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「せーの」
何とタイミング合わせてんのか知らねぇけど、一人で掛け声をかけて見事にひっくり返した。
「すげぇ、やるじゃん」
「だろ?」
めちゃくちゃ誇らしげだな。時々、こいつは単純だ。
お好み焼き本体の隣に、焼きそばを丸く広げる。頃合を見て、本体を焼きそばの上にオン。それで、もう一枚焼くスペースあるのに、一枚しか焼いてなかったのか。納得。
それから、空いたスペースに卵を割ってフライ返しで軽く崩すと、その上に本体を置く。
「もう出来るから、お前、自分の箸と皿持って来いよ」
「へい」
焼いてもらってる身だからな、それくらいは自分でやろう。宵闇の分も一緒に箸と皿を持って来る。
フライ返しでお好み焼きを持ち上げて焼き具合を見ていた宵闇は、にっこり笑って皿を受け取る。
「出来た」
熱々のお好み焼き、一丁上がり。何なんだ、この技は。
「こんなのどこで覚えたんだよ。めちゃめちゃ上手いじゃん」
「うちのお袋が広島出身だからさ。英才教育」
「あ、なるほどな。広島か」
大阪のお好み焼きって、具材全部混ぜるもんな。俺はこっちの方が好きだ。ラッキー。
でもこれ、広島焼きって言ったら殺されるんだっけな。気を付けよう。
「スーパーにオタフクあって良かった」
スーパーで、めちゃくちゃ真剣な目でソース選んでたもんな。オタフクソースじゃないとダメだとか言って。
ソースをかけて、青のりとかつおぶしを散らし、やっと俺の前に置いてくれた。
「先食っててよ。俺は今から焼くから」
「悪いな。お先に。いただきます」
湯気が上がってるお好み焼きに箸を入れる。おお、ふんわりしてる。キャベツ押したりしないのがコツかな。こいつがこんだけ出来るんだったら、俺はマスターする必要なさそうだけど。
口に入れると、やっぱ焼き立てだから熱い。熱いけど。
「うま! こんなの家庭レベルじゃねぇだろ」
「うちはこれが家庭レベルだよ」
「ハイレベル過ぎるわ」
完全に、広島にライブで行った時にお好み村で食ったヤツだ。
めちゃくちゃツイッターに書きてぇけど、絶対にこれは秘密だ。墓場まで持っていこう。とりあえず、宵闇が焼いたってわからなきゃいいんだから、写真は撮っておこう。箸で切り取ったから、いい具合に断面が見えるぜ。
すぐにツイートにくっつけて投稿する。「めちゃめちゃうまいお好み焼き。最高」ってだけ文章つけとく。
宵闇は滞りなく、さっきと同じ手順でお好み焼き製作に励む。俺はそれを眺めながら、お好み焼きを食い続ける。
地味に楽しいな、こういうの。
何とタイミング合わせてんのか知らねぇけど、一人で掛け声をかけて見事にひっくり返した。
「すげぇ、やるじゃん」
「だろ?」
めちゃくちゃ誇らしげだな。時々、こいつは単純だ。
お好み焼き本体の隣に、焼きそばを丸く広げる。頃合を見て、本体を焼きそばの上にオン。それで、もう一枚焼くスペースあるのに、一枚しか焼いてなかったのか。納得。
それから、空いたスペースに卵を割ってフライ返しで軽く崩すと、その上に本体を置く。
「もう出来るから、お前、自分の箸と皿持って来いよ」
「へい」
焼いてもらってる身だからな、それくらいは自分でやろう。宵闇の分も一緒に箸と皿を持って来る。
フライ返しでお好み焼きを持ち上げて焼き具合を見ていた宵闇は、にっこり笑って皿を受け取る。
「出来た」
熱々のお好み焼き、一丁上がり。何なんだ、この技は。
「こんなのどこで覚えたんだよ。めちゃめちゃ上手いじゃん」
「うちのお袋が広島出身だからさ。英才教育」
「あ、なるほどな。広島か」
大阪のお好み焼きって、具材全部混ぜるもんな。俺はこっちの方が好きだ。ラッキー。
でもこれ、広島焼きって言ったら殺されるんだっけな。気を付けよう。
「スーパーにオタフクあって良かった」
スーパーで、めちゃくちゃ真剣な目でソース選んでたもんな。オタフクソースじゃないとダメだとか言って。
ソースをかけて、青のりとかつおぶしを散らし、やっと俺の前に置いてくれた。
「先食っててよ。俺は今から焼くから」
「悪いな。お先に。いただきます」
湯気が上がってるお好み焼きに箸を入れる。おお、ふんわりしてる。キャベツ押したりしないのがコツかな。こいつがこんだけ出来るんだったら、俺はマスターする必要なさそうだけど。
口に入れると、やっぱ焼き立てだから熱い。熱いけど。
「うま! こんなの家庭レベルじゃねぇだろ」
「うちはこれが家庭レベルだよ」
「ハイレベル過ぎるわ」
完全に、広島にライブで行った時にお好み村で食ったヤツだ。
めちゃくちゃツイッターに書きてぇけど、絶対にこれは秘密だ。墓場まで持っていこう。とりあえず、宵闇が焼いたってわからなきゃいいんだから、写真は撮っておこう。箸で切り取ったから、いい具合に断面が見えるぜ。
すぐにツイートにくっつけて投稿する。「めちゃめちゃうまいお好み焼き。最高」ってだけ文章つけとく。
宵闇は滞りなく、さっきと同じ手順でお好み焼き製作に励む。俺はそれを眺めながら、お好み焼きを食い続ける。
地味に楽しいな、こういうの。
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