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第57話 予定などないと言えば良いのに
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声が聞こえた方に向かうザガード達。
其処はあまり人が通らない所で人目を避けるには格好の所であった。
ザガード達が其処に行くと、カトリーヌが男子生徒達に囲まれていた。
「あの者達の顔を何処かで見覚えがあるような気がするのですが?」
「ああ、多分。リウンシュハイム家の者達ね。この前、ライアン王子達に絡んでいた人達ね」
「ですよね」
ザガードは何とも言えない顔をした。
その家の者達がどうして、カトリーヌに絡んでいるのか分からなかったからだ。
なので、まずは話に聞く事にした。
幸いカトリーヌ達はザガード達に気付いた様子は無いので、本音で話すだろう。
「だから、わたしは別に殿下を誑かせてはいません。学友として親しくしているだけですっ」
「それにしては、随分と親しいではないか」
「そうだ。大方、色目でも使ったんだろう?」
「違いますっ」
「まぁ、そんな事はどうでも良い。先程も言ったようにお前に頼みがある。殿下に我らを紹介して頂きたいのだよ」
「何でわたしが」
「殿下のお気に入りの紹介であれば、殿下を我らを無下にしないからだ」
「先程からお断りしますと言っている筈ですが?」
カトリーヌは男達に囲まれた状態でも気丈に振る舞っていた。
それを見ても男達は口元に笑みは消えなかった。
「ふふん。良いのか? わたし達の家は本家と違い分家ではあるが。市場の流通に係わる事が出来るのだぞ?」
「それが?」
「お前の家の稼業を廃業させる事も出来るのだぞ?」
「っ⁉」
カトリーヌは驚愕の表情を浮かべた。
「お前の家は木材を売っている家であったな。だが、それも市場に流通出来るから財を成せるのだぞ」
「つまり、わたし達がお前の家の木材を買わないお達しを出せば、どうなるか分かるだろう?」
「ひ、卑怯よ‼」
「ふん。そんなの負け犬の遠吠えにしからならないぞ」
「どうする? お前の答え次第で家が傾くかどうか決まるぞ」
カトリーヌは顔を顰めるが反対に男達はニヤニヤと嗤っていた。
「呆れた人達ね」
リエリナは何処からか出した羽根扇子で手の平を叩いた。
その音でカトリーヌ達はリエリナ達がすぐ傍に居る事に気付いた。
「こ、これはリエリナ嬢」
「御機嫌麗しゅうございます」
リエリナに頭を下げる男達。
カトリーヌも流れで頭を下げた。
リエリナは眉間に皺を寄せながら男達を睥睨する。
「この前は殿下の前でカトリーヌ様を貶めておいて、今度は殿下と親しくなる為に実家の稼業を傾かせない様に脅すとは見下げ果てた心根だこと」
話を聞いていた事を知られ男達は顔を青くさせる。
「同じ貴族として恥ずかしいわ。特別に矯正してあげるわっ」
そう言ってリエリナは嵌めている手袋を男の一人の顔に投げつけた。
男は思わずその手袋を手に取った。それを見てリエリナは笑みを浮かべた。
「決闘を受諾するという事で良いわね?」
リエリナの言葉を聞いて、男達はしまったという顔をした。
「特別にわたしの方は一人で貴方達全員を相手にしてげるわ」
「・・・・・・リエリナ嬢。そちらが出す相手と言うのは?」
「勿論。ザガード」
「はっ」
話を聞いていて、多分こうなるだろうなと思いつつ返事をするザガード。
「決闘の代理人はこのザガードがします。貴方達は全員で良いわよ」
「・・・・・・了解した」
男達は一瞬顔を見合わせたが、相手が一人だと知り大丈夫だろうと思いその決闘の受ける事にした。
そして、今に至る。
(うちの家とは何の関係もない家の決闘の代理人をするとはな。何でこうなったのかな?)
ザガードは溜め息を吐いた。
教練場の観覧席にはリエリナとカトリーヌが居た。
「あの、リエリナ様」
「何かしら?」
「良かったのですか? 今日は予定があると言っていた筈ですが?」
「・・・・・・ほっほほほ、何をおっしゃるの困っている人を助けるのは高貴なる者の義務よ」
一瞬嘘をついていた事を忘れていたリエリナは適当な事を言って誤魔化した。
「あ、ありがとうございます」
リエリナの言葉を聞いて感激するカトリーヌ。
それを聞いたザガードは内心、また適当な事を言ってと思った。
其処はあまり人が通らない所で人目を避けるには格好の所であった。
ザガード達が其処に行くと、カトリーヌが男子生徒達に囲まれていた。
「あの者達の顔を何処かで見覚えがあるような気がするのですが?」
「ああ、多分。リウンシュハイム家の者達ね。この前、ライアン王子達に絡んでいた人達ね」
「ですよね」
ザガードは何とも言えない顔をした。
その家の者達がどうして、カトリーヌに絡んでいるのか分からなかったからだ。
なので、まずは話に聞く事にした。
幸いカトリーヌ達はザガード達に気付いた様子は無いので、本音で話すだろう。
「だから、わたしは別に殿下を誑かせてはいません。学友として親しくしているだけですっ」
「それにしては、随分と親しいではないか」
「そうだ。大方、色目でも使ったんだろう?」
「違いますっ」
「まぁ、そんな事はどうでも良い。先程も言ったようにお前に頼みがある。殿下に我らを紹介して頂きたいのだよ」
「何でわたしが」
「殿下のお気に入りの紹介であれば、殿下を我らを無下にしないからだ」
「先程からお断りしますと言っている筈ですが?」
カトリーヌは男達に囲まれた状態でも気丈に振る舞っていた。
それを見ても男達は口元に笑みは消えなかった。
「ふふん。良いのか? わたし達の家は本家と違い分家ではあるが。市場の流通に係わる事が出来るのだぞ?」
「それが?」
「お前の家の稼業を廃業させる事も出来るのだぞ?」
「っ⁉」
カトリーヌは驚愕の表情を浮かべた。
「お前の家は木材を売っている家であったな。だが、それも市場に流通出来るから財を成せるのだぞ」
「つまり、わたし達がお前の家の木材を買わないお達しを出せば、どうなるか分かるだろう?」
「ひ、卑怯よ‼」
「ふん。そんなの負け犬の遠吠えにしからならないぞ」
「どうする? お前の答え次第で家が傾くかどうか決まるぞ」
カトリーヌは顔を顰めるが反対に男達はニヤニヤと嗤っていた。
「呆れた人達ね」
リエリナは何処からか出した羽根扇子で手の平を叩いた。
その音でカトリーヌ達はリエリナ達がすぐ傍に居る事に気付いた。
「こ、これはリエリナ嬢」
「御機嫌麗しゅうございます」
リエリナに頭を下げる男達。
カトリーヌも流れで頭を下げた。
リエリナは眉間に皺を寄せながら男達を睥睨する。
「この前は殿下の前でカトリーヌ様を貶めておいて、今度は殿下と親しくなる為に実家の稼業を傾かせない様に脅すとは見下げ果てた心根だこと」
話を聞いていた事を知られ男達は顔を青くさせる。
「同じ貴族として恥ずかしいわ。特別に矯正してあげるわっ」
そう言ってリエリナは嵌めている手袋を男の一人の顔に投げつけた。
男は思わずその手袋を手に取った。それを見てリエリナは笑みを浮かべた。
「決闘を受諾するという事で良いわね?」
リエリナの言葉を聞いて、男達はしまったという顔をした。
「特別にわたしの方は一人で貴方達全員を相手にしてげるわ」
「・・・・・・リエリナ嬢。そちらが出す相手と言うのは?」
「勿論。ザガード」
「はっ」
話を聞いていて、多分こうなるだろうなと思いつつ返事をするザガード。
「決闘の代理人はこのザガードがします。貴方達は全員で良いわよ」
「・・・・・・了解した」
男達は一瞬顔を見合わせたが、相手が一人だと知り大丈夫だろうと思いその決闘の受ける事にした。
そして、今に至る。
(うちの家とは何の関係もない家の決闘の代理人をするとはな。何でこうなったのかな?)
ザガードは溜め息を吐いた。
教練場の観覧席にはリエリナとカトリーヌが居た。
「あの、リエリナ様」
「何かしら?」
「良かったのですか? 今日は予定があると言っていた筈ですが?」
「・・・・・・ほっほほほ、何をおっしゃるの困っている人を助けるのは高貴なる者の義務よ」
一瞬嘘をついていた事を忘れていたリエリナは適当な事を言って誤魔化した。
「あ、ありがとうございます」
リエリナの言葉を聞いて感激するカトリーヌ。
それを聞いたザガードは内心、また適当な事を言ってと思った。
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