藍は墓泣く

大打ち上げ

「黒川君、よかったね。上手くいったよ」
「ありがとうございます。春奈さんと製品のお陰です」

「上手になったねー」

「どうゆうことですか？」時々慌てる感じは相変わらず可愛い。

「でもさ、何で説明の時に資料使わなかったの?あんなに頑張って作ってたのに」

「なんか、製品を見ている時の目を見ると、長々とした説明も要らないかなって思いましたし、老眼鏡が転がってたんですよ。

文字の説明よりは、せっかく会えてるんだから、言葉で直接伝えたいなぁって思ったんです」

「流石だねー。たぶんあの資料は読まれないかもだけど、熱意は伝わったからヨシとしようね」

「そうですね。その場で契約も決まったし、今日は嬉しいことばかりです」

「私も嬉しいです」

「敬語やめて下さいよー」

「ごめんごめん。あ、黒川君、そう言えば社長が倒れた日、ご飯食べにいく約束してたよね？」

「してましたね。でも、あの日は一大事でしたもん。大丈夫ですよ」

「ごめんね、お詫びも何も出来てなくて」

「いえ、大丈夫ですよ」

「私が大丈夫じゃなかった」

「ですよね、社長の前に父親ですもんね」

「ううん、それもあるけど、あの日さ、あ、ううん。何でもない」少しだけ、沈黙が流れた。

「春奈さん、今日、大打ち上げしましょ。後二時間、お仕事頑張った後に、大打ち上げしましょ」

「うん！」それから二時間後、それぞれ車に乗り、目的の日本料理屋に着いた。