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喜びと悲しみと
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「なさん?春奈さん?」
「ん?あっ、え?何?」
「なんだか、ぼーっとしてたんで、お疲れかなって」
「ううん、そんなことないよ、ごめんごめん」
「あ!来ましたよ」
「お待たせしました。本日のオススメコースです」優しいお酢の香りに、はみ出んばかりの天ぷら、聞こえる厨房の音、上質な割り箸をパキッと割り、いただきますとともに口に運ぶ。
ぼーっとしてた気持ちが晴れる程に、ママカリが美味しい。
「美味しい!」声が揃ったその後に、説明は要らなかった。お互いの箸のスピードが美味しいと話している。美味しそうなその顔が美味しいと話している。
遠くからはお店の人が嬉しそうな顔で微笑んでいる。次々に箸が進んでいく。
「ごちそうさまでした」満足にお店を出て、駐車場に少し車を置かせてもらった。
後少しだけ話がしたくて、途中の自動販売機でジュースを買った。
「すみません、ご飯からジュースまで出してもらって」
「いいのよ、私が勝手に誘ってるだけだから」
「ありがとうございます」
「あ、私に引かなかった?黒川君と同じスピードで食べちゃったよ」
「あれは食べるスピード加速します。引きませんでした。加速で足しときました」
「どうゆうことよ、それ」ジュースが溢れそうなくらいに笑ってしまった。
「春奈さん、いい笑顔ですね」
「え?」
「いや、いつも口元を隠して笑ってたから、そういう癖なのかなって」
「え、そうかな?そんな、急に言わないでよ」赤い夕陽に助けられながら、少しずつ二人で車の場所へ戻っていった。
「今日はありがとね。ごめんね、ダラダラ付き合わさせて」
「なんでですか、とっても楽しかったです。また時間が合ったときに、今度は僕から誘ってもいいですか」
「え、どーしよーかな、いいよ!」また赤い夕陽と君に感謝して、帰路についた。
「おはようございます」初めての一週間のスタート。
何人かの顔はもう、しっかりと識別出来ている。大きな会社だと人の顔と名前は覚えきれないけど、この人数なら覚えられる気がしている。
朝礼が唯一の全員が揃う時だから、ここぞとばかりに顔を眺める。時刻が九時になり、朝礼が始まった。
「おはようございます」おおよそ、今日一日の製造スケジュールと出荷物、連絡事項等で朝礼が終わる。
決められた場所を決められた通りに掃除する。これが私のルーティンになっていく。
「関東さん、おはようございます。何か出来ることはありますでしょうか」
「あぁ、あるわよ。とりあえず、第一会議室に一緒に来てもらえる?先に入ってて」
「はい、分かりました」念の為、パソコンと筆記用具とノートを持ってきた。
入室すると直ぐに関東さんも入ってきた。
「春奈さん、だっけ?名前」
「はい、北口春奈です」
「そうよね、北口だから先輩の邪魔しても何してもいいもんね」
「どうゆうことですか?」
「どうゆうことも何も分かってるでしょ?断りなさいよ」
「え?」
「嫌らしい、分かってる癖に。七十周年特別企画製品の件、直ぐ社長のところに行って断って来なさい。自分の意思で」
「すみません、どうゆうことですか。先週の社長のお話では、七月第一週に中間報告会をと言う話で」
「だから、それを断ってきなさいって言ってるの分からない?何で私とあなたが同じレベルで戦わなきゃならない訳?それはあなたが北口だからでしょ?娘だからでしょ?私にはそんな実力ありませんって断ってきなさいよ」
「お断りします。一つお言葉ですが、社長は私を特別扱いしませんし、そんな断りをするつもりもないです」
「今日以降、その仕事を対応してもらわないと、私からあなたへの仕事が振れないんだけどどうしよっか?」
「いえ、それは困ります。仕事に慣れるまでは関東さんのサポートと聞いてますので」
「だからサポートでしょ?平行に勝負するってことは並列じゃないの?まだ分からない?あなた」
「すみませんが、サポートとという業務内容を格下といった見方をするのは違うと思うのですが。あくまでチームとしての動きになるかと思いますので」
「流石御令嬢は図々しいわね、入社早々に上司に楯突くんだもの。怖い怖い」
「あの、私が断りを入れなければ、関東さんは私に何も仕事を振らないおつもりですか?」
「いいえ。断りを入れて、社長の承諾を得てちょうだい。そこまでよ」
「すみませんが、関東さんは何の為にこの会社で働いてるんですか?」
「何の為?そんなこと言わなくても分かるでしょ、何が言いたいの?」
「あの、こんなこと言うのは失礼なんですけど、一度社長に相談させてもらいます」
「相談?断りでしょ?もちろん」
「いえ、関東さんのサポートのお仕事は私の仕事から外してもらえないか、相談させていただきます」
「あっそ、ならもういいわ。勝手にすれば?」そう言って直ぐに会議室を出た。
途方に暮れたまま、一文字も書いてないノートを閉じて部屋を後にした。
とりあえず自席に戻り、パワーポイントを開いた。自分の力でやるしかない。それしかなかった。
「春奈さん、ちょっといいかな?」専務の水谷さんから声を掛けられた。
「はい」そう言うと手招きをされて、今度は第二会議室に入った。
「ごめんね、急に。あぁ、自己紹介してなかったね。専務兼営業部部長の水谷です。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「それで、関東さんからは私は自分で出来るから関東さんのサポートを外れたいんだけど出来ますかって相談されてるって聞いたけどあってる?」
「いや、そんなことは」水谷部長は言葉を潰すように続けてきた。
「オススメはしないけど、春奈さんは経験もあるだろうから任せてもいいかなって思うんだ」
「私そんなこと言ってないですよ?」そうは言ったものの、関東さんの腹の底は分かった。
首を縦に振らないと見ると、その手で来たかと思った。
ただ、入社早々にこれ以上トラブルが大きくなることも避けたかった。
「ん?あっ、え?何?」
「なんだか、ぼーっとしてたんで、お疲れかなって」
「ううん、そんなことないよ、ごめんごめん」
「あ!来ましたよ」
「お待たせしました。本日のオススメコースです」優しいお酢の香りに、はみ出んばかりの天ぷら、聞こえる厨房の音、上質な割り箸をパキッと割り、いただきますとともに口に運ぶ。
ぼーっとしてた気持ちが晴れる程に、ママカリが美味しい。
「美味しい!」声が揃ったその後に、説明は要らなかった。お互いの箸のスピードが美味しいと話している。美味しそうなその顔が美味しいと話している。
遠くからはお店の人が嬉しそうな顔で微笑んでいる。次々に箸が進んでいく。
「ごちそうさまでした」満足にお店を出て、駐車場に少し車を置かせてもらった。
後少しだけ話がしたくて、途中の自動販売機でジュースを買った。
「すみません、ご飯からジュースまで出してもらって」
「いいのよ、私が勝手に誘ってるだけだから」
「ありがとうございます」
「あ、私に引かなかった?黒川君と同じスピードで食べちゃったよ」
「あれは食べるスピード加速します。引きませんでした。加速で足しときました」
「どうゆうことよ、それ」ジュースが溢れそうなくらいに笑ってしまった。
「春奈さん、いい笑顔ですね」
「え?」
「いや、いつも口元を隠して笑ってたから、そういう癖なのかなって」
「え、そうかな?そんな、急に言わないでよ」赤い夕陽に助けられながら、少しずつ二人で車の場所へ戻っていった。
「今日はありがとね。ごめんね、ダラダラ付き合わさせて」
「なんでですか、とっても楽しかったです。また時間が合ったときに、今度は僕から誘ってもいいですか」
「え、どーしよーかな、いいよ!」また赤い夕陽と君に感謝して、帰路についた。
「おはようございます」初めての一週間のスタート。
何人かの顔はもう、しっかりと識別出来ている。大きな会社だと人の顔と名前は覚えきれないけど、この人数なら覚えられる気がしている。
朝礼が唯一の全員が揃う時だから、ここぞとばかりに顔を眺める。時刻が九時になり、朝礼が始まった。
「おはようございます」おおよそ、今日一日の製造スケジュールと出荷物、連絡事項等で朝礼が終わる。
決められた場所を決められた通りに掃除する。これが私のルーティンになっていく。
「関東さん、おはようございます。何か出来ることはありますでしょうか」
「あぁ、あるわよ。とりあえず、第一会議室に一緒に来てもらえる?先に入ってて」
「はい、分かりました」念の為、パソコンと筆記用具とノートを持ってきた。
入室すると直ぐに関東さんも入ってきた。
「春奈さん、だっけ?名前」
「はい、北口春奈です」
「そうよね、北口だから先輩の邪魔しても何してもいいもんね」
「どうゆうことですか?」
「どうゆうことも何も分かってるでしょ?断りなさいよ」
「え?」
「嫌らしい、分かってる癖に。七十周年特別企画製品の件、直ぐ社長のところに行って断って来なさい。自分の意思で」
「すみません、どうゆうことですか。先週の社長のお話では、七月第一週に中間報告会をと言う話で」
「だから、それを断ってきなさいって言ってるの分からない?何で私とあなたが同じレベルで戦わなきゃならない訳?それはあなたが北口だからでしょ?娘だからでしょ?私にはそんな実力ありませんって断ってきなさいよ」
「お断りします。一つお言葉ですが、社長は私を特別扱いしませんし、そんな断りをするつもりもないです」
「今日以降、その仕事を対応してもらわないと、私からあなたへの仕事が振れないんだけどどうしよっか?」
「いえ、それは困ります。仕事に慣れるまでは関東さんのサポートと聞いてますので」
「だからサポートでしょ?平行に勝負するってことは並列じゃないの?まだ分からない?あなた」
「すみませんが、サポートとという業務内容を格下といった見方をするのは違うと思うのですが。あくまでチームとしての動きになるかと思いますので」
「流石御令嬢は図々しいわね、入社早々に上司に楯突くんだもの。怖い怖い」
「あの、私が断りを入れなければ、関東さんは私に何も仕事を振らないおつもりですか?」
「いいえ。断りを入れて、社長の承諾を得てちょうだい。そこまでよ」
「すみませんが、関東さんは何の為にこの会社で働いてるんですか?」
「何の為?そんなこと言わなくても分かるでしょ、何が言いたいの?」
「あの、こんなこと言うのは失礼なんですけど、一度社長に相談させてもらいます」
「相談?断りでしょ?もちろん」
「いえ、関東さんのサポートのお仕事は私の仕事から外してもらえないか、相談させていただきます」
「あっそ、ならもういいわ。勝手にすれば?」そう言って直ぐに会議室を出た。
途方に暮れたまま、一文字も書いてないノートを閉じて部屋を後にした。
とりあえず自席に戻り、パワーポイントを開いた。自分の力でやるしかない。それしかなかった。
「春奈さん、ちょっといいかな?」専務の水谷さんから声を掛けられた。
「はい」そう言うと手招きをされて、今度は第二会議室に入った。
「ごめんね、急に。あぁ、自己紹介してなかったね。専務兼営業部部長の水谷です。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「それで、関東さんからは私は自分で出来るから関東さんのサポートを外れたいんだけど出来ますかって相談されてるって聞いたけどあってる?」
「いや、そんなことは」水谷部長は言葉を潰すように続けてきた。
「オススメはしないけど、春奈さんは経験もあるだろうから任せてもいいかなって思うんだ」
「私そんなこと言ってないですよ?」そうは言ったものの、関東さんの腹の底は分かった。
首を縦に振らないと見ると、その手で来たかと思った。
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