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第四十五話:貴族の秩序 ‐クリスティーナ視点
しおりを挟む「クリスティーナッ! どういう事! どうやって魔法を!」
「質問が多いですね。少しは自分の頭で考えたらどうですか?」
「このっ!」
私の目の前に現れたイーディス。
彼女は私を質問攻めした後、唐突に水の魔法を放ってきた。
火には水。そのくらいの常識はあったようだ。
しかし、その水は数秒で蒸発して消えた。
「ッ!? どうして!?」
「超高温の炎に焼かれたのです。当然の結果でしょう」
確かに、火に対して水は有効でしょう。ですが、これは私の魔力回路を焼くほどの”炎”簡単な水の魔法で消せるほどやわではありません。
「くっ! 賊よ! ここに賊が居るわ!」
そう叫ぶと、次第に人が集まってくるが。皆私の炎を見ると後ずさる。
当然だろう、人体を焼く匂いと、明らかに高温の炎。これに挑みたがるモノなど早々いる訳がない。
私がその炎の手を横に薙ぐと、たちまち炎は広がり、人々は逃げ出す。
「どうして…! どうしてあなたばっかり!」
これは嫉妬か。
嫉妬とは醜い。しかし、嫉妬とは憧れと同じだと私は思っている。
彼女、イーディスの悪い点を挙げるなら。単純に怠けていたからだと思う。
彼女は貴族になって日が浅い。
にもかかわらず、最低限の礼儀作法に魔法まで習得している。
そこには並々ならぬ努力があっただろう。
だが、上には上が居た。イーディスはある程度努力をすると、並々ならなぬ努力と言うのをやめてしまった。
贅に溺れ、楽をする方を選んでしまった。
そして、自分よりも優秀な、私、クリスティーナに嫉妬した。
彼女の目から見れば、産まれた時から侯爵令嬢で王子の婚約者候補だった私は、ずるをしているように見えたのだろう。
その実、私の地位が圧倒的努力と責任の塊であるとも知らずに。
そして彼女は、努力して同じ舞台に立つのではなく。蹴落とす方を、楽な方を選んでしまった。
貴族とは尊き存在。
国は人の為にあり、王は国の為に、臣下は王の為にある。故に人々は国に税を納めるのだ。
そうして、国は回っていく。
臣下、貴族とは、王を民を守るのだ。それが国を守る事に繋がる。
それが貴族の”責任”であり。
貴族の秩序なのだ。
だから私は、民であり、友である、マホ様を守る。
この国の為にも。私の為にも。
貴族の誇りと秩序にかけて。
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