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しおりを挟む「餃子もそれで食うのか?」
「ああ。やらないか?」
「やらねぇ。餃子は酢醤油だ」
「やってみろよ」
「あー? じゃあ…一個だけな」
宵闇の取り皿から、箸先に少しだけ辛味噌を取って、餃子に乗せる。そりゃ不味かないだろうけど。
まだ熱いその餃子を口に入れる。火傷しそうな肉汁と、辛味噌が合わさって口の中に広がる。
「…あ…美味いな」
「だろ?」
宵闇は手元の辛味噌を、俺の取り皿にも取り分ける。いやこれ、割と美味い。やってみるもんだな。
そこでビールを流し込むと、これがまた合う。ツマミとして最高の部類だ。
「今度からこれで食お」
俺が呟くと、宵闇はにっこりと笑った、っぽい。顔が良く見えないんだよなぁ。
ラーメンを食いながら見るともなく見てると、やっぱり長い前髪が邪魔なのか、かきあげながら食ってる。アーティスト写真で見た時もそれなりに綺麗なのかとは思ってたけど、こうやって見るとなかなか顔立ちは整ってるみたいだ。やっぱそれなりに下地があって、あんだけ綺麗に仕上がるんだな。
「ラーメン食いに来る時ぐらい、前髪上げとけよ」
「ああ…そうだなぁ。こうか?」
両手で前髪とサイドをまとめて、頭の後ろに持って行く。初めて顔全体が見える。ああやっぱり、ほんとにこいつ美形だ。
少し面長で、細い顎。目は切れ長で幅の狭い二重のラインが鋭く入ってて、鼻筋も通ってるし、色が白い。
自分の髪をひとまとめにしていたヘアゴムをほどいて、渡してやる。宵闇はそれを受け取って、まとめた髪を結わえる。
その方がいいじゃねぇか。
「よし、それでゆっくり食えるだろ」
「確かにな」
笑うと、切れ長の目が線みたいに細くなる。やっぱ狐みたいだ。
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