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尾行してみた 2
しおりを挟む「まぁ、殿下がそう思うのも仕方がないですね。例えば噂が本当のなら、エメロード嬢は今頃、城を出て領地に帰っているでしょう。そして、殿下の事など見なかった事にすると思います。と、なると女官長が言っていたように、わざわざ外で殿下を陥れるようなことを考えている・・・のも無いと思います。そこから考えるに、エメロード嬢本人が何かを望んでいての外出とか?」
「そんな頻繁にか?東を治めるクリスタリザシオン辺境伯ならば、王都よりも先に目新しい物が手に入るだろう」
「まぁ、そうですね・・・なら、他に理由があるんでしょうね」
ふむ・・・と考え込むスフェールを、カイユーは面白そうに見る。
何故なら今までスフェールはエメロードを『あの女』と言っている。
これはカイユーの前だけではなく、他の人間の前でもだ。
それが先程の女官長とのやり取りでは『クリスタリザシオン嬢』と、呼んでいた。
相手の名前を呼ぶ・・・と言うことは即ち、その人に興味があり、少なくとも悪くは思っていないと言うことだ。
現在のスフェールの中のエメロードの位置が、何処にあるかは分からないが、これは面白いものになりそうだなぁ~と思っていたのである。
「とにかく、欲しい物があって出掛けているのか、それとも女官長が言っているように誰かに会って話をしているのかが知りたい」
「分かりました。調べてみます」
だがその言葉にスフェールは待ったをかけた。
「確か女官長は『今日も出掛ける様だ』と言っていたな。ならば、今日は尾行して弱みを握るぞ!」
相手に興味を持つことは望ましいが、それが弱みを握る為・・・と言うのは如何なものか・・・と思いながらも、まぁいいか。と思ってしまうカイユーだった。
* * * *
そして現在。
スフェールは『ちょっと良いとこの商家の青年風』にカイユーは『その青年の護衛』と言うコンセプトで立っていた。
正確にはスフェールが『貴族の青年が初めて城下を歩いてる』と言った感じで、周りをキョロキョロし、カイユーは『それを見守るお兄ちゃん』的に見える。
明らかに、本人達が思っているよりも目立っている。
だが、カイユーはちゃんと分かっている。
周りが見えていないのは、スフェールだけだ。
まぁそもそもの話しだが、スフェールは城下等に出ることは全くない。
どこかに視察等にいく場合は、流石に城下を通るが馬車になる。
そんなスフェールにとって城下を『歩く』と言ったことは、新鮮なことだ。
こう言った新しい経験をさせてくれているエメロードには、感謝しかない・・・と思ってしまうカイユーだった。
「それでカイユー、あの女の行きそうな場所に心当たりがあるのか?」
・・・それを探りに来たのでは?と思ってしまうのは仕方がない。
が、この広い城下を探すのだから、何かしらの情報は必要だ。
「女官長の話だと『本や茶葉等を買ってきます』って行っていたので、そちらのお店を当たりましょう。でん・・・」
「ん?なんだ?」
「いえ、お願いがあるのですが、お名前で呼んでも?」
「あぁ、そう言うことか・・・問題ない。むしろここで断る方が問題があるだろう。人前でそう呼ばれたら頭の可笑しいヤツだと思われる」
その言葉に、カイユーは慌てて口に手をやった。
その肩は震えている。
「・・・・笑いたければ笑え」
ごほんっ
その言葉にカイユーは、なんとか笑うのを堪えた。
(こいつ俺が主人だとわかってるのか?)
それに疑問を持つしかないスフェール・・・。
ちゃんとすれば良い主人と護衛なのだが残念だ。本当に。
「と、とりあえずエメロード嬢の行きそうな場所を当たりましょう」
と二人は気を取り直すことにした。
* * * *
スフェールとカイユーが城下町の一角で、あーでもないこーでもないと言い合いしている間にエメロードとイリア一行は、ランチをするために街で人気のカフェに来ていた。
「よくこんなに人気のカフェの予約が取れたわね」
「お嬢様が行きたいと思って、先以て予約していたんです。ここはスイーツが有名だそうなんですが、食事も美味しいそうですよ。因みにおすすめは、パスタだそうですよ。お好きでしょ?」
「イリア最高!勿論、席は?」
「テラスです」
パチパチパチ
思わず拍手をするエメロード。
「さぁ!席に行きましょ」
ルンルンで席に向かうエメロードと、それを微笑ましく見るイリア。
周りから見れば仲の良い姉妹にも見えるだろう。
二人は席に着くなり早速メニューを見て注文を決めていく。
即断即決の二人は、直ぐに注文した。
「私はサーモンとキノコの彩りクリームパスタとアップルパイのケーキセットで」
「私はペペロンチーノとおすすめのケーキセットでお願いします」
と、長閑なお昼ご飯を堪能する二人だった。
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