悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第2話 流転

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 馬車に揺られて、どれだけの時間が経ったか分からない。
 ザガードは馬車の窓から見える景色を見るしか出来ないので、退屈していた。
 その馬車の回りには、先程鎧を着た者達が馬で並走していた。

(しかし、公爵の私邸に行く事になるとは、どういう事だ?)
 ザガードは頭の中をどれだけ思い返しても、公爵家の使用人を含めた人達と会った事がない。
 それなのに、こうして呼ばれて困惑していた。

 それも仕方がない。王国の爵位は 公爵、辺境伯、侯爵、伯爵、子爵、男爵、卿という序列となっている。
 その一番高位の爵位の者が、どうして闘奴であったザガードを呼ぶのか、分かる方がおかしい。
 そうして、馬車の窓から見える景色を見ていると、大きな屋敷が窓から見えて来た。
 ザガードはあれが公爵の私邸だと予想した。

 そして、予想通り、馬車は門を越えて、屋敷の中に入っていく。エントランスの前で馬車が停まった。
 御者が席から降りて、馬車の扉を開けてくれた。
「どうぞ。段差がありますので、足元にご注意を」
 御者にそう言われ、ザガードは足元に注意しながら馬車から降りる。
 馬車から降りたザガードは屋敷を見る。
「……デカいな」
 思わず口から出た。
 だが、そういえる位に屋敷は大きかった。
 
 ザガードが居た闘技場の四倍はありそうな敷地に、ドンっと立つ屋敷。
 公爵の私邸なのだから、これぐらいあっても不思議ではないのだが、闘奴であったザガードはこんな大きな建物を見ること自体初めてだったので驚いていた。
 屋敷を見て圧倒されていたザガードに馬車と並走してきた者が声を掛けた。
「どうかしたのか?」
「……こんな、大きな建物は初めて見たから、驚いていた」
「ふむ。まぁ仕方がないな。お前の出自からしたらそうだろうな。それよりも、何時までも此処にいては、公爵様を待たせてしまう。入るぞ」
「ああ」
 その者が扉を開けてくれたので、ザガードはその者の後ろに着いて行く。

 扉を開けて、玄関ホールに入るとメイド服を着た女性が出迎えてくれた。
 不思議な事にその女性の耳は、刃の様の細長かった。
「お帰りなさい。ベルハルト」
「ああ、今帰ったよ。おば」
 ベルトハルトが何か言おうとしたら、突如、背筋がゾクリとしたザガード達。
 目の前にいる女性が〝殺気〟を発しているようだ。

「……セイラねえさん」
「はい。お帰りなさい」
 セイラと呼ばれた女性は笑顔で答えてくれた。
(今の〝殺気〟は闘技場でも感じた事がない位の重圧プレッシャーを感じたな)
 ザガードは思わず目の前の女性をジッと見た。
 
 どう見ても、耳が細長いメイドにしか見えないのだが、先程の〝殺気〟はとても一介のメイドが出せるものではない。そう思うと、このメイドは何者なのだと思うザガード。
 セイラを見ていた所為か、ザガードの視線に気づき、セイラはザガードを見る。
「この子が、旦那様が言っていた子なの?」
「ああ、そうだ。公爵様の所に行く前に」
「……そうね。一度、身体を綺麗にした方が良いわね」
 ベルハルトとセイラはザガードを見る。
 髪はボサボサで顔も汚れている。
 着ている服も汚れている上に、所々切れていたり破れていた。

「流石にこんな格好で公爵様の所に連れて行くのは無理ね」
「だよな~」
 セイラの言葉にベルトハルトは溜め息を吐きながら頷く。
「貴方、名前は?」
「ザガード」
「そう。じゃあ、ザガード、まずは身体を洗ってあげる。その間に、服を見繕っておくわ」
「じゃあ、そっちは任せた。俺は公爵様に連れて来た事と、着替えさせている事を報告しに行くから」
「分かったわ。ほた、付いてきなさい」
 セイラがそう言って歩き出したので、ザガードもその後に付いて行く。

 セイラの後に付いて行ったザガードは使用人用の風呂に一緒に入った。
「じゃあ、身体を洗うから、服を脱ぎなさい」
 セイラがそう言うと、ザガードは頷いて服を脱ぎだした。
 セイラも思いのほか聞き訳が良い子だと思いながら、服を脱いだザガードの身体を見た。
「……っ⁉」
 服を脱いだザガードを見て、セイラは言葉を失った。
 ザガードの身体は全身傷だらけであった。
 火傷、刺し傷、切り傷、何かの動物に噛まれた傷、打撲傷などがこれでもかというぐらいにあった。
「? 何か?」
「い、いいえ、何でもないわ」
 セイラはそう言いながら、ザガードの身体から目が離せなかった。
(この子。まだ、お嬢様と同い年くらいなのに、どれだけ地獄を見たのかしら……)
 そう思いながら、セイラはザガードに風呂場の使い方を教えながら、ザガードの身体で実践しながら洗った。
 
 数十分後。
 ザガードはサッパリした顔と真新しい服に着替えた。
「……うん。悪くないわね」
 セイラは少し離れた所で、ザガードが変な所がないか確認しながら言う。
 ザガードはいうと、着なれていない服の所為か窮屈そうに感じているようだ。
 襟首の所をしきりに引っ張っていた。
「こら、引っ張らないの。伸びるでしょう」
 セイラはその都度、注意した。
「…………」
 ザガードはそう言われると、引っ張るのは止めるのだが、首元が苦しいのかまた引っ張る。
「適当な男の子の服を用意したけど、小さかったようね」
 ザガードがそうするのを見て、セイラはそう察した。
「仕方がないわ。今日の所はそれで我慢してちょうだい」
「分かった」
「じゃあ、旦那様の所に行くわよ」
 セイラが歩き出したので、ザガードもその後に付いて行く。
 ようやく、ザガードを呼んだと思われる人物とのご対面であった。
 ザガードは生唾を飲み込んで、何が起こっても大丈夫なように心構えをした。

 セイラの後に付いて歩き出したザガード。
 少し歩いただけで、この館の使用人と思われる者達と何度もすれ違う。
 その度に、皆ザガードを珍獣を見るかのような目で見ていた。
(俺がそんなに珍しいのか?)
 そんな風に見られたので、ザガードがそう思っていた。
 確かにザガードの黒髪は珍しいといえるが、まったく居ないという訳ではない。
 実際は、セイラがザガードを連れて歩いているから、そんな風に見られているだけだ。
 セイラはこの公爵家でも古株に入る方なのだが、その間、まったく歳を取った感じがしない。
 それもその筈だ。
 セイラはエルフという亜人間だからだ。
 この世界には、人間種、亜人種、獣人種、龍人種、魔人種という五種の種族が存在する。
 その中で長寿で美形揃いの種族で有名なのが、亜人種のエルフだ。
 セイラはそのエルフだから歳を取っていない様に見えるのだ。
 ちなみに、セイラは今独身で、エルフが結婚すると、その相手は大抵年下だ。
 その事を知っている皆は、ザガードの事をセイラの相手なのかと思い見ていたのだ。
 

 そんな好奇心の目で見られながら、ザガード達はある部屋の前に着いた。
 セイラは身支度を整えてから、ドアをノックした。
『誰だ?』
「セイラです。お客様をお連れしました」
『入りなさい』
 セイラは扉を開けて中に入った。
 ザガードもその後に続いて、部屋の中に入った。
 部屋に入り、ザガードは目を動かして、部屋の中を見た。
 公爵というので豪華で華美な装飾で飾られた部屋だろうなと思って居たザガード。
 だが、予想と違い。
 豪奢ではあるのだが、それほど華美ではなかった。
 私室なのか執務室なのかは分からないが、豪華な装飾で飾られている。
 しかし、どれも下品では無かった。
 その部屋の奥にある机で指を組みながら、人の良い笑顔を浮かべている男性が居た。
 まだ、二十代後半で端正な顔立ち。ツーブロックショートにした金髪。細身だがそれなりに鍛えられているのが着ている服の上からでも分かる。
「やぁ、よく来たね」
「お、おはつに、おめにかかります。こうしゃく様」
 ところどころつっかえながら、挨拶をするザガード。
 生まれて初めて、貴族にあったようで、挨拶もイマイチだ。
「ははは、そう畏まらないで良い。今の君は客人なのだから」
 公爵は立ち上がり、ソファーに座り、ザガードにも座る様に促した。
 ザガードは一瞬、セイラを見た。
(座って良いのか?)
(大丈夫よ)
 と目だけで会話する二人。
 セイラがそう言うので、ザガードは公爵と対面の位置にあるソファーに座る。

「よく来てくれたね。私はオイゲン=フォン=ローレンベルトだ」
「ザガードと言います」
 頭を下げるザガード。
「先も言ったが、そう畏まらないで良い。何せ、君は私の娘の恩人なのだから」
「おんじん?」
 オイゲンの言葉をオウム返しの様に言うザガード。
 そう言われて、最近の事を思い返してみた。
「……そう言えば、この前の試合で、女の子を助けたような?」
 記憶があやふやなので、ハッキリと断言出来なかった。
 何せ、貴族の御令嬢なのだから、それはもう今目の前にいる公爵と遜色ない服を着ていると思うザガード。
 しかし、その時でそんな服を着た子を助けたか? と思っていた。
「そう。その女の子が私の娘なんだよ」
「はぁ、そうでしたか」
 公爵にそう言われて、だからどうしたと思うザガード。
 正直、あの試合で助けたのは偶然だった。
 あの翼獅子を倒さないと、ザガードが奴隷から解放されるのが遠のくと思い倒しただけだ。
 それで公爵の令嬢を助っただけの事であった。
「娘を助けていただき感謝する」
 公爵は頭を下げた。
 闘奴であったザガードに公爵が頭を下げたので、驚くザガード。
「そ、そんな、たいした事はしていないので、頭を上げてください」
 ザガードは狼狽した。
「いやいや、これは公爵とかそういう以前に、父親としての感謝だ。感謝するのに奴隷だろうとなんんだろうと関係ないだろう」
「は、はぁ」
 腰が低い公爵にザガードは恐縮していた。
「で、娘を助けたのに感謝だけでは、流石に私の度量が疑われる。なので」
 公爵は手を叩いた。
 すると、セイラが何処から出したのか、大きな布袋を抱えていた。
 その布袋をザガードに渡した。
「御礼として、白金貨を二百枚ほど差し上げる。好きに使ってくれ」
 公爵がそう言ったので、ザガードは布袋の持ってみた。
 かなり重いと感じた。これは相当の量が入っているなと思ったザガード。

 しかし、これほどの大金を持ていれば、流石に色々と面倒な事が起こると、奴隷であったザガードでも分かる。
 どうしたら良いかなと思っていると。
「それと君に訊きたい事があるのだが」
「何ですか?」
 使い慣れない敬語で話すザガード。
 それを聞いて苦笑する公爵。
「無理して敬語を使わなくて構わない。普通にしてくれ」
「は、はぁ」
「それで、君に訊きたいのだが、君は奴隷から解放されたのだろう?」
「はい」
「何処か行く当てはあるのかい?」
「ない、です」
「そうか。じゃあ、私の屋敷に来ないか?」
「はぁ?」
「その歳で魔物を討ち取る実力を見込んで、我が家の護衛団の一人にならないかい」
「でも、俺は奴隷だったのだから、問題が」
「はっはは、別に奴隷である事を恥じる事はない。この国には元は奴隷であったが、貴族や将軍になった者など沢山いる。それに今は『奴隷上がり』とか『撃剣相国』とか言われている筆頭宰相のジョヒョク=フォン=キムホジョンがいるじゃないか」
「は、はぁ、そうですね」
 闘奴であったザガードもその名は知っている。
 ハーフエルフの奴隷であったが、ザガードと同じく闘技場で百勝して、奴隷から解放されたジョヒョクは暫くは剣闘士として闘技場に居たが、その武勇を見込んださる伯爵令嬢が家に召し抱えた。
 そして、軍に推薦させた。
 ジョヒョクはメキメキと頭角を現した。
 そして、先代の国王がジョヒョクを宰相に任命した。
 ジョヒョクは更にその手腕を発揮した。数十年後、先代が御隠れになった後に、当代の国王が王になるのも力を尽くした。
 それにより、ジョヒョクは筆頭宰相『相国』に任命された。
 元は奴隷だった為『奴隷上がり』と言われる様になった。
 余談だが、宰相に任命された時に、誰かが雇った刺客に襲われた事がある。
 その時、偶々腰に剣を差していたので撃退できた。
 以来、如何なる時も腰に剣を差すようになったので『撃剣相国』と言われる様になった。
 
 ジョヒョクの話しを聞いても、ザガードはこの家の護衛団に入るか考えた。
 貴族に仕えれば肩身が狭いだろうと思う。
 だが、その分、身分に振り回される事はないと思えた。
 どうしたものかと考えていると、ふと視線を感じた。
 その視線は横から感じたので、ザガードは目だけ動かして視線を辿った。
 すると、来た時は気付かなかったが、今居る部屋の左側に小さな扉があった。
 その扉が少し開いていた。そして、その隙間から黒い瞳が瞬きせずにザガードを見ていた。

「………………」
 誰だが知らないがそんな熱い視線で見られると、ザガードは断りずらいと思った。
「で、どうだろうか? なに、そう悪い様にはしないつもりだ」
 公爵はそう尋ねてくる。
(行く当ても無いからな、それにこんな大金を持って外に出たら、直ぐに何か面倒ごとが起こりそうだしな)
 そう思うと、ザガードは答えは決まった。
「じゃあ、その暫くの間、ご厄介になってもいいですか」
「いやいや、構わないとも」
 公爵は嬉しそうに笑う。
「では、早速、この家の者達を紹介しよう」
 公爵は立ち上がる。
 ザガードも釣られて立ち上がった。
「まずは、私の家族を紹介した方が良いな。と言っても、今のこの屋敷に居るのは次女だけだ。長女と長男と妻は今、所用で外に出ているのでな。まずは、娘を紹介しよう。セイラ」
「はい。旦那様」
「すまないが。娘のエリナを呼んできてくれないか?」
「はい。少々お待ちを」
 一礼したセイラは、部屋を出ないで、隣の部屋に通じる扉の前に行く。
「? 何を」
 そう言うのと、同時に扉が開いた。
 すると、扉が開いた先に女の子が居た。
 その子は、この前、ザガードが助けた女の子であった。
「エリナ。何時の間にその部屋にいたんだ⁉」
「ご、ごめんなさい。おとうさま」
「まったく、気になるのは分かるが、そこまでするとはな」
 公爵は頭を振り、息を吐いた。
「まぁ良い。それよりもご挨拶しなさい」
「はい。おとうさま」
 そう言って、エリナという子は、ザガードの前に来た。
「お初にお目にかかります。わたしはリエリナ=フォン=ローレンベルトです。そこに居るオイゲン=フォン=ローレンベルトの次女でございます」
「これは、ご丁寧に」
 初めて丁寧な挨拶を受けたザガードは頭を下げた。
 そんなザガードを見て微笑んだ。 
 
 















 
 









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