悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第72話 何でこうなるのかな?

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「それで決闘を受ける事になったの?」
「はい・・・・・・」
 決闘場の観客席の一番前にある席にいるローザアリアにリエリナはどうしてこうなった経緯を話した。
 何時もの時間よりも遅れてやって来たローザアリアは教室に入るなり「決闘だ!」「王子とリエリナ嬢の決闘だ‼」とクラスメイト達が叫んだので、突然の事で困惑した。
 そして、クラスメイト達が観客席に座り騒いでいる中で理由を訊ねた。

 理由を聞いたローザアリアは何とも言えない顔であった。
 自分の事で口論になったので申し訳ないような口論から決闘に発展する短絡思考の婚約者に呆れるべきかリエリナの気の短さに窘めるべきかという複雑な心境であった。
 そんな気持ちとは裏腹に決闘場には審判のオベランがする事になった。
 オベランもローザアリアの後に教室に入ると騒がしいので一喝して事情を聞いた。
 これは決闘させた方が良いだろうと判断して、自分が審判を買って出た。
 何故、決闘を許可したのかは分からないが、少なくともホームルームの後はそのままオベランの授業だったのも理由の一つかも知れない。
「では、決闘に参加する者達は前へ」
 オベランがそう言うと待合所から出て来た。

 ザガードは制服の上に訓練用の革鎧を着用して腰には刃引きされた剣を差していた。
 反対側の待合所からもライアンがザガード同じ武装で出て来た。
 審判が居るので決闘は何時でも始められると思った。
 観客席の男子はザガードの応援し、女子はザガード半分ライアン半分という具合に分かれて応援していた。
「では、双方。準備は宜しいか? まずは決闘を行う前に宣誓を」
「お待ちを」
 オベランが言葉を続けようとしたら、ライアンが口を挟んだ。
「殿下。何か?」
「ふむ。一つ相談があるのだが」
「相談ですか?」
「そうだ。正直な話、わたしとザガードとでは実力は違い過ぎると思う」
「・・・・・・ふむ。それは確かに」
 オベランは否定しなかった。自分が受け持つクラスの生徒と授業を受け持つ生徒なので実力は十分に分かっていた。
「では、どうなさいますか?」
「其処でわたしはチームを組むという事で良いだろうか。少しでも戦力差の開きを無くしたいのだが」
 ライアンの提案にオベランは少し考えた。
 正直に言ってザガードとオベランが戦えば数分もしない内にライアンが負けると解っていたからだ。
 流石に自国の王子がそんな無様に負ける姿を同級生に見せるのは問題だと思う。
 だが、ザガードに本気を出さないで負けろというのも教師としてのプライドが許さなかった。
「・・・・・・リエリナ嬢」
 熟考した結果。此処はリエリナに聞く事にした。
「はい」
「ライアン王子の提案を受け入れますか?」
「良いですよ」
 リエリナは即答した。
 その早い返事に皆面を喰らった。

「良いのですか?」
「ええ、構いません」
 そう言ってリエリナはザガードを見る。
「いけるわね?」
「ご命令に従います」
 リエリナの問いにザガードは一礼した。
 それを見て笑うリエリナ
「ですが。先生。向こうの提案を聞くのであれば、こちらも提案しても宜しいですか?」
「容認できるのであれば」
「では、ザガード用の訓練用に武器を持って来ても宜しいですか?」
「訓練用ですか。それは」
「勿論。ちゃんと刃引きされていますので大丈夫です」
「・・・・・・ふむ。分かりました。その武器を持ってくるのに時間はどれくらい掛かりますか?」
「二十分あれば」
「では、決闘は二十分後という事で」
 オベランの言葉を聞いてライアンは喜んだ。
 流石に即席チームで何の作戦を立てる事が出来ないままで決闘をするのは無謀だと分かっていたからだ。
「承知した。では二十分後に」
 ライアンは待合所に戻った。
 チームメンバーを呼びに行くのか、それともチームメンバーは既に居るのか分からないが、ザガードも待合所に戻り御者に屋敷に戻って自分用の訓練武器を持ってくるように頼むためだ。
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