悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第77話 薨去

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 翌日。

 プロルシア王国の国王薨去。
 王室広報局より正式に通達された。
 喪主は王妃が務める事となった。
 それについては問題なかったが、一つだけ大きな問題があった。
 
 後継者の事だ。
 国王は死ぬ前に跡継ぎの名前を挙げる事なく逝った。
 その為、誰が次の国王なのか決まっていなかった。
 序列で言えば皇太子のイヴァンがなるのが有力であった。
 しかし、同腹の弟であるライアンも候補として名が挙がっていた。
 同じ腹から生まれた兄弟ではあるが王位を争うという敵になった二人。

 重臣達もどちらが正統なのか日夜議論していたが、一向に結論に至らなかった。
 仕方が無く暫定的に王妃が玉座を預かる事となった。
 そして、国王の葬儀が恙なく行われ問題なく終えてから三日が経った。

 ローレンベルト公爵家の私邸。
 屋敷にある一室にてオイゲンとミハイルが話をしていた。
「此度の件。どう思いますか? 父上」
「ふむ。そうだな」
 オイゲンは顎に手を当てながら答えた。
「どう考えてもおかしいとしか言えないな」
「やはり、そう思いますか」
 オイゲンの言葉にミハイルも同意した。

 国王が死去して次の国王が即位するまで王妃が玉座を預かる。それは問題ない。
 問題なのは未だに次の国王が選出されない事だ。
 皇太子が居るのであれば、国王に選出される。それが古来からの習わし。
 なのに、重臣達の中にはライアンを次の王に挙げる者達が居た。
 それにより、重臣達の意見が纏まらなかった。
「これは何者かの裏工作と考えるべきか」
「でしょうね。ライアンの有力な支援者と言えばクラ―トゲシャブ家」
「ふむ。軍事方面では顔が利くからな」
「しかし、それだけではないようです。リウンシュハイム家の分家の者達も一枚噛んでいる様です」
「う~む。このまま行けば深刻な問題になるな」

「はい。ですが。仕方が無い事かと」
「確かに王妃の同腹の兄弟。それだけで政争の種になる。それは確かだ。しかし、兄弟で争うとは何ともやるせない事だ」
「あの王子は身を引くという事お知らぬからでしょう。義兄上も苦労しているようです」
「そうだな。しかし、これ以上長引くと」
「ええ、分かっています。ですので」
 ミハイルが話をしていると、ドアがノックされた。

「来たか。入れ」
『失礼します』
 ドアを開けると入って来たのはザガード一人であった。
「お呼びとの事で参りました」
「うむ。呼んだのは他でもない」
 オイゲンはミハイルを見る。
 ミハイルは頷いてザガードを見た。
「お前に頼みたい事があって呼んで来たのだ」
「頼みたい事ですか?」
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