7 / 149
始まり~出発
初めまして 4
しおりを挟む再びゼノスさんに連れられて、違う部屋に来た。
パタンと後ろで扉が閉まる音を聞きゼノスさんを振り返った。
「あまり気を落とさないで下さい。旦那様はちょっと性格が悪い方なので・・・」
私に気遣ってくれるゼノスさんは優しい。
優しいがお父さんの性格はちょっとじゃないと思う・・・。
今後会う事も無いと思うから、忘れる事にしよう。
そんな決意をしている私の前に、ゼノスさんは服を差し出してきた。
「外に出るにはそちらの服だと何かと問題があるでしょうから、これをあちらで着てください」
差し出された服を受け取ると、衝立を示された。
着替えた服は、動きやすそうなワンピースだった。
生地も今まで着ていた服よりも、ずっと手触りが良い。
今までもこういった服が着たかったな。
衝立からゼノスさんの元へ行くと、靴とリュックが置いてあった。
「靴はこちらを使って下さい」
言われるがまま靴を履き替える。
「それから、こちらには着替えと食料を入れておきました。少々、重いでしょうが我慢して下さいね」
受け取ったリュックは確かに重い・・・。
大体、五・六キロかな?
中を開いて確認すると、着替えが数着と、日持ちしそうな干し肉、乾パンに水筒が入っていた。
重いが、これから当面の食料は大切。
「はい。ありがとうございます」
お礼を言いつつ、確認していたリュックを背負う。
「では、行きましょう」
その声で再びゼノスさんに付いて、部屋を出た。
案内されて付いて行くとそこは私の居た所で言えば、お店の裏側の様な所に出た。
多分、業者がお屋敷に出入りする勝手口なのかな?
辺りを見回しているとゼノスさんが立ち止まった。
あっぶな!ゼノスさんに追突する所だった。
よそ見しながらの、歩行はダメだよ!
特に最近はスマホ見ながらの歩行が危なくて・・・ってそう言う事じゃない。
「見送りは許可されていないですよ」
厳しい口調のゼノスさんに、何ぞよ?と立ち止まったゼノスさんから、少し体をずらして見たら、扉の側にリアが立って居た。
それを見て納得。
こんなに大きいお屋敷なのに、誰も居ないなんて可笑しいと思ったんだよね。
確かに私を見られるのはお父さん的にはまずいし、いくら誰にも話すなって言われても人間ダメだと言われた事をたしたくなるよね。
一人でうんうん言ってる間にも二人の会話は続いている。
「ゼノス・・・少しで良いのお願い。最後に話させて・・・」
懇願するリアにゼノスさんは小さくため息をついた。
「・・・分かりました。少しだけですよ」
「ありがとう、ゼノス」
二人の間で話がつくとゼノスさんが横に捌け、私に道を譲った。
私を見たリアはいつも話すときの様に、私の目線の高さまでかがんだ。
「短い間でしたが一緒に過ごすことが出来てリアは本当に嬉しかったです。今まで外に出てみたいなとお話されていましたが、こんな形で外に出れた事残念です。出来る事なら私も一緒に行きたかった・・・。それが出来なくて本当に申し訳ありません。外に出たら楽しい事も辛い事もあるでしょう。それでも私はお嬢様がちゃんと立って生きていけると分かっています。どうかお体に気を付けて下さい」
そう言うとリアは私を抱きしめた。
その言葉に、体温に、泣きそうになった。
リアとは初めから、友好とは言えない関係だった。
でも一緒に過ごす内に次第と打ち解けていった。
そして一緒に過ごす内に、彼女が私を見る目が変わっていったのに私は気付いていた。
きっと自分の子供の様に思っていてくれたと思う。
だからこそ、此処では泣かない。
彼女の前で泣いてしまっては、彼女の心にわだかまりとなってしまう。
「リア、お見送りダメなのにありがとう。私もリアと一緒に居れて本当に良かった。リアも体に気を付けてね」
私もありがとうの気持ちを込めて、抱きしめる腕に力を込めた。
体を離したリアの目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
それでも泣かない様に、涙がこぼれない様に私に向かって笑った。
私も笑顔を返す。
「貰って下さい。屋敷を出たら中を開けて下さいね」
そう言うと徐にリアが私の手を取って、掌に小さな袋を置いた。
「分かった。ありがとうリア」
「そろそろ行きましょう。これ以上、遅くなるわけにはいけません」
ゼノスさんの言葉に、私達は離れた。
最後に
「リア、さようなら」
「はい。お嬢様、さようなら」
言葉を交わして、私は扉から外に出た。
扉から出ると、そこには馬車が。
ゼノスさんを見るとこれからの工程を話してくれた。
「馬車で一週間程移動して国境付近の村まで行きます。その後はお嬢様と最後の場所に行きましょう」
説明が終わると、馬車の扉を開けてくれて乗るのを促された。
馬車に乗った私はドキドキものだ。
え?初めて馬車に乗ったからとかじゃないよ?
いや、一割位はあるかもだけど・・・。
だってゼノスさんが言った最後って気になるでしょ⁉
アレってどう言う事⁉
お父さんは殺さないって言ってたけど、ゼノスさんが旦那様の為とか言って私を亡き者にしたりして・・・。
出だしはどうであれ今度は楽しく長生きをしたいので、殺されそうになったら出来る限りの事をしよう!
それでもこの先、不安しかない・・・。
5
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!
Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた!
※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる