。俺は冬真のグレアで十分満足できる。大丈夫です。俺ずっとそうやってなんとかしてきたんだから、大好きな冬真相手なら絶対それで十分満足できます」
そう言って縋るような笑みを浮かべる力也に神月までも、痛々しい者をみるように眉をしかめた。
もう限界だった。これ以上力也にこんな思いをさせる訳にはいかない。
「力也、それ以上言わなくていい」
「だって、冬真・・・・・・俺・・・・・・」
「大丈夫、大丈夫だから俺はお前を手放す気もないし、お前を支配することもやめない」
「ほんと」
「本当だ。お前は一生俺の物だ」
そう言えば力也の瞳が喜びの色に変り、先ほどまでの悲痛な様子とは違い、甘えるようにすり寄ってきた。
「正直少し早いとは思うが」
「力也に我慢はさせたくありません。お願いします、俺をSに上げてください」
そう、このまま冬真が力也のご主人様としているにはこれしか方法がない。力也のランクを無理矢理下げるのは、力也自身に大きな負荷がかかる。価値を落とすことより、大きな負荷がかかる。
Domの力を奪うのならば、容赦なくたたき付ければいいが、大事なSub相手にそんなことはできない。一歩間違えば、力也という人格すら危うくなる。
ならばできる手段は二つ、一つはSランクにPlayを託す事、例えば神月が欲求不満にならないよう力を貸しそれ以外は冬真が相手をすると言う方法。
これならば、例え冬真のランクがそのままでも、二人は一応パートナー関係を続けることができる。ただ、それはあまり得策とは言えない。
力也の中にあるSub性と心のバランスが崩れてしまう可能性がある。それに力也は、複数のDomを相手にすることを嫌がっていた。そんな力也にその選択をさせる訳にはいかない。
だから、冬真にとってとれる手段は一つしかなかった。
「SランクのDomには役目もある。お前が見たくない物も沢山みることになる。それでも上がるんだな」
「はい」
「冬真、役目って何? 無理しようとしてる?」
「してねぇよ。お前を失うことに比べたらなんてことない内容だから、安心しろ」
そう言うと、冬真は涙が浮かぶ力也の目尻にキスをした。まるでこれが最期と言うように、愛情を込めたグレアで力也を包み込む。
「待ってて、俺もそっちいくから」
にっこり微笑まれ、グレアシールドで包み込まれた力也はただ頷いた。
「力也、部屋の外に出てろ」
「はい」
神月に命じられ、力也は部屋の外へ出た。そのままふらりと結衣とマコがいる部屋のドアをノックする。
「りっくん?」
「入っていい?」
「いいよ」
ドアを開ければそこは神月のグレアがしっかりと染みついた寝室だった。思わず、中に入るのをためらう。正直入ろうと思えば入れない空間ではない、ただ今は入りたくない。
「ごめん、ごめん、キツかった?」
力也の様子に気づいたのだろう、マコが部屋の入り口まで来てくれた。
「いえ、すみません。ちょっと・・・・・・」
「何があったかはなんとなくわかるよ。Sランク上がったんでしょ? おめでとう」
「ありがとうございます。それでマコさんに教えて欲しいんですけど、SランクDomの役割ってなんなんですか?」
「そっか、やっぱりとうくんも上がるんだね」
マコも力也が上がるのはわかっていたのだろう、驚いた様子もなく頷いた。
「SランクのDomの役割は俺も詳しくは知らないんだ。でも、SランクDomになると統括できるように、自覚を持って行動しなきゃならないし、交流会なんてのもあるんだ」
「交流会?」
「うん。参加は自由なんだけど、Sランクは少ないから交流を持つべきだとされているんだ」
「そうなんですね」
神月は冬真に尋ねたわけがわかった気がする。Sランクになるということは、Domの代表となるようなものなのだろう。冬真が実は嫌いなDomの・・・・・・。
「それでも、とうくんはなるって言ったんでしょ? ご主人様がそういうならSubはそれに従うしかない。でしょ?」
「はい」
そう例え、どんな内容でも最期に決めるのは冬真だ。力也は全てを冬真に渡しているのだから、信じて任すしかない。大丈夫、冬真はいつも通り笑ってくれた。ただ信じればいい。
力也が出て行った部屋で、冬真は神月と向かい合っていた。SubのSランクに上がったことを確かめるのとは違い、Domを無理矢理引き上げるにはグレアでマウントを取り合うしかない。
「じゃあ、俺に負けないよう食いついてこい」
「わかりました」
「俺に負けたら、力也を奪われると思え」
「はい!」
神月と冬真は互いにグレアを発した。高ランクDom二人の強い欲望が露わになる。人を支配したい、自分の物としたい、従わせたい、守りたい、愛したい、いじめたい、可愛がりたい。
次々に浮かぶ欲望は強くなり、思わずクラッとしそうなほどの強い欲望になる。
(気持ち悪い)
神月のグレアだけでなく、自分の中の欲望さえ気持ち悪い。力也を奪われたくなくて、それだけを考えるのにそれだけでは足りない。
「もっと貪欲になれ、力也一人に絞るな。いままで出会ったSub全てを支配するつもりでこい」
力也だけでもいいと考えている冬真にとってそれは難しく、ましてや今まであったSub達は多くがフリーではない。それを支配するつもりでと言われても、それほどの欲を出せない。
「お前の欲はそんなもんじゃないだろ! 食らいついてこい! 食らいついてこないなら力也だけでなくお前の力を奪う」
「そんなことされたら永遠に力也を取り返せないじゃないっすか」
「そうだ。それが嫌なら食らいつけ! 自分自身が王だと思うほどに欲を高めろ!」
(嫌だ。力也を奪われたくない、俺は力也のDomだ。やっと手に入れた俺の物だ)
そう思った瞬間、冬真の内からも強いグレアがあふれ出し、神月のグレアを押し返す。食いついてきたグレアに神月はニヤッと笑い、更に強めた。
「こい!」
「うぉぉぉっ!!」
吐き気がするほどの、強い欲望を含んだグレアが神月のグレアとぶつかった。荒削りではあるが、背筋が凍りそうなほどの欲望を映す瞳は飢え、ただひたすらにSubを欲していた。
「よし、そのまま保て」
そう言うと、神月は自分のグレアを押さえ込み、部屋の外に向かい力也の名を呼んだ。
とんでもない量のグレアを感じ、力也は咄嗟にマコと結衣のいる部屋のドアを閉めた。なにをしているのかはわからないが、先ほどいたリビングから冬真と神月、二人分の恐ろしいほどのグレアが発せられている。
さすがに、震えそうになる体を廊下の壁に預けながらリビングの方を見る。
(戦ってる)
力也は確信していた。いま、冬真は戦っている。自分の中の限界と力也の為に勝負をしている。頑張れ、声に出さずに力也は念じた。
自分はもう冬真の物なのだ。それを変えるつもりはない。
そうしていると、次第に冬真のグレアが強くなるのを感じた。いつもはお湯のような暖かい冬真のグレアがまるで大きな海の波のように感じる。
流されそうなほどの強い波は、力也を押し流し、そして強く引き寄せる。
「力也、こい」
怖いほどのグレアに、惹かれる自分に気付けば、神月の声が聞こえた。
「はい」
フラフラとする足取りでリビングに向かう、一歩向かうごとに、感じるグレアは力也を強引に引き寄せていく。
ドアを開けた先にいた冬真に、力也は目を奪われた。いや、目だけではない、全てを奪われた。
「Come」【こい】
そのコマンドをもらえただけで、もつれる足でその足下へ膝をつく。差しのばされた手に、両手を添え受け取る。
するりと顔を寄せれば、慈悲に満ちたグレアが力也を包む。自分のSub性が喜んでいるのがわかる。この人に従いたい、支配されたい、可愛がって欲しい。それだけが頭に浮かぶ。
「いいこ。力也、お前は俺の物だ」
「はい、俺のご主人様」
熱に浮かされたようにとろりとした表情で返す力也を、冬真は見下ろし、優しくその頬を撫でた。
「おめでとう冬真、これでお前もSランクだ。ようこそ、SランクDomの世界に」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
こうして冬真と力也はSランクとなり、同時に二人は数少ないSランクの中の最年少のSランクとなった。
もしかしたら、力也はずっと前からAとSの間にいたのかもしれない。それが、この一年の間の経験と、冬真というパートナーを手に入れたことが後押しとなり、けっかSランクに届いてしまったのだろう。
「俺がS?」
繰り返し言われたことでやっと理解が追いついたのだろう、それと同時に力也の顔に不安の色が現れる。
「Sって、冬真は・・・・・・」
やはり力也もすぐにそこに気づいたらしい、信じられないかのように、困ったように微笑む冬真を見つめる。
「やだ。いやだ! 俺は冬真の物だ!」
「力也」
「だって昨日だってあんなに気持ちよかった。冬真のグレアが大好きなのに、なんで! 俺はこのままでいい」
涙を流し吠えるように叫ぶ力也に、うれしさよりも胸が痛くなる。パートナーの力では満足できなくなる。その恐怖はSubでなければ理解できないだろう。
特に力也はグレアが効かない事やコマンドに対する反応が遅いことを理由に、Domに距離を置かれてきた過去がある。
やっと自分に合う人に出会い、全てを支配してもらえると思ったのに、それが叶わなくなる。
「落として、俺を落としてください。AだってBだっていい! 冬真のグレアが効くように、落としてください。お願いします」
泣き叫ぶ、力也の言葉は冬真の胸に深く突き刺さる。いつもはぐらかすのにこんなにも思ってくれている。聞いたことのない悲痛な叫びに、冬真の瞳にも涙が浮かぶ。
「残念ながら落とすことはできない」
「そんな・・・・・・。じゃあ、俺このままでいいです。俺は冬真のグレアで十分満足できる。大丈夫です。俺ずっとそうやってなんとかしてきたんだから、大好きな冬真相手なら絶対それで十分満足できます」
そう言って縋るような笑みを浮かべる力也に神月までも、痛々しい者をみるように眉をしかめた。
もう限界だった。これ以上力也にこんな思いをさせる訳にはいかない。
「力也、それ以上言わなくていい」
「だって、冬真・・・・・・俺・・・・・・」
「大丈夫、大丈夫だから俺はお前を手放す気もないし、お前を支配することもやめない」
「ほんと」
「本当だ。お前は一生俺の物だ」
そう言えば力也の瞳が喜びの色に変り、先ほどまでの悲痛な様子とは違い、甘えるようにすり寄ってきた。
「正直少し早いとは思うが」
「力也に我慢はさせたくありません。お願いします、俺をSに上げてください」
そう、このまま冬真が力也のご主人様としているにはこれしか方法がない。力也のランクを無理矢理下げるのは、力也自身に大きな負荷がかかる。価値を落とすことより、大きな負荷がかかる。
Domの力を奪うのならば、容赦なくたたき付ければいいが、大事なSub相手にそんなことはできない。一歩間違えば、力也という人格すら危うくなる。
ならばできる手段は二つ、一つはSランクにPlayを託す事、例えば神月が欲求不満にならないよう力を貸しそれ以外は冬真が相手をすると言う方法。
これならば、例え冬真のランクがそのままでも、二人は一応パートナー関係を続けることができる。ただ、それはあまり得策とは言えない。
力也の中にあるSub性と心のバランスが崩れてしまう可能性がある。それに力也は、複数のDomを相手にすることを嫌がっていた。そんな力也にその選択をさせる訳にはいかない。
だから、冬真にとってとれる手段は一つしかなかった。
「SランクのDomには役目もある。お前が見たくない物も沢山みることになる。それでも上がるんだな」
「はい」
「冬真、役目って何? 無理しようとしてる?」
「してねぇよ。お前を失うことに比べたらなんてことない内容だから、安心しろ」
そう言うと、冬真は涙が浮かぶ力也の目尻にキスをした。まるでこれが最期と言うように、愛情を込めたグレアで力也を包み込む。
「待ってて、俺もそっちいくから」
にっこり微笑まれ、グレアシールドで包み込まれた力也はただ頷いた。
「力也、部屋の外に出てろ」
「はい」
神月に命じられ、力也は部屋の外へ出た。そのままふらりと結衣とマコがいる部屋のドアをノックする。
「りっくん?」
「入っていい?」
「いいよ」
ドアを開ければそこは神月のグレアがしっかりと染みついた寝室だった。思わず、中に入るのをためらう。正直入ろうと思えば入れない空間ではない、ただ今は入りたくない。
「ごめん、ごめん、キツかった?」
力也の様子に気づいたのだろう、マコが部屋の入り口まで来てくれた。
「いえ、すみません。ちょっと・・・・・・」
「何があったかはなんとなくわかるよ。Sランク上がったんでしょ? おめでとう」
「ありがとうございます。それでマコさんに教えて欲しいんですけど、SランクDomの役割ってなんなんですか?」
「そっか、やっぱりとうくんも上がるんだね」
マコも力也が上がるのはわかっていたのだろう、驚いた様子もなく頷いた。
「SランクのDomの役割は俺も詳しくは知らないんだ。でも、SランクDomになると統括できるように、自覚を持って行動しなきゃならないし、交流会なんてのもあるんだ」
「交流会?」
「うん。参加は自由なんだけど、Sランクは少ないから交流を持つべきだとされているんだ」
「そうなんですね」
神月は冬真に尋ねたわけがわかった気がする。Sランクになるということは、Domの代表となるようなものなのだろう。冬真が実は嫌いなDomの・・・・・・。
「それでも、とうくんはなるって言ったんでしょ? ご主人様がそういうならSubはそれに従うしかない。でしょ?」
「はい」
そう例え、どんな内容でも最期に決めるのは冬真だ。力也は全てを冬真に渡しているのだから、信じて任すしかない。大丈夫、冬真はいつも通り笑ってくれた。ただ信じればいい。
力也が出て行った部屋で、冬真は神月と向かい合っていた。SubのSランクに上がったことを確かめるのとは違い、Domを無理矢理引き上げるにはグレアでマウントを取り合うしかない。
「じゃあ、俺に負けないよう食いついてこい」
「わかりました」
「俺に負けたら、力也を奪われると思え」
「はい!」
神月と冬真は互いにグレアを発した。高ランクDom二人の強い欲望が露わになる。人を支配したい、自分の物としたい、従わせたい、守りたい、愛したい、いじめたい、可愛がりたい。
次々に浮かぶ欲望は強くなり、思わずクラッとしそうなほどの強い欲望になる。
(気持ち悪い)
神月のグレアだけでなく、自分の中の欲望さえ気持ち悪い。力也を奪われたくなくて、それだけを考えるのにそれだけでは足りない。
「もっと貪欲になれ、力也一人に絞るな。いままで出会ったSub全てを支配するつもりでこい」
力也だけでもいいと考えている冬真にとってそれは難しく、ましてや今まであったSub達は多くがフリーではない。それを支配するつもりでと言われても、それほどの欲を出せない。
「お前の欲はそんなもんじゃないだろ! 食らいついてこい! 食らいついてこないなら力也だけでなくお前の力を奪う」
「そんなことされたら永遠に力也を取り返せないじゃないっすか」
「そうだ。それが嫌なら食らいつけ! 自分自身が王だと思うほどに欲を高めろ!」
(嫌だ。力也を奪われたくない、俺は力也のDomだ。やっと手に入れた俺の物だ)
そう思った瞬間、冬真の内からも強いグレアがあふれ出し、神月のグレアを押し返す。食いついてきたグレアに神月はニヤッと笑い、更に強めた。
「こい!」
「うぉぉぉっ!!」
吐き気がするほどの、強い欲望を含んだグレアが神月のグレアとぶつかった。荒削りではあるが、背筋が凍りそうなほどの欲望を映す瞳は飢え、ただひたすらにSubを欲していた。
「よし、そのまま保て」
そう言うと、神月は自分のグレアを押さえ込み、部屋の外に向かい力也の名を呼んだ。
とんでもない量のグレアを感じ、力也は咄嗟にマコと結衣のいる部屋のドアを閉めた。なにをしているのかはわからないが、先ほどいたリビングから冬真と神月、二人分の恐ろしいほどのグレアが発せられている。
さすがに、震えそうになる体を廊下の壁に預けながらリビングの方を見る。
(戦ってる)
力也は確信していた。いま、冬真は戦っている。自分の中の限界と力也の為に勝負をしている。頑張れ、声に出さずに力也は念じた。
自分はもう冬真の物なのだ。それを変えるつもりはない。
そうしていると、次第に冬真のグレアが強くなるのを感じた。いつもはお湯のような暖かい冬真のグレアがまるで大きな海の波のように感じる。
流されそうなほどの強い波は、力也を押し流し、そして強く引き寄せる。
「力也、こい」
怖いほどのグレアに、惹かれる自分に気付けば、神月の声が聞こえた。
「はい」
フラフラとする足取りでリビングに向かう、一歩向かうごとに、感じるグレアは力也を強引に引き寄せていく。
ドアを開けた先にいた冬真に、力也は目を奪われた。いや、目だけではない、全てを奪われた。
「Come」【こい】
そのコマンドをもらえただけで、もつれる足でその足下へ膝をつく。差しのばされた手に、両手を添え受け取る。
するりと顔を寄せれば、慈悲に満ちたグレアが力也を包む。自分のSub性が喜んでいるのがわかる。この人に従いたい、支配されたい、可愛がって欲しい。それだけが頭に浮かぶ。
「いいこ。力也、お前は俺の物だ」
「はい、俺のご主人様」
熱に浮かされたようにとろりとした表情で返す力也を、冬真は見下ろし、優しくその頬を撫でた。
「おめでとう冬真、これでお前もSランクだ。ようこそ、SランクDomの世界に」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
こうして冬真と力也はSランクとなり、同時に二人は数少ないSランクの中の最年少のSランクとなった。
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