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やっぱり新兵のが使えます 1

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 長閑なお昼を堪能するエメロードとイリア。
 一方でエメロードを探す旅に出たスフェールとカイユー。
 何方が先に相手方をを見つけるか・・・と言うと、これはスフェールに軍配が上がった。

「あそこを見ろカイユー」

 コソコソと物陰に隠れながら、スフェールとカイユーはエメロードとイリアを発見した。
 スフェールの目線の先に居る二人は、絶賛食事中。
 今は、デザートに取り掛かったところだ。

 逆にスフェールとカイユーの手には、屋台で買った串焼きが。
 城下で買い食い・・・しかも屋台で、なんて言う状況になったスフェールはこれが初めて。
 普段体験出来ないことが体験出来る!と言うことで買ったのだ。
 そしてこれがまた美味。
 因みにスフェールは、他にも食べているし、買ってもいる。

「・・・あぁ、昼食中ですね。見付けられて良かった。それで、スフェールはどうします?」

「勿論、後を付ける!城に帰るまでだ。徹底的に食べ物や好みの物を調べ、嫌いな物も確認するんだ。弱点も知れたらいいのだが・・・」

 この言葉にカイユーは、一国の王太子の言葉か?と思ってしまったのは仕方がない。
 なんせ、通常営業であればしっかり者の頭の回転も速い誰から見ても、立派な王太子殿下なのだ。
 スフェール自身も認められるように努力したのだから。
 それが一令嬢のストーカーになりつつある・・・笑えない。


 *  *  *  *


 ゾワリ


 スフェールの視線の先に居るエメロードは、悪寒を感じて身震いする。

「お嬢様?どうされました?」

 エメロードの身震いに気付いたイリアが、心配そうに声を掛ける。

「なんか・・・悪寒がする」

「風邪ですかね?今日は寒くないですが」

「違うと思う。これは・・・なんて言うか、悪い予感?的な感じかしら」

「あら・・・それは、大変ですね。城へ戻りますか?」

『悪い予感がする』なんて通常なら笑い飛ばされる言葉なのだが、イリアはエメロードのこう言った言葉は当てに出来ると思っている。
 第六感・・・とでも言うのだろうか?悪いことも良いことも大抵が当たるのだから、バカに出来ない。

「ん~城に戻ってもする事がないし、予定通り散策してから戻りましょう」

 その言葉に、なんとなく納得が出来ないものの、頷くイリアだった。

 その後、二人は予定通り・・・と言ってもただ通りにある店を見て、気になれば入店するなどを何回か繰り返していた。
 そして今日の外出の目的である、本屋に行こうとしていたのだが、行先を変更した。

「ねぇ・・・イリア」

「はい。三人・・・と言ったところですね。どうしますか?」

「今日は本屋を諦めましょう。確かこの裏通りを通れば、城の裏門に出るはずだから」

「襲われたら?」

「叩きのめす。で、衛兵につき出せば問題ないでしょ」

 そう言って二人は、薄暗い裏通りへと入る。
 そこは店の裏口等がある通りらしく、道に木箱等が積まれている。
 それでも馬車が一台は通れる様な道幅だ。

 エメロード達が裏通りに入り暫く行くと、道の先に五人程の人間が立ち塞がった。
 後ろからは三人。
 完全に挟まれた。

 前の五人は目深にフードを被っており、後ろの三人はその辺りに居る普通の人の格好だ。
 そして各々が剣や短剣等を構えている。

「あーーー・・・やっぱり嫌な予感だった」

「お嬢様、嘆かれる時ではないですよ」

 額に手を当て盛大に嘆くエメロード。
 それを窘めるイリア。
 複数の人間に剣を向けられての言葉ではない。

「それで?目的はなんですか?」

 如何にも面倒です。と言わんばかりの返答だ。
 仕方がない。
 面倒なのだから・・・。

「・・・・ふてぶてしい令嬢だ。目的は貴女方の命。やれ」

 リーダーと思われる男の掛け声で、後ろに居た二人がエメロード達に襲い掛かった。
 差し詰め小手調べ・・・と言ったところだろう。
 いくら辺境伯の娘で剣を教えて貰っている・・・と言っても今は武器すら持っていない。
 直ぐに片が付くと・・・とリーダーの男は思った。

 が、その予想が全く違ったようだ。
 イリアはいつの間にか両手に短剣を持ち、襲って来た男の剣を両手で受け止めている。
 その隙にエメロードがもう一人の剣をかわしながら、イリアが受け止めていた男を足払いした。
 すかさず倒れた男の顔面をイリアが、蹴り飛ばす。
 エメロードは避けた男の剣を、イリアから受け取った短剣の一つで相手の剣を逸らしつつ、股間に蹴りを入れる。

 可哀想にエメロード蹴り飛ばした男は、あまりの痛みに失神したようだ。
 イリアが蹴り飛ばした男は、鼻の骨が折れ、歯が数本無くなっている。
 リーダーからしてみればなんて言う令嬢だ!としか言いようがない。
 どうしたら大の男が、どう見てもか弱い女の蹴りでそんな惨状になるのか・・・と。

 なんてことはない。
 二人のブーツの先には鉄板が入っているだけだ。
 そこに何故だ?!と言った理由はない。
 これが二人には当たり前なのだから・・・。

「おい、一斉にかか」

 リーダーの言葉が最後まで言い切れなかったのは、そこに新たな人間が入って来たからだ。
 しかも、予想外な場所から。
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