悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

文字の大きさ
上 下
51 / 88

第51話 それはどうなのだろうか

しおりを挟む
 シオーネと話した数日後。
 相変わらずカトリーヌの苛めは止まる事は無かった。
 ザガードもクラスが違うので止める事が出来ないので、内心忸怩たる思いであった。
 あれだけ言っても止まらないのであれば、もうローザアリアが直接止めろと言わない限り止まらないだろうと思われた。
 
 しかし、ローザアリアがは直接言って止める事はしなかった。
「何故、ローザアリア様は止めないでしょうね」
 ザガードは不思議に思いリエリナに訊ねた。
「簡単な事よ。もし、止めたら後始末が大変だからよ」
「大変ですか? 申し訳ありません。言葉の意味がよく分からないのですが」
「そうね。・・・・・・もし、ここでローザアリア様がカトリーヌ様の苛めの主犯を止める様に言ったとするわ。そうなったらどうなると思う?」
「万事解決では?」
 
 ザガードがそう言うと、リエリナは首を横に振る。
「もし、そんな事になったら、カトリーヌ様を苛めた人達に何らかの罰を与えないと駄目になるわ」
「何故ですか?」
「シオーネ様が止める様に言ったのよ。その時点でもうローザアリア様が止める様に言った筈よ。それなのにやめなかったのだから、流石に罰を与えないと示しがつかないわよ」
「示しですか。確かにそうですね」
 ローザアリアが直接言えば、流石にカトリーヌを苛めていた者だけではなくその者の家と手を貸した者達も同罪と言えた。
 
 幾ら、やってはいけない事をしたカトリーヌを気に入らないから苛めていたからと言って、その者の家まで罰を与えるのは少々酷と言えるだろう。
「その者だけ罰するというのは駄目なのですか?」
「カトリーヌ様がライアン王子に気に入られているからね。じゃないと、ライアン王子が文句をつけるでしょうね。〝罰が甘い〟とか言ってね」
 リエリナにそう言われてザガードは何も言えなかった。
 何となくだが、あの王子ならそう言うのでは思えたからだ。
「イヴァン義兄上は温和な性格だけど、ライアン王子は直情的で凝り固まった価値観があるから、何かしらしないと何かしら問題を起こすでしょうね」
 リエリナがそう断言するのを聞いて、ザガードは不吉な予感をしていた。


 そして、その予感が的中したのか、ザガード達の前方に人だかりが出来ていた。
「何かあったのかしら?」
「さぁ」
 リエリナと話をしていると。
「いい加減に止めろ。ローザアリアっ‼」
 男の怒鳴り声で『ローザアリア』と呼ぶ声を聞こえて、リエリナと顔を見合わせるザガート。
 そして、ザガード達は人だかりを避けながら人だかりの中心部に向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

下げ渡された婚約者

相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。 しかしある日、第一王子である兄が言った。 「ルイーザとの婚約を破棄する」 愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。 「あのルイーザが受け入れたのか?」 「代わりの婿を用意するならという条件付きで」 「代わり?」 「お前だ、アルフレッド!」 おさがりの婚約者なんて聞いてない! しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。 アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。 「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」 「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...