Hate or Fate?

たきかわ由里

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「礼華さんほんとに綺麗ー!」
 リュウトくんも、ヴィジュアル系にあんまり馴染みがないからな。礼華の顔を見て、歓声を上げる。言われた礼華はおどおどしながら、小さくなる。
「あ、りがとうございます…」
 声小せぇ! 最近まあまあ普通に話せてたから、改めてびっくりしたわ。
「俺、ヴィジュアル系に全然知り合いいないから、お話しさせてもらうの初めてなんですけど、朱雨さんも綺悧さんもカッコいいですね!」
 おーおー、リュウトくん上手だなー。
「ありがとうございます」
 ほれ、朱雨が調子に乗るから。すげぇドヤ顔してやがるよ。綺悧はカッコいいって言われたのが嬉しいんだろう、にこにこしてる。そんなににこにこしたら、結局可愛いぞ。
「Hate or FateのMV見ました。皆さん、それぞれの個性とイメージがはっきり出てて、すぐにお顔覚えられました」
 なるほど、そうか。あのMVなら、初めてベルノワールを見る人でも誰がカッコいいとか、誰が好みだとか、そういうのがすぐにわかるよな。曲とか世界観に加えて、そこから入る人にもアピールできる。これも、宵闇の計算づくなんだろう。
 朱雨は身を乗り出して、リュウトくんに笑顔で聞く。
「俺、どこが良かったです?」
 おいおい、リュウトくんは別にお前だけがカッコ良かったとは言ってねぇぞ。どっから来る自信だそれは。
「えーと、演奏シーンがカッコ良かったですよ。鋭利なナイフみたいで」
 リュウトくんも愛想がいいんだよなぁ。朱雨は何故かキリッとした微笑を浮かべて、右手を差し出す。また握手すんのかよ。
「ライブも切れ味鋭くやりますから、見てて下さいね!」
「はい。期待してます」
 このやりとりに、礼華はぽかんとしてるし、綺悧は肩を竦めてる。何なんだこれ。
「綺悧さんの演技力もすごく迫力ありました。目が離せないって感じで。礼華さんはすごく綺麗で…お会いしてもこんなに綺麗だし。びっくりしました」
「ありがとうございます。嬉しいなぁ」
 面と向かって褒められると、綺悧も照れるらしい。つーか、これが普通だからな、朱雨。礼華ははにかんでぴょこぴょこと会釈してる。
「夕」
 宵闇から声がかかる。鏡の上の時計を見ると、スタンバイの時間が近付いてる。
「んー? そろそろスタンバイ?」
「そうだな」
 宵闇を見ると、ちょうど目が合う。ヤツも目線を時計に持ってったから、それが言いたいんだろう。
「じゃ、俺はテラス席行ってるね。頑張ってくださーい!」
 テラス席は、2階から繋がってて完全に関係者席だ。一応5列くらい座席があるから、広さは割とある。
「あ、今度ディスコード見に行きますね!」
 朱雨が慌ててそうリュウトくんに言う。ほんとに何なんだお前は。さっきまでディスコードの名前も知らなかったじゃねぇか。どんなバンドかわかってねぇだろ。多分、開始15分で頭痛くなるぞ。
 リュウトくんはにこにことお辞儀をすると、楽屋を出て行った。ほんと、外面と愛想のいいヤツだよ。
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