Hate or Fate?

たきかわ由里

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「宵闇、ちょっとこっち」
 宵闇に手招きをして、スタジオを出る。そのまま1スタに招き入れてドアを閉める。
「何だ? 手伝いか?」
「お前に手伝ってもらわなくてもセットくらい組めるわ。じゃなくて」
「なくて?」
 搬入を手伝ってもらったスタッフは4スタに戻ってるから、今ここには誰もいない。宵闇はプライベートの時の優しい表情に戻ってる。俺はこっちの顔も好きなんだけどな。でも、宵闇のパブリックイメージを考えると、こんなふわっとした表情は表では出せない、とつくづく思う。
「花!!」
「はな…ああ、あれな」
 レコーディングに完全に持ってかれてて、今朝までうっかり忘れてた。ディスコードのライブの花束の件はツッコんどきたかったんだよ。
「ディスコードのメンバーからは、礼を伝えてくれって言われた」
「どういたしまして。夕が世話になってるから」
「それはいいんだよ。花束が余計だろ!」
「あれは…個人的に」
「バカだろ。なぁお前バカだろ」
「何で」
 宵闇はまったく理解してない様子で首を傾げる。あのなぁ。
「俺はサポートなんだよ。メンバー差し置いて花束が届いていい立場じゃねぇよ」
「だから、ディスコード宛でスタンドを」
「ちょっと待てそっちがついでか!?」
 完全に話がおかしいだろ、それ。
「いやぁ…何て言うか……」
 確かにこいつはディスコードと面識ねぇんだから、ついでかもしれない。ってか、ついでじゃねぇだろ。バンドメンバーが世話になってるバンドに花贈るのは、面識関係ねぇし。そもそも俺に花束を贈る意味がわからん。
 宵闇の視線は空中をさ迷っていて、何て言うかの続きが出て来ない。
「どっちがついででもいいわ、この際。何で俺宛に花束だよ」
「…応援?」
「ファンか!」
 何だよその純粋なるファンみたいなやつ。こいつ、そういう習慣があるのか。
「いつもそういうことしてんのか」
「いや、初めてだけど」
「意味わかんねぇよ。めちゃくちゃ気まずかったんだぞ」
「それは…ごめん」
 ちょっとしゅんとする。そうだ、反省しやがれ。
「レコーディングじゃなきゃ、行きたかったんだけどな」
「それはいいけどな…」
「行けないかわりにと」
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