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第六十三話【過去の】後
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ジョギングを終え、荷物を置きっぱなしにしていたジムへ戻るとシャワーを浴びた。本当はもう少しトレーニングをする予定だったが、冬真が迎えに来ると言ったので早めに切り上げる。
ジョギングでかいた汗を流し、体を洗うとそっとあたりを確認する。他にシャワールームを使用している人はいない、自然な流れで後ろにも手を伸ばした。
そういう目的だと言われたわけじゃないが、そういうことになっても大丈夫なようにきれいにしておく。
別に期待している訳じゃない、ただなんとなくその方が落ち着く。いつどこで誘われても綺麗にしておけば、流れることはない。
「あー、これもしかして後遺症ってことか?」
冬真とするようになって意外と昔関係のあったDomたちの教えのようなものが俺の中に残っていることに気づいた。他のやつの手垢のようなそれを冬真は後遺症や俺が頑張ってきた証だと責めずにうけいれてくれる。
思えば、昔のDomに“俺と会うときは必ずすぐできるようにしてこい”と言われた覚えがある。今も冬真に言われた訳でもないのに、用意してしまうのはそれが関係しているのかもしれない。
(だから俺はいつもでも・・・・・・)
そう考えた瞬間首をかしげる。本当にいつも中まで綺麗にしていたか? そうではなかった、確かに綺麗にしてきていた時もあった。でも、そのままの時もあったはずだ。
なら今日はなぜ、綺麗にしなければと思えたのか、きっかけでもあったのか、そう考えればすぐに答えは出た。電話で冬真があんな質問をしたからだ。
「なんだ。結局冬真の所為じゃないか」
そうわかってしまえば、一気に心が軽くなった。その気になってしまったと、文句を言おうかと思うも、喜ばせてしまうだけのような気がする。
どうしようかと思いつつ、もう一度後ろへ手を伸ばした時、ガヤガヤと人の話し声が聞こえシャワールームに人が二人入ってきた。
「お、力也じゃん」
「邪魔するよ」
よりによって顔なじみDomもいた為、平常心を装い、挨拶を返すと後ろに回した手を戻し普通に体を洗い終わりにした。
「もう帰るのか?」
「はい、パートナーが迎えに来てくれるんで」
「そーいやクレイムしたんだよな。おめでとう」
「そうなのか? おめでとう」
「ありがとうございます」
Colorをつけてジムに来るときに見られていたらしく、あっさりと祝われ力也はお礼を返した。
「もう気軽にちょっかいだせないな」
「言うほどちょっかいだしてないじゃないっすか。かわいい女性が好きだって言ってたくせに」
「それでも、ちょっかいだせるSubがいなくなるのは寂しいんだよ。あー、世の中にもっとSubがいればいいのに」
「それ俺のパートナーもいいそうです」
「Domはみんなそう思うんだよ」
「ふーん。じゃあ俺帰ります」
「冷たい」
気安さを感じる相手の反応に、笑い返し力也はシャワールームを後にした。時間はもう少しあるが、ああ見えて意外と心配性で独占欲のある冬真の事を考えるとそのまま長居する気にもなれず、着替えも手早く済ませる。
おかげで時間には十分余裕を持って、ジムを出たのにすでに冬真がいたときには驚き顔をしかめてしまった。
「なんでもう来てるんだよ」
「電車の時間がわかってなくて・・・・・・ってか、早くついたらいけなかったのかよ」
「そんなんじゃねぇけど、驚いたから」
余計な事を言ってしまったと思うも、言い訳するように言い冬真の表情を確かめれば怒っている様子はなかった。
「そういうかわいくねぇ事言うなら。力也、Come」【こい】
ジムの入り口付近という知り合いも多い場所で、そう命じられ一瞬躊躇するも広げた両手とコマンドを拒否することもできずに大人しく近づき、腕のなかに収まった。
「はい、いいこ」
体を寄せれば、優しく背中をなでる冬真へ、どう答えていいのかもわからず“ピーピー”と甘える鳴き声を出した。
軽く食事を済ませると、冬真に手を引かれ道を歩く。目的地があるらしいが言わない、またサプライズとか言い出すか、言うほどの事でもないかだ。
しっかりと手をつかんだまま、どこに連れていかれるかわからない時間だが、力也はこの時間が嫌いではない。
「そーいや、今日ジョギングの途中に女性警察官のDom二人みた」
「あー、女王様コンビか」
予想通り、王華学校の関係者だったらしく、すぐに思い当たったのかそう返ってきた。
「女王様コンビ?」
「よくそう呼ばれてんだよ。密着警察とかにも出るし、わりと有名なんだよ」
「そうなんだ」
「何してた?」
「酔っ払いの相手してた」
「真っ昼間から酔うなよな、みっともない」
辛辣な言葉に、頷き笑い返した。実際見ていたが、他に言い様がなかった。
そんな話をしていると、冬真が脇道に入った。手を引かれたままの力也もそちらにはいるとそこはラブホがいくつか建ち並ぶ通りだった。
(え? やっぱする気か)
無論、するかしないかの決定権は冬真の物だし、言われていないからと不満に思うわけでもない。でも、なんとなくそういうことをするつもりにしてはテンションが違う気がするがと不思議に思いながら手を引かれる。
その時だ。ちょうど通りかかったコンビニから出てきた男性が力也を見て驚いた顔を浮かべた。
「力也?」
聞き覚えのある声に、立ち止まった力也の様子に冬真も立ち止まると、男性を見て顔をしかめた。言わずもがな、Domだしかも、力也の昔の相手の中の一人だった。
「あー山居さんだっけ? 久しぶり」
「散々相手してやったのに、疑問形で呼ぶなよ。相変わらずだな」
わかりやすく呆れたように鼻で笑う相手に、そういえばこんな人物だったと思い出す。
口が悪いというか、Domらしい横柄さが目立つ態度をいつもしていた。あの頃はこういうタイプでもなければ、体格のいい自分を相手にしてはくれないのだと思っていた。
「力也、こいつ前に相手してやった奴?」
こっちが相手してもらっていた気でいたので、その言い方に一瞬引っかかるも、内容的には間違っていないと頷いた。
「なんだよ、もう次ができたのか? 俺のしつけに耐えきれなくて逃げたくせに、ちゃんとできてるのか?」
コンビニの袋を片手に近寄ってきた男から力也を守るように冬真は前に出た。その仕草に男は鼻で笑うと冬真をじっくりと見た。
普段から自分を強く見せようと横柄に、粗暴に振る舞う男は冬真をどう見たのか、挑発的な目線を向けた。
不機嫌そうだが抑えている冬真に、変なことを言われると嫌だなと力也が思っていると、案の定山居と呼ばれた男はあざ笑うかのように口を開いた。
「なるほど、根性ねぇのがばれるのが嫌で甘っちょろい躾するやつにしたのか。一応学んだみてぇじゃん」
「力也、お前なんでこんなの相手したんだよ」
挑発的な視線と言葉を無視し、冬真は力也へ話しかけた。
いくら許してくれるとは言っているが、昔の相手との対面は初めてで、さすがに不安になっていた力也はその質問に少し口ごもるように答えた。
「なんか確かバーだっけかな・・・・・・誘われたから」
「おい、てめぇが二丁目のバーで寂しそうにしてたから誘ってやったんだろ。その後も何度か相手してやったのに逃げやがって」
きっかけはどこだったかと思いだしつつ答えた力也を小馬鹿にするように、付け足した男の言葉を冬真は綺麗に流した。
「誘われたからってこんな明らかにテクなしについてくなよ」
「ごめん」
呆れたような目線は向けられるも、そこに軽蔑の様子はなく、ほっとしながらも謝る。
「おい、テクなしってなんだ!」
「こんな小バエにみたいにうるさいやつ相手しても楽しくねぇだろ?」
「え・・・・・・」
その当時は飢えていた為、キツイ言葉も物のように扱われるPlayもそれなりに楽しかった気もするとは言えずに口ごもると冬真はため息をついた。
「さてはお前、薬飲んでなかったろ」
「あれ苦いし、ダルくなるし」
正直にそう返せば、冬真は大きくため息をはいた。抑制剤とも呼ばれる鎮静剤を服用すると体調が悪くなるから嫌だと言うのはわかるが、味を理由に飲まないというのは聞いたことがなかった。どうも力也は自分の耐性を過信している。
「さっきから俺の事を無視すんじゃねぇ!」
二人して放置していたのがしゃくに障ったのだろう。攻撃的なグレアを発した男に、冬真はチラリと視線を送った。
「こんなとこでグレア出すなよ」
「あ? 大丈夫だろ、そいつ鈍感だし、感じねぇよ」
むろん、男のグレアが力也になんの影響も及ぼせないのは、ランクが低いからで、鈍感だからではない。しかし、男は自分のグレアに自信を持っていたし、目の前の冬真を舐めていた。
「みっともねぇから言ってんだよ。そうやってグレアとコマンドに頼って、人を傷つけることでしか人を支配できないやつをテクなしっていうんだ」
「ああ?」
「力也が逃げたとか、根性なしとか言ってたけどお前がテクなしだったのが原因だろ。自分の努力が足りなかったからって俺のSubを馬鹿にすんな」
「てめぇこそ! どうせそいつに遊ばれてるだけだろう! 知らないなら教えてやるよ! そいつは言われたことできなかった挙げ句に、お仕置きのCornerも破ったんだ!」
ついに激高し始めた男の言葉に、冬真はチラリと力也に視線を送った。男から見ればそれは力也に疑念を持ったように見えた。
「力也、なんで帰ったのか言ってやれよ」
「・・・・・・あのときは、もう許してもらえないんだって。見捨てられたんだって・・・・・・俺なんかいないほうがいいんだって・・・・・・」
あのときも、確かこんなホテル街だった。何で怒られたのかはもうわからなくなってしまったけど、なにかに失敗して怒られてそのままCornerを言い渡され、ホテルの一室に置き去りにされた。
呼んでも謝っても、全然帰ってこなくて、やがて息が苦しくなり目の前が真っ暗になった。そして一瞬意識が飛んだ。すぐに気づいたが、その時にも相手は居なくて、もうだめなのだとわかり力也は部屋を出た。あれは軽いサブドロップに陥っていたのだろう。
思えばあの頃はこの男の事が好きだったのかもしれない、そうでなければあれほど悲しくなった意味が今ではわからない。
ジョギングでかいた汗を流し、体を洗うとそっとあたりを確認する。他にシャワールームを使用している人はいない、自然な流れで後ろにも手を伸ばした。
そういう目的だと言われたわけじゃないが、そういうことになっても大丈夫なようにきれいにしておく。
別に期待している訳じゃない、ただなんとなくその方が落ち着く。いつどこで誘われても綺麗にしておけば、流れることはない。
「あー、これもしかして後遺症ってことか?」
冬真とするようになって意外と昔関係のあったDomたちの教えのようなものが俺の中に残っていることに気づいた。他のやつの手垢のようなそれを冬真は後遺症や俺が頑張ってきた証だと責めずにうけいれてくれる。
思えば、昔のDomに“俺と会うときは必ずすぐできるようにしてこい”と言われた覚えがある。今も冬真に言われた訳でもないのに、用意してしまうのはそれが関係しているのかもしれない。
(だから俺はいつもでも・・・・・・)
そう考えた瞬間首をかしげる。本当にいつも中まで綺麗にしていたか? そうではなかった、確かに綺麗にしてきていた時もあった。でも、そのままの時もあったはずだ。
なら今日はなぜ、綺麗にしなければと思えたのか、きっかけでもあったのか、そう考えればすぐに答えは出た。電話で冬真があんな質問をしたからだ。
「なんだ。結局冬真の所為じゃないか」
そうわかってしまえば、一気に心が軽くなった。その気になってしまったと、文句を言おうかと思うも、喜ばせてしまうだけのような気がする。
どうしようかと思いつつ、もう一度後ろへ手を伸ばした時、ガヤガヤと人の話し声が聞こえシャワールームに人が二人入ってきた。
「お、力也じゃん」
「邪魔するよ」
よりによって顔なじみDomもいた為、平常心を装い、挨拶を返すと後ろに回した手を戻し普通に体を洗い終わりにした。
「もう帰るのか?」
「はい、パートナーが迎えに来てくれるんで」
「そーいやクレイムしたんだよな。おめでとう」
「そうなのか? おめでとう」
「ありがとうございます」
Colorをつけてジムに来るときに見られていたらしく、あっさりと祝われ力也はお礼を返した。
「もう気軽にちょっかいだせないな」
「言うほどちょっかいだしてないじゃないっすか。かわいい女性が好きだって言ってたくせに」
「それでも、ちょっかいだせるSubがいなくなるのは寂しいんだよ。あー、世の中にもっとSubがいればいいのに」
「それ俺のパートナーもいいそうです」
「Domはみんなそう思うんだよ」
「ふーん。じゃあ俺帰ります」
「冷たい」
気安さを感じる相手の反応に、笑い返し力也はシャワールームを後にした。時間はもう少しあるが、ああ見えて意外と心配性で独占欲のある冬真の事を考えるとそのまま長居する気にもなれず、着替えも手早く済ませる。
おかげで時間には十分余裕を持って、ジムを出たのにすでに冬真がいたときには驚き顔をしかめてしまった。
「なんでもう来てるんだよ」
「電車の時間がわかってなくて・・・・・・ってか、早くついたらいけなかったのかよ」
「そんなんじゃねぇけど、驚いたから」
余計な事を言ってしまったと思うも、言い訳するように言い冬真の表情を確かめれば怒っている様子はなかった。
「そういうかわいくねぇ事言うなら。力也、Come」【こい】
ジムの入り口付近という知り合いも多い場所で、そう命じられ一瞬躊躇するも広げた両手とコマンドを拒否することもできずに大人しく近づき、腕のなかに収まった。
「はい、いいこ」
体を寄せれば、優しく背中をなでる冬真へ、どう答えていいのかもわからず“ピーピー”と甘える鳴き声を出した。
軽く食事を済ませると、冬真に手を引かれ道を歩く。目的地があるらしいが言わない、またサプライズとか言い出すか、言うほどの事でもないかだ。
しっかりと手をつかんだまま、どこに連れていかれるかわからない時間だが、力也はこの時間が嫌いではない。
「そーいや、今日ジョギングの途中に女性警察官のDom二人みた」
「あー、女王様コンビか」
予想通り、王華学校の関係者だったらしく、すぐに思い当たったのかそう返ってきた。
「女王様コンビ?」
「よくそう呼ばれてんだよ。密着警察とかにも出るし、わりと有名なんだよ」
「そうなんだ」
「何してた?」
「酔っ払いの相手してた」
「真っ昼間から酔うなよな、みっともない」
辛辣な言葉に、頷き笑い返した。実際見ていたが、他に言い様がなかった。
そんな話をしていると、冬真が脇道に入った。手を引かれたままの力也もそちらにはいるとそこはラブホがいくつか建ち並ぶ通りだった。
(え? やっぱする気か)
無論、するかしないかの決定権は冬真の物だし、言われていないからと不満に思うわけでもない。でも、なんとなくそういうことをするつもりにしてはテンションが違う気がするがと不思議に思いながら手を引かれる。
その時だ。ちょうど通りかかったコンビニから出てきた男性が力也を見て驚いた顔を浮かべた。
「力也?」
聞き覚えのある声に、立ち止まった力也の様子に冬真も立ち止まると、男性を見て顔をしかめた。言わずもがな、Domだしかも、力也の昔の相手の中の一人だった。
「あー山居さんだっけ? 久しぶり」
「散々相手してやったのに、疑問形で呼ぶなよ。相変わらずだな」
わかりやすく呆れたように鼻で笑う相手に、そういえばこんな人物だったと思い出す。
口が悪いというか、Domらしい横柄さが目立つ態度をいつもしていた。あの頃はこういうタイプでもなければ、体格のいい自分を相手にしてはくれないのだと思っていた。
「力也、こいつ前に相手してやった奴?」
こっちが相手してもらっていた気でいたので、その言い方に一瞬引っかかるも、内容的には間違っていないと頷いた。
「なんだよ、もう次ができたのか? 俺のしつけに耐えきれなくて逃げたくせに、ちゃんとできてるのか?」
コンビニの袋を片手に近寄ってきた男から力也を守るように冬真は前に出た。その仕草に男は鼻で笑うと冬真をじっくりと見た。
普段から自分を強く見せようと横柄に、粗暴に振る舞う男は冬真をどう見たのか、挑発的な目線を向けた。
不機嫌そうだが抑えている冬真に、変なことを言われると嫌だなと力也が思っていると、案の定山居と呼ばれた男はあざ笑うかのように口を開いた。
「なるほど、根性ねぇのがばれるのが嫌で甘っちょろい躾するやつにしたのか。一応学んだみてぇじゃん」
「力也、お前なんでこんなの相手したんだよ」
挑発的な視線と言葉を無視し、冬真は力也へ話しかけた。
いくら許してくれるとは言っているが、昔の相手との対面は初めてで、さすがに不安になっていた力也はその質問に少し口ごもるように答えた。
「なんか確かバーだっけかな・・・・・・誘われたから」
「おい、てめぇが二丁目のバーで寂しそうにしてたから誘ってやったんだろ。その後も何度か相手してやったのに逃げやがって」
きっかけはどこだったかと思いだしつつ答えた力也を小馬鹿にするように、付け足した男の言葉を冬真は綺麗に流した。
「誘われたからってこんな明らかにテクなしについてくなよ」
「ごめん」
呆れたような目線は向けられるも、そこに軽蔑の様子はなく、ほっとしながらも謝る。
「おい、テクなしってなんだ!」
「こんな小バエにみたいにうるさいやつ相手しても楽しくねぇだろ?」
「え・・・・・・」
その当時は飢えていた為、キツイ言葉も物のように扱われるPlayもそれなりに楽しかった気もするとは言えずに口ごもると冬真はため息をついた。
「さてはお前、薬飲んでなかったろ」
「あれ苦いし、ダルくなるし」
正直にそう返せば、冬真は大きくため息をはいた。抑制剤とも呼ばれる鎮静剤を服用すると体調が悪くなるから嫌だと言うのはわかるが、味を理由に飲まないというのは聞いたことがなかった。どうも力也は自分の耐性を過信している。
「さっきから俺の事を無視すんじゃねぇ!」
二人して放置していたのがしゃくに障ったのだろう。攻撃的なグレアを発した男に、冬真はチラリと視線を送った。
「こんなとこでグレア出すなよ」
「あ? 大丈夫だろ、そいつ鈍感だし、感じねぇよ」
むろん、男のグレアが力也になんの影響も及ぼせないのは、ランクが低いからで、鈍感だからではない。しかし、男は自分のグレアに自信を持っていたし、目の前の冬真を舐めていた。
「みっともねぇから言ってんだよ。そうやってグレアとコマンドに頼って、人を傷つけることでしか人を支配できないやつをテクなしっていうんだ」
「ああ?」
「力也が逃げたとか、根性なしとか言ってたけどお前がテクなしだったのが原因だろ。自分の努力が足りなかったからって俺のSubを馬鹿にすんな」
「てめぇこそ! どうせそいつに遊ばれてるだけだろう! 知らないなら教えてやるよ! そいつは言われたことできなかった挙げ句に、お仕置きのCornerも破ったんだ!」
ついに激高し始めた男の言葉に、冬真はチラリと力也に視線を送った。男から見ればそれは力也に疑念を持ったように見えた。
「力也、なんで帰ったのか言ってやれよ」
「・・・・・・あのときは、もう許してもらえないんだって。見捨てられたんだって・・・・・・俺なんかいないほうがいいんだって・・・・・・」
あのときも、確かこんなホテル街だった。何で怒られたのかはもうわからなくなってしまったけど、なにかに失敗して怒られてそのままCornerを言い渡され、ホテルの一室に置き去りにされた。
呼んでも謝っても、全然帰ってこなくて、やがて息が苦しくなり目の前が真っ暗になった。そして一瞬意識が飛んだ。すぐに気づいたが、その時にも相手は居なくて、もうだめなのだとわかり力也は部屋を出た。あれは軽いサブドロップに陥っていたのだろう。
思えばあの頃はこの男の事が好きだったのかもしれない、そうでなければあれほど悲しくなった意味が今ではわからない。
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