Hate or Fate?

たきかわ由里

文字の大きさ
上 下
207 / 233

36-14

しおりを挟む

「じゃ、俺らお先にリハ行ってくるんで!」
 ゲイズのメンバーの一人が、俺らに声をかけて、ぞろぞろと部屋を出て行く。
 俺らのリハーサルは14時30分からだ。スマホを取って、LINEを開く。
「リハ前に流れの再確認だけしとけ」
 そう送信すると、宵闇が気付いて手元のスマホを開く。俺の方は見ずに、すっと返信する。
「しようと思ってた。ありがとう」
 いや、ピカチュウのご機嫌なスタンプは余計だ。今まで使うあてがなかったから使いたいんだな。買うなよ。めちゃめちゃ涼しい顔してやがるけど。
 ヤツはスマホを置くと、立ち上がる。
「セットリストの再確認だけしておく」
 皆、手にしていた物を置き、宵闇に向き直る。宵闇はスマホのメモを開く。
 それぞれのポジションにセットリストは張り出すけど、頭に入ってるに越したことはない。昨日のゲネプロで、全員完璧だとは思う。でも、念を押しておいて押しすぎってことはない。
「SE30秒で登場。夕、礼華、俺、朱雨、綺悧の順だ」
 これは今後も鉄板のはずだ。スタンダードだし、動線が混乱しない。
「ExitからClash Right。連続で行く。MCの後は照明を落として綺悧にスポットを当ててもらうようにする。そこから綺悧のアカペラ。2カウントで同期を入れる。照明戻ってTears for Fear。Hate or Fate」
 うん、演出もそれでいい。
「MCの後はDie in Blood。ラストに礼華と朱雨のフリーを入れて、そのままIlluminatiに繋げる」
 昨日何度も繰り返して、最高にカッコいいタイミングを探った。その通りやれれば、文句なしだ。
「わからないところがあるヤツは。わからないまま出るな」
「大丈夫です」
 礼華がはっきり答える。綺悧と朱雨も頷く。頼もしいな。初めて会った日のミーティングが嘘みてぇだわ。ライブ直前ってのもあるんだろうし、それ以上に本気度が違ってる気がする。
「よし。それなら、時間までもう少しフリーだ」
 リハーサル前はこれくらい確認しておけば大丈夫だろう。昨日のうちに散々問題点も疑問点も潰してある。イベントのリハーサルだから、全曲フルサイズでのリハーサルは出来ない。ポイントを絞って、短時間で済ませる必要がある。その分は昨日のうちに補った。
 宵闇の目を見てやると、軽く頷いて、元の椅子に座る。
「ラストのセッション楽しみだな」
 朱雨がウキウキしながら話しかけてくる。
「ああ、あれな」
「俺、ピックアップのスイッチ切ろうかな」
「何じゃそりゃ」
「長崎さんの音、邪魔しちゃ悪ぃじゃん」
「それな」
 あははと笑い合う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】心打つ雨音、恋してもなお

crazy’s7@体調不良不定期更新中
ミステリー
 主人公【高坂 戀】は秋のある夜、叔母が経営する珈琲店の軒下で【姫宮 陽菜】という女性に出逢う。その日はあいにくの雨。薄着で寒そうにしている様子が気になった戀は、彼女に声をかけ一緒にここ(珈琲店)で休んでいかないかと提案した。  数日後、珈琲店で二人は再会する。話をするうちに次第に打ち解け、陽菜があの日ここにいた理由を知った戀は……。 *読み 高坂戀:たかさかれん 姫宮陽菜:ひめみやはるな *ある失踪事件を通し、主人公がヒロインと結ばれる物語 *この物語はフィクションです。

あやかしの花嫁になることが、私の運命だったようです

珠宮さくら
キャラ文芸
あやかしの花嫁になるのは、双子の妹の陽芽子だと本人も周りも思っていた。 だが、実際に選ばれることになったのが、姉の日菜子の方になるとは本人も思っていなかった。 全10話。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】龍神の生贄

高瀬船
キャラ文芸
何の能力も持たない湖里 緋色(こさと ひいろ)は、まるで存在しない者、里の恥だと言われ過ごして来た。 里に住む者は皆、不思議な力「霊力」を持って生まれる。 緋色は里で唯一霊力を持たない人間。 「名無し」と呼ばれ蔑まれ、嘲りを受ける毎日だった。 だが、ある日帝都から一人の男性が里にやって来る。 その男性はある目的があってやって来たようで…… 虐げられる事に慣れてしまった緋色は、里にやって来た男性と出会い少しずつ笑顔を取り戻して行く。 【本編完結致しました。今後は番外編を更新予定です】

陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君
青春
俺に青春など必要ない。 新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!? 絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく… 本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ! なろう、カクヨムでも連載中! カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601 なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/

処理中です...