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しおりを挟む「夕」
見ると、隙間から宵闇が顔を出してる。
「あ? お前吸わねぇだろ」
「吸わないよ。お前と話しに来た」
「ああ、そっか。来いよ」
手招きすると、宵闇は扉を閉めて寄ってきた。
「ここなら他のヤツ来ないからさ」
「俺だけか、スモーカー」
「そうだよ。だから、都合いい」
さっきまでのリーダーモードはどこへ消えたのか、屈託なく笑う。何つーか、綺悧の次に可愛いわ、もう。
「海外進出の件、あんな感じで良かったか?」
「ああ、上出来。綺悧たちの顔も見ただろ。完全に火がついたな」
ヤツらの目は、はっきりと見えた光に釘付けだった。あいつらにもミュージシャンとしての欲がちゃんとある。
「こっからはとにかく実行あるのみだ」
「そうだな。絶対実現させよう」
「おう」
拳を打ち合わせ、笑い合う。こいつとならやれる気がする。
あと、気がかりなのは。
「で、江崎さんの反応わかったか?」
「ああ。…何かちょっと困ってたな」
そこまでか。なるほど、ここまでこいつらを適当に乗せるだけ乗せとけたわけだわ。
「あれ、やる気ねぇぞ」
「えっ」
宵闇はきょとんとする。あんなキャラだけど、人を疑うってことが出来ねぇのな。
「事務所側は、お前らをおだてて仕事やらせてるだけだよ。ほんとにその気なら、そろそろ具体的なプランとかヴィジョンを出して来ててもいいはずだ」
あ、ショック受けてる。口が開いたまま閉じてねぇぞ。まったく、こいつは純粋なんだからさ。
「契約はあと何年だ」
「…一年ちょっと」
「ちょうどいい。こっそり移籍先探そうぜ。協力してくれるようなとこ」
「…そうだ、な」
そんなに戸惑うなよ。オトナの世界ってのはこういうもんだ。でも、こういう宵闇だから可愛げがあるんだけどな。そういう謀略っぽいのは俺が担当すりゃいい。宵闇が動くよりずっと目立たないし。
「事務所に義理なんか感じなくていいんだぜ? ぼんやりとでも、お前らが目標にしてた海外進出がかかってんだ」
「ああ…うん。そうだな」
宵闇の苦笑いがちょっと痛々しい。こんなことで傷付くなって気持ちと、お前はそれでいい、って気持ちが半々だ。こいつにこんな顔させる事務所には、半々どころか全面的にムカつく。
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