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「水谷さん、推薦いただきましてありがとうございます。
私が今回の七十周年特別企画製品はその名もノウスセブンです。
北口の北と七十周年の七をかけました。
北斗七星をイメージとし、それぞれにダメージ加工を施します。
七種類のラインナップでお客様を満足させます。ケミカルウォッシュ加工、サンドブラスト、シェービング加工、ストーンウォッシュ加工、バイオウォッシュ加工、ブリーチ加工、ワンウォッシュ加工をこのデニム一枚にキタグチの技術を集約させます」
その後も説明が十五分程続いた。
「ご清聴ありがとうございました」
プレゼン後には熱狂的な拍手の人もいた。
一礼をして、水谷さんと二人席に着いた。
「関東さん、ありがとうございました。
質疑応答は最後にまとめて行います。
続いて、北口春奈さん、お願いします」
立見常務にアナウンスいただき、黒川君と二人、前に出た。
「私は北口春奈さんの製品を推薦させていただきます。
その理由としては、この製品はお客様とこの会社を繋ぐ大事なものであり、これからの会社にとって、なくてはならないものだからです。
北口春奈さん、宜しくお願い致します」
いつも怒肩の黒川君が非常にリラックスした様子で推薦をしてくれた。
その肩は撫で肩で声のトーンも落ち着いていた。
あがっていたのは私の方だった。
黒川君にまた助けてもらった。
「黒川さんに推薦いただきました。北口春奈です。
黒川さんの言葉にもあったように、これからの厳しい時代に生き抜くために、お客様に必要とされるために、この製品を考えました。
製品名はキタグチスキニーブラックです。
これは既存製品であるキタグチデニムの強みを生かして弱みを克服した製品です」
その後も非常に落ち着いたテンポでプレゼンを進めた。
「ご清聴ありがとうございました」
まばらに拍手をいただき、無事にプレゼンが終了した。
「北口春奈さん、ありがとうございました。
最後に、両名に質問等ある方がいましたら、挙手をお願いします」
早速チラホラと手が上がった。
「私は質問ではないのですが、関東さんの加工七種類と七十周年をかける点が流石だと思いました」
その後も手が上がった。
「私も質問ではないですが、ノウスセブンと言う名前が北口デニムの七十周年と上手くかかっていて、良いなと思いました」また手が上がる。
「私は北口春奈さんに質問ですが、今のキタグチデニムをパクっただけで、新規性があまり見えないのですが」
「ご質問、ありがとうございます。全くの新規制ということはありませんが、社会のニーズに答えた形となります」
その後も関東さんを褒める時間と私に対する嫌味な質問が続いた。
「他にありませんか?」
もう手はあがらないようで、時間もいい頃を迎えていた。
「最後に社長から一言あればいただきたいのですが」
「まずは二人ともそれぞれに良いところと課題が見つかったように思う。十月の最終発表まで後三ヶ月、もっと詰めて貰えればと思う。午後にそれぞれ個別に話をする。今回のところはお疲れ様でした」
波のある拍手が続き、中間発表は無事に終了した。報告会の質疑応答の間、黒川君と立見常務、社長のペンがひたすらに動いていた。午前中の業務中に関東さんが社長室に呼ばれて行った。
「失礼します」
「関東さん、ひとまずはお疲れ様でした」
「社長、ありがとうございました」
「良かったんじゃないか?皆褒めてくれていたし」
「ありがとうございます。やっぱり私と娘様とではお言葉ですが、実力に差があったのではないかと思うのですが」
「まぁ、そういうな。春奈にとっても良い勉強になるよ。それでは残りの三ヶ月も頑張ってくれ」
「そうですよね、先輩の胸を貸すつもりで頑張ります」
高笑いの表情で社長室を出た関東さんはご機嫌そのものだった。その次に案の定、私が呼ばれた。
「失礼します」
「春奈、お疲れ様」
「ありがとうございました」
「発表内容自体はこの短い間でよくまとめたな」
「ありがとうございます」
「後はお前のことだから、言わなくても分かると思うが、伸びしろがたくさんあるからな。それと、新しい黒川君か。あの子、成長してるな」
「はい!」
今日一番嬉しい言葉だった。
社長から見ても、黒川君の成長が伝わっていて、推薦者に選んで良かった。
「話し方も落ち着いていたし、恐らく質疑応答を嫌な顔一つせずにメモしてたろう?大したもんだ」
「ありがとうございます!」
「後は私からは何も言わん。後三ヶ月後を待ってるからな」
「はい、それでは失礼致します」黒川君もいてくれたら良かったのにとつい思った。
「春奈さん、ごめんなさいね。実力の差がつい出ちゃって」
「素晴らしいプレゼンでしたね」
「どうもありがとう。春奈さんも後三ヶ月あるんだから、まだまだ頑張ってね。困ったことがあったら、いつでも私に聞いてよね」
「恐れ入ります」取巻きなのかは分からないが、皆が一生懸命に関東さんの心のコップに水をあげている。
恐らく、今彼女のコップは水で溢れているんだろう。
歩く後ろ姿までご機嫌が伝わってくる。
「春奈さん、プレゼンお疲れ様」
「立見常務、ありがとうございました」
「さっきたまたま黒川君に会ったから聞いといたけど、今日の十六時以降が空いてるみたいだから、そこから一時間今日の整理を三人でしておこう。彼もちゃんとメモしてたから、良かった」
「はい、そうですね」
本当に黒川君が褒められると自分のこと以上に嬉しい。
引き続き、ルーティンワークをこなした。
約束の時間となり、三人は第一会議室に集まった。
「春奈さん、発表お疲れ様でした」
「黒川君も推薦ありがとうございました。黒川君が落ち着いたトーンで推薦してくれたから、私も落ち着いて発表することが出来たの。だから、本当にありがとう」
「ありがとうございます。いっぱい練習しました。あ、こう言うのは言わない方がいいですね」
立見常務も優しい表情で微笑んでいる。
「それで黒川君、例の物は出来たかな?」
「例の物?」
「はい、出来ました。こちらです」そういうと、自分のパソコンを画面に繋げて見せてくれた。
私に対する質疑応答と私の返答部分が見事にまとまっていた。
私が今回の七十周年特別企画製品はその名もノウスセブンです。
北口の北と七十周年の七をかけました。
北斗七星をイメージとし、それぞれにダメージ加工を施します。
七種類のラインナップでお客様を満足させます。ケミカルウォッシュ加工、サンドブラスト、シェービング加工、ストーンウォッシュ加工、バイオウォッシュ加工、ブリーチ加工、ワンウォッシュ加工をこのデニム一枚にキタグチの技術を集約させます」
その後も説明が十五分程続いた。
「ご清聴ありがとうございました」
プレゼン後には熱狂的な拍手の人もいた。
一礼をして、水谷さんと二人席に着いた。
「関東さん、ありがとうございました。
質疑応答は最後にまとめて行います。
続いて、北口春奈さん、お願いします」
立見常務にアナウンスいただき、黒川君と二人、前に出た。
「私は北口春奈さんの製品を推薦させていただきます。
その理由としては、この製品はお客様とこの会社を繋ぐ大事なものであり、これからの会社にとって、なくてはならないものだからです。
北口春奈さん、宜しくお願い致します」
いつも怒肩の黒川君が非常にリラックスした様子で推薦をしてくれた。
その肩は撫で肩で声のトーンも落ち着いていた。
あがっていたのは私の方だった。
黒川君にまた助けてもらった。
「黒川さんに推薦いただきました。北口春奈です。
黒川さんの言葉にもあったように、これからの厳しい時代に生き抜くために、お客様に必要とされるために、この製品を考えました。
製品名はキタグチスキニーブラックです。
これは既存製品であるキタグチデニムの強みを生かして弱みを克服した製品です」
その後も非常に落ち着いたテンポでプレゼンを進めた。
「ご清聴ありがとうございました」
まばらに拍手をいただき、無事にプレゼンが終了した。
「北口春奈さん、ありがとうございました。
最後に、両名に質問等ある方がいましたら、挙手をお願いします」
早速チラホラと手が上がった。
「私は質問ではないのですが、関東さんの加工七種類と七十周年をかける点が流石だと思いました」
その後も手が上がった。
「私も質問ではないですが、ノウスセブンと言う名前が北口デニムの七十周年と上手くかかっていて、良いなと思いました」また手が上がる。
「私は北口春奈さんに質問ですが、今のキタグチデニムをパクっただけで、新規性があまり見えないのですが」
「ご質問、ありがとうございます。全くの新規制ということはありませんが、社会のニーズに答えた形となります」
その後も関東さんを褒める時間と私に対する嫌味な質問が続いた。
「他にありませんか?」
もう手はあがらないようで、時間もいい頃を迎えていた。
「最後に社長から一言あればいただきたいのですが」
「まずは二人ともそれぞれに良いところと課題が見つかったように思う。十月の最終発表まで後三ヶ月、もっと詰めて貰えればと思う。午後にそれぞれ個別に話をする。今回のところはお疲れ様でした」
波のある拍手が続き、中間発表は無事に終了した。報告会の質疑応答の間、黒川君と立見常務、社長のペンがひたすらに動いていた。午前中の業務中に関東さんが社長室に呼ばれて行った。
「失礼します」
「関東さん、ひとまずはお疲れ様でした」
「社長、ありがとうございました」
「良かったんじゃないか?皆褒めてくれていたし」
「ありがとうございます。やっぱり私と娘様とではお言葉ですが、実力に差があったのではないかと思うのですが」
「まぁ、そういうな。春奈にとっても良い勉強になるよ。それでは残りの三ヶ月も頑張ってくれ」
「そうですよね、先輩の胸を貸すつもりで頑張ります」
高笑いの表情で社長室を出た関東さんはご機嫌そのものだった。その次に案の定、私が呼ばれた。
「失礼します」
「春奈、お疲れ様」
「ありがとうございました」
「発表内容自体はこの短い間でよくまとめたな」
「ありがとうございます」
「後はお前のことだから、言わなくても分かると思うが、伸びしろがたくさんあるからな。それと、新しい黒川君か。あの子、成長してるな」
「はい!」
今日一番嬉しい言葉だった。
社長から見ても、黒川君の成長が伝わっていて、推薦者に選んで良かった。
「話し方も落ち着いていたし、恐らく質疑応答を嫌な顔一つせずにメモしてたろう?大したもんだ」
「ありがとうございます!」
「後は私からは何も言わん。後三ヶ月後を待ってるからな」
「はい、それでは失礼致します」黒川君もいてくれたら良かったのにとつい思った。
「春奈さん、ごめんなさいね。実力の差がつい出ちゃって」
「素晴らしいプレゼンでしたね」
「どうもありがとう。春奈さんも後三ヶ月あるんだから、まだまだ頑張ってね。困ったことがあったら、いつでも私に聞いてよね」
「恐れ入ります」取巻きなのかは分からないが、皆が一生懸命に関東さんの心のコップに水をあげている。
恐らく、今彼女のコップは水で溢れているんだろう。
歩く後ろ姿までご機嫌が伝わってくる。
「春奈さん、プレゼンお疲れ様」
「立見常務、ありがとうございました」
「さっきたまたま黒川君に会ったから聞いといたけど、今日の十六時以降が空いてるみたいだから、そこから一時間今日の整理を三人でしておこう。彼もちゃんとメモしてたから、良かった」
「はい、そうですね」
本当に黒川君が褒められると自分のこと以上に嬉しい。
引き続き、ルーティンワークをこなした。
約束の時間となり、三人は第一会議室に集まった。
「春奈さん、発表お疲れ様でした」
「黒川君も推薦ありがとうございました。黒川君が落ち着いたトーンで推薦してくれたから、私も落ち着いて発表することが出来たの。だから、本当にありがとう」
「ありがとうございます。いっぱい練習しました。あ、こう言うのは言わない方がいいですね」
立見常務も優しい表情で微笑んでいる。
「それで黒川君、例の物は出来たかな?」
「例の物?」
「はい、出来ました。こちらです」そういうと、自分のパソコンを画面に繋げて見せてくれた。
私に対する質疑応答と私の返答部分が見事にまとまっていた。
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