121 / 233
27-12
しおりを挟む「ね、宵闇さん凄いでしょ?」
「そうだな。あいつ、マジですげぇ」
正直にそう答える。他に言いようがない。とにかく凄い。他のヴィジュアル系を音楽だけじゃなく、映像や写真までひっくるめてチェックしたことはないからわからねぇけど、ベルノワールは総合的に凄いんじゃないか? これはもっと世間に認知されてもいいと思うし、エンターテイメントとして、海外にアピール出来る強みもあると思う。音楽面を強化しながら、これを生かした売り出し方を考えて行った方がいい。そこは宵闇のプロデュース力に賭けよう。
監督と話し終わった宵闇がこっちに歩いて来た。
「おつかれさまです!」
綺悧は嬉しそうに宵闇に声をかける。おうおう、見えないしっぽがパタパタしてるぞ。可愛い可愛い。
「どうだった、綺悧」
「今日もめちゃめちゃ怖かったですよ!」
宵闇は微かに笑みを浮かべて頷く。ホラーが好きな綺悧が「怖い」という感想を言うなら成功ってことか。
「30分後にEXスタジオだ」
コンクリの部屋な。演奏シーンだ。
「うぃーす」
「礼華と朱雨はどこだ」
「メイク室だと思いますよ」
そういや、さっきから見てないな。休憩か。
「綺悧、あいつらに伝えて来てくれ」
「はい!」
綺悧は気持ちのいい返事をすると、すぐにスタジオを出て行った。
「夕、今のうちにタバコ行っとけ」
「ん? ああ、そうだな」
宵闇は俺をじっと見つめて、目線をドアの方に流す。ああ、喫煙室で話そうってことか。
スタジオの隅の会議机に置いておいたタバコを持って、宵闇を振り向き、目で入口ドアを示す。宵闇は俺に着いてきた。
喫煙室は、ロビーの片隅に小さな窓が付いているだけの、息が詰まるような狭い部屋だ。このご時世、あるだけでもありがてぇと思わなきゃいけないよな。
ちょうど良く、喫煙室は無人だ。
入りながらタバコをくわえ、ドアを閉めると同時に火をつける。
「うめぇ…」
やっと、気が緩む。
ほんと、撮影現場の緊迫感は別格だ。慣れない場所だってのもあるけど。
「おつかれ。ちょっとは慣れてきたか?」
煙を吐き出す俺に、宵闇は笑顔で聞いてくれる。ああ、良かった。あの怖い宵闇じゃねぇ。素の宵闇は、やっぱりこれだよな。
怖いのもめちゃめちゃカッコいいんだけどよ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる