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しおりを挟む「普段はカレーどこで食うの」
「そりゃココイチだろ」
「だよな」
「駅前のさ」
「あそこな」
俺らの地元、名古屋はココイチのお膝元だからな。ガキの頃からココイチ食ってる。あれがおふくろの味みたいなもんだ。
「何辛?」
「3辛」
「じゃあ、辛口がいいな?」
「おう。甘口は認めねぇ」
「良かった。俺も辛口派」
それは都合がいい。カレーの辛さの相違は、殺し合いになるからな。ならねぇか。
こっち来てから、人と飯食うのは外ばっかだったから、家でこうやって飯食えるのっていいよな、なんてしみじみ思う。こっち来てから彼女も出来なかったし。
で、あれか。こいつが俺の彼氏になるわけか。近いうちに。
リュウトくんにからかわれたことを思い出す。徹底的に否定してたけど、結局リュウトくんの勝ちだな。
悔しいけど、自分の気持ちは裏切れねぇからしょうがねぇか。
「なぁ、お前インタビューの時笑ってたろ」
「うん? いつだ?」
「俺が、お前を特別な存在って言った時」
「別に笑っては…」
照れたのか、ふいっと目線を空に泳がせる。
「笑ってたっつーか、ニヤニヤしてたよな?」
「あー、まあ、うん」
「何でニヤニヤしてたんだよ」
宵闇はお好み焼きを口に放り込んで、もぐもぐしながらちょっと間を置く。
「…ほら、最初殆ど俺ら喧嘩だっただろ。それが、ちゃんとメンバーになってくれたんだなってさ」
嬉しそうに微笑む。
「それだけかぁ?」
「あとは、うん…いろいろな。嬉しかった」
いろいろなぁ。そのいろいろを聞きたいんだけど、俺は。てか、お前、今が俺に告白するチャンスだぞ?
その場合、お好み焼き食いながらってのは、今後のネタになるけど。
「いいインタビューになったよな。牧村さんはいつも上手く編集してくれて、絶対に伝えたいことが曲がらないから、いい記事になると思うよ」
あ、そっち。そっちに行くのか、この話は。
「そうなのか」
ほんとにこいつは…この件に関しては、間が悪いわ、タイミング悪いわ、勘が鈍いわ。俺の方は今、別に告白したい気分じゃないから、こっちからはしないけど。
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