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しおりを挟む「海外進出の件もそうだよ。ああいう駆け引きみたいなのには、俺は鈍いから」
「そうだなぁ」
そこがこいつの良いところでもあるんだけどな。逆に、俺はそういうとこ深読みしちまうから、宵闇みたいに素直にことに当たれないとこがある。俺は宵闇が羨ましいよ。お互い、ないものねだりなんだろうな。
そのないものをお互いが持ってるから、俺らは手を組んだんだろ。
「今までサブリーダーもいなかったから、俺だけで全部こなしてたけど、ここからはそうもいかないなって」
そう思うと、こいつもしんどかったんだろうな。クールな仮面かぶって、誰にも情けない顔見せられなくて。
そこんとこを俺が助けてやれるなら、助けてやりたい。いや、これは俺にしか出来ないだろ。
「頼りにしてるよ、夕」
「全力でやらせてもらうぜ?」
「ああ」
また宵闇の声が明るくなる。それにしても、こいつみたいな温厚なヤツが、何でワンマンクールリーダーになったんだ。どこで何を間違えたんだ。
「何でお前、今のリーダーキャラになったんだ?」
めんどくさいから、こういうことはストレートに聞いちまおう。
「ん? …ああ、カッコいいなと思って」
「は?」
「カリスマっぽく振る舞ったら、ヴィジュアル系バンドのリーダーっぽいかなって…」
妙に恥ずかしそうに言う。っつーか、恥ずかしいなそれ!
「初めて組んだのが前のバンド…ディエス・イレだったんだけど、始める時にこんな風にキャラ作ったら、見た目と合っちゃったみたいでさ」
「確かに…」
こいつの笑わない時の顔とリーダーキャラとの違和感のなさは完璧だもんな。もう慣れたけど、中身がこの穏やかな男だとは誰も思わねぇだろ。
「若気の至りっていうか、厨二病ってヤツだよなぁ」
若干後悔してるっぽいな。面白いヤツ。俺は思わずくすくす笑う。ほんと、可愛いわ。
「ま、そのまま行けよ。お前のそのキャラ便利だからさ」
「便利なら、これで行くしかないか、やっぱり」
「今更、素のお前出したりしたら、周り全員パニックだわ」
多分、知り合って日が浅い俺だから、こいつの地が出て来たのにも順応出来たけど、長いこと一緒にやってる他の3人がこれ見たら大混乱だ。
「そのまま頑張れ」
「頑張るよ。お前は俺にギャップあっても平気なのか?」
「ああ。俺はお前の素もけっこう好きだぜ?」
「えっ」
宵闇の返事が止まる。
俺なんか悪いこと言った…な。ヤバい、こいつに対して「好き」って言葉使っちまった。こいつ、俺のこと好きなんだったわ。
いや、別に宵闇の素がそれはそれで好ましいってのは間違いじゃないし、言っちゃいけないわけじゃないとは思うんだけど。ここで弁解すんのも何だし。
ちょっとこの状況どうしようか。
よし、話題を変えるしかない。
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