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しおりを挟む「後はねぇ…」
綺悧はまた鏡に向き直って続きを再開する。
「後は……」
「サキさんのステージングがカッコいい…なって…」
「ああ、そうだよな」
背が高い上に手足も長くて、めちゃめちゃステージ映えすんだよ、サキさんは。その上、でかいアクションがこの上なくばっちり決まる。相当運動神経がいい。
「そしたら…綺悧くんは綺悧くんの…いいとこが…」
確かに。それぞれの個性を生かしてるヴォーカリストはカッコいい。合ってもないのに人の真似しかしないヴォーカリストは、どんなに上手く真似ても惹かれないもんだ。
「…何て言ってたっけな……」
綺悧は唸る。仕方ねぇ。視界にあんな長崎さんがちょろちょろしてたら、気も散るよな。
「……何かあれば…声掛けてくれって言ってくれたよ」
「良かったじゃん」
「うん」
やっぱ、体だけじゃなくて器のでけぇ人だ。そうは言っても、なかなか気軽に、とは俺らの立場からは行かねぇけど。でも、繋がりが出来たのは良かったな。宵闇とレイジさんに繋がりがあったお陰だ。
あんな人付き合い悪そうな宵闇を可愛がってくれてるレイジさんも、やっぱでけぇ人なんだろうなぁ。
目の下の涙を描き出した綺悧に声をかけるのはちょっとヤバそうだから、礼華に声をかけてみる。礼華のメイクもアイラインはがっつり入ってんだけど、全体的にはほわっとしてんな。うん、ほわっと。何て言ったらいいんだ。よくわからんけど、こいつだけほっぺたが薔薇色だ。血色がいい。それがこいつの色気を引き立ててんのはわかる。
「お前、長崎さんとちゃんと喋れたか?」
「うん。一応」
口紅を慎重に塗りながら、それでも返事してくれる。お前もいいヤツだな。
「何話した?」
「何年くらいギターやってるのかとか。…好きなギタリストとか……聞いてくれた」
そういや、それ聞いたことねぇな。
「お前が好きなギタリストって?」
「マナ様」
「ああ」
そうだった、MALICE MIZERからのMoi dix Moisだった、こいつ。
「ヒザキさんも」
こいつの趣味は徹底してんな。納得だわ。ああいう、華麗なミュージシャンが好きなんだな。そのうちドレス着出すんじゃねぇか。
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