63 / 88
第63話 ご家族が全員集合するとは珍しいな
しおりを挟む
止血をしたザガードは急いでリエリナの下に戻る。
ザガードが急いで戻ったお蔭で、何とかリエリナがトイレを出る少しまでに戻って来れた。
「・・・・・・何かあった?」
「いえ、羽虫が飛んでいたので追い払った程度です」
「そう。・・・・・・うん? その指に巻かれた物は?」
リエリナはザガードの小指を見て訊ねる。
「ああ、これは羽虫を追い払う時に謝って傷をつけてしまいまして、其処を通りかかったローザアリア様がこの布をくれまして止血に使いました」
「ふ~ん。そう」
リエリナはちょっと不満そうな顔をした。
「? どうかしましたか?」
「別に」
そう言いながらも何故か不機嫌な雰囲気を出すリエリナ。
ザガードは何で不機嫌になったのか分からないままリエリナの後を付いて行った。
学園の授業が全て終わり、今日は部活がないという事で屋敷に戻るザガード達。
馬車に乗る頃には、機嫌を直したリエリナ。
機嫌よくザガードと話をした。
そう話をしていたら、屋敷についた。
ザガードの手を借りて降りたリエリナが地面に降りると、珍しい事に玄関前にセイラが立っていた。
「お帰りさいあませ。お嬢様。ザガード」
「ええ、今帰ったわ。何かあったの?」
「旦那様が書斎でお待ちです。ご家族の皆様一緒におられます」
「まぁ、お兄様も?」
リエリナがそう訊ねるとセイラは頷いた。
「分かったわ。じゃあ、ザガード。鞄を部屋に置いて来て」
「畏まりました」
リエリナは鞄をザガードを渡すと、セイラと共に書斎へと向かった。
(普段は領地におられるミハイル様が館に来るとは珍しいな)
オイゲンとコウリーンの間に最初に出来た子のミハイル。
二人の血筋を引いたせいか、理知的で貴公子然とした男性だった。
性格も冷静沈着だが家族思いである。
ザガードの見立てでも武の方のからきしだが、智の方では並の者では逆立ちしても敵わない智謀を持っている。
ミハイルもザガードの事は目に掛けているようで何かと面倒を見ていた。
ザガードがリエリナの部屋に鞄を置き、自室に戻ると小指に巻かれていた布を解いた。
もう傷は完全に塞がっていた。
これなら大丈夫だろうと思う反面、この布をどうするべきか考えた。
もう必要はない。かと言って、この布の持ち主であるローザアリアに血の付いたこの布を返すなどどう考えてもしてはならない。
であれば、捨てるべきなのだろうが。ザガードは。
「・・・・・・此処に入れようか」
机の物入れの中にその布を仕舞った。
何故か捨てるのが勿体ないと感じたからだ。
「・・・・・身体が鈍っているから。少し鍛練するか」
ザガードはそう言って部屋を出て屋敷にある訓練場へと足を伸ばした。
ザガードが急いで戻ったお蔭で、何とかリエリナがトイレを出る少しまでに戻って来れた。
「・・・・・・何かあった?」
「いえ、羽虫が飛んでいたので追い払った程度です」
「そう。・・・・・・うん? その指に巻かれた物は?」
リエリナはザガードの小指を見て訊ねる。
「ああ、これは羽虫を追い払う時に謝って傷をつけてしまいまして、其処を通りかかったローザアリア様がこの布をくれまして止血に使いました」
「ふ~ん。そう」
リエリナはちょっと不満そうな顔をした。
「? どうかしましたか?」
「別に」
そう言いながらも何故か不機嫌な雰囲気を出すリエリナ。
ザガードは何で不機嫌になったのか分からないままリエリナの後を付いて行った。
学園の授業が全て終わり、今日は部活がないという事で屋敷に戻るザガード達。
馬車に乗る頃には、機嫌を直したリエリナ。
機嫌よくザガードと話をした。
そう話をしていたら、屋敷についた。
ザガードの手を借りて降りたリエリナが地面に降りると、珍しい事に玄関前にセイラが立っていた。
「お帰りさいあませ。お嬢様。ザガード」
「ええ、今帰ったわ。何かあったの?」
「旦那様が書斎でお待ちです。ご家族の皆様一緒におられます」
「まぁ、お兄様も?」
リエリナがそう訊ねるとセイラは頷いた。
「分かったわ。じゃあ、ザガード。鞄を部屋に置いて来て」
「畏まりました」
リエリナは鞄をザガードを渡すと、セイラと共に書斎へと向かった。
(普段は領地におられるミハイル様が館に来るとは珍しいな)
オイゲンとコウリーンの間に最初に出来た子のミハイル。
二人の血筋を引いたせいか、理知的で貴公子然とした男性だった。
性格も冷静沈着だが家族思いである。
ザガードの見立てでも武の方のからきしだが、智の方では並の者では逆立ちしても敵わない智謀を持っている。
ミハイルもザガードの事は目に掛けているようで何かと面倒を見ていた。
ザガードがリエリナの部屋に鞄を置き、自室に戻ると小指に巻かれていた布を解いた。
もう傷は完全に塞がっていた。
これなら大丈夫だろうと思う反面、この布をどうするべきか考えた。
もう必要はない。かと言って、この布の持ち主であるローザアリアに血の付いたこの布を返すなどどう考えてもしてはならない。
であれば、捨てるべきなのだろうが。ザガードは。
「・・・・・・此処に入れようか」
机の物入れの中にその布を仕舞った。
何故か捨てるのが勿体ないと感じたからだ。
「・・・・・身体が鈍っているから。少し鍛練するか」
ザガードはそう言って部屋を出て屋敷にある訓練場へと足を伸ばした。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。


妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる