転生しても山あり谷あり!

tukisirokou

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 始まり~出発

始まりは塔の中から 2

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 私が半年前に目覚めた時は、私の傍らには一人の女性が。

 誰?と思う暇もなく、女性は部屋から飛び出して医者と思われる人を連れ立って戻って来た。
 診察を受けて、更に二日程は安静にしましょうとなり、女性と先生は再び部屋を出て行った。

 その間の私はポカーン状態だ…。
 本当に、あの時は、少しの時間でも、一人にしてくれてありがたかった!

 診察の時に気が付いたのだ、自分の手が小っちゃいことに。
 診察中も握って開いてを何回か繰り返したが、私が動かしているのは正真正銘の小さくて柔らかい子供の手だった。
 次にベッドから降りようとしたら、足は床には届かない。
 混乱した頭を抱えていると、先ほどの女性が戻って来て、呆然とした私に「高熱で五日程意識が無かった」と泣きながら教えてくれた。

 しかも、彼女は母親らしい…。
 いやいやいや、お母さん?
 そもそも全く違う人だし、初めてお会いする方だし。

 ぽかんと、きっと間抜けに見える顔を、気遣いながら自称お母さんは私をベッドに寝かしつけた。
 私は私でまだ熱の残る体に抵抗出来ず、横になったとたんに夢の中へ。

 次に目が覚めた時には熱が下がっていて、ここが何処で何故私が子供になったのか分からず、取り敢えずはまだ病人だし様子見で、と結論づけた。
 いや…現実逃避とかじゃないですよ?
 実際問題いきなり知らない場所で、子供になってました!ってなったら素直に転生キターーー!とか思わないからね?

 なので状況が理解できるまでお母さん(仮)への受け答えも最小限にしていた。
 幸いにも、元々からあまり反応しない子供だったのか、特に気にならない様で、嫌な顔もしないで対応をしてくれた。

 動ける様になってからまず行ったのは、自分のいる場所などの情報収集だ。

「まずは、この部屋から出てみよう!」

 さぁ、いざ出発!と握り拳を高々と上げドアを開けようとしたのだが…。
 ドアはガチャガチャと鳴るだけで開かず。

「鍵が掛かってる…開けるのは~?」

 ドアノブの辺りを見る限りでは、内鍵は見当たらない。
 と言う事は、外からしか鍵が開かない…。

 え?おかしくない?
 嫌な予感がしつつも取り敢えず他に出口が無いか探すが、ドアはもう一部屋の物しか見当たらず。

 探すと言ってもワンルームにほぼ等しくドアからすぐの所は、パーテンションでベッドが見えない様になっていてベッドとチェストが一つ、その奥の窓辺にソファが一つ。

 部屋のもう一つのドアの先には、トイレとバスタブ。
 浴槽は私の好きな可愛い猫足バスタブだ。

 それ以外は何もない…。

 慌てて、窓に近づいて見えたのは鉄格子!
 いやいやいや、可笑しいでしょ!?
 窓に鉄格子がはまっているのも驚きだが、窓の外の景色にも驚きだ。
 そこには、何処までも澄み渡る綺麗な青空が。

 そう、青空しか見えない。
 現代の高層ビルやその街並み、車等が見えなくて代わりに見えるのは、広い庭と高い柵。

 薄々、何か変だなぁ~とは思っていた。
 お母さん(仮)は、いつもドレスを着ていた。
 昔の西洋風のドレスを。
 最初は、コスプレ?そんな設定?とか思っていたけど、どうやら本物らしい…。

「まさか軟禁されていたとは…」

 ここでやっとベッドで目覚め、いろいろと目を逸らしてきたが現実に立ち向かわなければならなくなった…。


 ここで、一つ一つの状況を整理しよう。
 まずタイムスリップだとしたら、私が軟禁されているのが何となく分かる。

 それは、髪の色だ。
 長年切られていないだろう髪は、腰の辺りまで長いのだが色が白い。
 正確には、白と言うよりも白銀と言うのかな?
 実際に今まで生きてきて、白銀髪を見たことが無いので何とも言えないけど…。

 多分この世界でも珍しいのかな?
 それにあれ?と思った事がある。
 お母さん(仮)だ。

 お母さんと言うのだから髪色が同じだと普通は思うのだが、彼女の髪色はちょっと明るめの栗色に瞳はダークブラウン。
 一般的なカラーだと思う。

 先生は頭がちょっとアレだったけど、瞳はちょっと明るいブラウンだった。
 容姿で似ていない為、お母さん(仮)なのだ。
 今のところお父さんを見たことが無いので、もしかしたら父親譲りの髪色なのかもしれないが…。

 それにしても、白銀髪は現代でも珍しかったから、昔なら更に珍しいと思う。
 人は、自分達と何かが違うとそれを迫害する事がある。
 親が居ないとか、貰われた子供とか今までもあったことだ。
 それで今回は、この髪色だと思う。

 もう、ため息もんだね。
 現代…いや前世でも、この時代でも迫害されるとは…。

「はぁあ~…なんだか前途多難だ」

 いやその前にここから出れるのか?

「ん~…取り敢えず、夕食を持って来てくれるお母さんに聞こうかな」


 そんなつぶやきを漏らした。
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