20 / 36
お買い物に行こう!
しおりを挟むスフェールを揶揄い、上げて落とす作戦を決行して、早二週間が経った。
隣国の使節団が来るからと設けられた期限も残すところ、一ヶ月半と言ったところだ。
じつはアルコバレーノと会った日から数日後に、使節団の来日予定が決まったのだ。
期限は約二か月半。
話していた予定の、真ん中・・・と言ったところだ。
エメロードの『上げては落とす、そして鬱憤を晴らしてあげよう作戦』が開始されて直ぐのことだ。
だが、ここで別の問題が浮上してしまった・・・。
それがここ最近エメロードが調査していたことだった。
あれから無事全ての調査が終わった。
調査的に良いか悪いかで言えば、悪い。
それもかなり・・・。
だが、これも自分から首を突っ込んだ結果だ。
正義感も強いエメロードは、見て見ぬふりは出来なかった。
仕方がないのだ。
さて、そんなエメロードなのだが、今日は城下へと来ていた。
勿論このお出掛けは、アルコバレーノの許可を取っている。
本人的には『ちょっと裕福なお嬢様』を目指しているので、周りからも見てもそうとられていると思っている。
実際は『下級貴族のお嬢様がお忍びで遊びに来ている』と見られているが・・・。
まぁ、この二人・・・エメロードとイリアに至っては、犯罪に巻き込まれることはよっぽどの事が無い限りは、大丈夫だろう。
なにせ二人共、武術・・・と言った類のものがそんじょ其処らの者達よりも、強いのだから。
腕っぷしが強いと言うことは、犯罪など危ないことへの危険予知が働くのである。
カランッコロン。
ドアのベルが鳴り入店の合図を送る。
店の中には、紅茶の茶葉が幾つも並び、それに伴うジャムやスコーン等のお菓子が並べてある。
そう紅茶専門店だ。
珍しい茶葉も取り扱っていることが多いので、ここへの買い物はエメロードの楽しみになっている。
この店をたまたま見つけたエメロードは、歓喜の踊りを店内で踊りそうになった。
たった数日前にだが・・・。
さてこの店の奥には、喫茶スペースもあるようで、二人は奥へと進んで行く。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「いいえ、連れが先に来ていると思うのですが・・・」
「お連れ様ですか?なら、奥のお席に居る方だと思いますよ」
そう言って奥を示す店員。
二人はお礼を言って、奥へと足を進めた。
そこには明るい茶色の髪をもった、男性が一人エメロード達に背を向けて座っていた。
そう、彼が目的の人物だ。
彼もエメロード達に気が付いたのか、こちらに顔を向けた。
「やぁ、二人共。久しぶりだね」
「お兄様。お元気そうで良かったです」
エメロードもにっこりと笑って答える。
そう、待ち合わせの人物は、ブビリオ・クリスタリザシオン。
エメロードの兄である。
ブビリオもエメロードと同じ様にちょっと裕福な商家の息子・・・と言ったいでたちである。
「二人共掛けなよ」
その言葉に、席に付くと見計らった様に、店員が注文を取りに来た。
「では、おすすめの紅茶と季節のケーキのセットを二つ下さい」
「かしこまりました」
注文を取ると去っていく店員。
因みにブビリオは既に、紅茶を飲んでいた。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いや、そんなに待っていないよ。大丈夫」
エメロードを安心させる様にブビリオも笑顔で、返答する。
「それで、早速本題なのですが・・・どうでしたか?」
「うん。そうだね・・・・結論から言えば、エメロードの考えている事は『当たり』だよ。それにしても困ったことになったね」
まったり言うブビリオだが、言葉とは裏腹に笑顔だ。
「それで・・・目星は」
「お待たせしました。季節のケーキとおすすめの紅茶セットです」
タイミング悪く、店員が食事を運んで来てしまった。
だが、聞かれてもまずいことだったので、良かったのかもしれない。
運ばれて来た、季節のケーキには色とりどりの瑞々しい果物が乗ったタルトだった。
おすすめの紅茶も芳醇な香りが辺りを漂っている。
これぞ至福の時。
「うっとりしているエメロードも可愛いけど、本題に入っても大丈夫かい?」
くすくすと笑われて、エメロードは恥ずかしそうにしたが、次の言葉で雰囲気がガラリと変わった。
「はい、大丈夫ですわ」
「うん。さっきの話なんだけど・・・目星って言う目星はまだ付いていない。と言っても片方は・・・ってことだけど」
「片方?」
「そう、二方向に分かれてたんだ・・・。比較的、安価な物は裏市場に流れてた。でも、高価な絵や壺と言った物は足取りが掴めないんだ・・・。まぁ絵や壺なんてそうそう買い替えれないから、たいした点数にはならないと思うけど、皿や銀食器、それから細々とした物なんかは売りに出されているみたいだよ」
「やっぱりそうでしたか・・・私の方でも調べたんですが、ここ最近ではそう言った細々とした物も無くなっている感じはなかったでね・・・・」
「ん~それは僕も父上も確認したよ。もしかしたら・・・・そのものへ手を出し始めたのかも・・・」
「予算にですか?!流石にそれはバレませんか?」
「いや、これまでのことから考えても、着実に手を広げている。ここに来て大胆になったんじゃないかな」
その言葉に、エメロードは何故そこまでほおって来てしまったのかが、不思議で仕方がなかった。
これは、王太子・・・ひいては国の許可が必要なのに・・・・。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
『恋愛戦国』~陰キャオタクの俺が学園の美少女達にモテだしたのには何か理由があるはずだ~
NOV
恋愛
俺の名前は竹中颯(たけなかはやて)
髪はボサボサで瓶底メガネをしている訳アリ陰キャオタクだ。
そんな中等部から友達が一人もいない様な俺が『仙石(せんごく)学園高等部』に進級した途端に各学年の美少女達から次々と告白されてしまう。
何が起こったんだ!? これは一体どういう事だ!?
俺なんかがモテる要素など何一つ無いはずなのに……
素直に喜べるはずもないし、逆に恐怖すら感じてしまう。
きっと、こんな状況になったのには何か理由があるはずだ。
でもいくら考えても理由なんて浮かびはしない。
いずれにしても俺としては静かな学園生活をおくりたいのにこの状況は非常に迷惑だ。
なんとかしなくては……
ん? なるほどな。中等部には無かったが高等部にはこういう制度があったのか。
もしかしたらその制度が原因かも……いやでも待てよ。
本当にこの制度のせいで俺はモテているのか?
うーん、まだ他に理由がある様な気がするんだが……
学園トップクラスの美少女達が颯を彼氏にする為に必死にアプローチを始めると同時にライバル達との激しい駆け引きが巻き起こる
『竹中颯争奪戦』まさに学園内は恋愛戦国時代となった!!
果たして颯の彼女になる事ができたのは!?
笑いあり、お色気あり、そして涙あり、たくさんの謎にも包まれた陰キャ男子と美少女達との恋の駆け引きをどうぞ楽しんでください。そしてあなたは感動のラストを体験することになるでしょう!!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる