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ばんざーい!

ある兵士の一日 5(アン)

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 今日は、朝からいつもと違う訓練を、言い渡された。
 魔導士の訓練など、あってないようなものが多い。

 普段は自分の契約精霊と、魔法の訓練をしてり研究に勤しんだりしている。
 稀に、基礎体力作りと騎士との連携を取るために、合同の訓練をしている。

 今日がその合同訓練の日だった。
 基本的に騎士との訓練は、見知った相手と組むことが多い。
 何故なら、その方が戦場では連携が取れるからだ。

 だが今回は、全くの初の相手と組み、愛し子様が作った場所での訓練になった。
 正確には訓練と言えるのもかは、別として・・・。

 そして、実際には訓練にはならない・・・と思う。
 だって、攻撃も出来なければ、反撃のしようがない。
 ひたすら逃げるだけ・・・ただ、恐怖と判断力を訓練する・・・と言ったことなら訓練と言えるかもしれない・・・?

 ・・・・ダメだ。考え方が騎士団寄りになってる。
 私は魔導士なのよ?!魔法より技、知力より筋肉をモットーにしている、騎士団の考え方に染まりたくない!なのにこの状況が、魔法を使えず、攻撃も出来ないから、騎士団寄りになっていく!

 第一、同じ魔導士団のアルは、早々に途中リタイアをしている。
 情けないわ・・・。男でしょう?!
 ・・・・まぁ、男でもダメな人はダメらしいけど。

「じゃあ、今度は反対側を攻略っすね」

 その騎士団のギドの言葉で私は、前を見据えた。

 建物に入ってきて、二階に行くのが右側だけだったため、左から攻略したが、私達の目の前には『扉』と言った物が存在していない。
 入って来た時は、いろいろ気付かなかったけど・・・・扉はあったような?気がする。

「ギド、確かこちら側は扉があったよな?」

「はい、確か・・・地図で確認もした後にこっち側を見た時は、扉があったと思うっす」

 二人の会話を聞く限り、私の記憶は正しいらしい。

「ねぇ、扉の有無はどちらでもいいから、先に進まない?」

 私の言葉に二人は無言で頷き、先に進む。

 こちら側は反対と違って、通路に窓がない。
 扉は、右側に四つ。
 内、奥二つはトイレだ。
 じゃぁ、手前二つは?

 まず一つ目の扉を!リーダーがそっと開けて、中を確認する。
 私とギドは背後と両サイドの警戒。

「二人とも、大丈夫だ。ここはロッカールームだ」

 部屋の中に入れば確かにロッカールームだ。
 だが、ロッカーの数が多すぎる・・・。
 もし、もしもだが、この中に花が入ってるってなったら、一つずつ確認するの?
 いやいや、手間でしょ?

「仕方がない・・・確認するか・・・」

 ですよね(泣)
 もうこうなれば自棄よ!!


 で、結果。


「無かったっすね・・・」

 疲れはてたギドの言葉に、私も頷くしかなかった。
 だって、十列もあって一列二十。
 これなら三人でやればまだなんとか・・・って思うでしょ?

 違うのよ・・・一列が表と裏合わせになってんの・・・つまり、壁沿いを覗いて十八列。
 全てで三百六十で、一人のノルマが百二十。
 時間も掛かるのに、花がない・・・。

 軽い嫌がらせだわーーーーー!!!

「無かったもの仕方がない・・・次に行こう」

 その言葉になんとも言えない疲労を抱えつつ、廊下に再び出た。

 次の扉も前回同様、リーダーが開く。
 私達は周りの警戒。

「今度は、食堂か?」

 何故かリーダーが疑問系。
 なんで疑問系?

 見たら理由がわかった。
 何だか見たことのない材質で作られたテーブルと、椅子が並べてある。
 ただ、そこに座っているのは、ゴブリンやオーガと言ったモンスターで、目の前のテーブルには、空の大皿があるのだ。
 だけど、モンスターの手には、ナイフとフォークが握られている。

 てか、ゴブリンとかオーガが、大人しく椅子に座って、ナイフとフォークを持ってることが異様過ぎるわ・・・。
 そんな知能ないでしょ?!

 そこに、奥から大きなフライパンが中をただよって来て、中の物が皿に移される。
 一斉にモンスター達が色めき立つ。

 そして、祈った・・・。

 ん?祈った?
 おいおい。モンスターが神に祈ってどーするの?!
 昇天するわよ!?

 だけど、次の瞬間に見た物に、言葉を失う。
 だって・・・だって、皿の上に乗ってたのは、アル首なのだもの・・・。
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