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第45話 微笑ましい
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「へぇ、そんな事になっているのね」
「詳しくは分からないけど、恐らくビースト・クォーターが獣化する影響の名残みたいなものじゃないかしら?」
「日常生活には問題ないのでしょう? だったら、いいんじゃない」
「ええ、だからわたしも父様達も特に気にしてないわ」
シーリアの屋敷に通され、そのままシーリアの部屋に案内されたザガード達。
そして、二人は茶を飲み、リエリナがザガードがこうなっている経緯を話した。
「ねぇ、ザガード。その耳も尻尾は動くの?」
「はい。動かせますよ」
そう言って、ザガードは耳とピコピコと、尻尾は左右に揺らした。
「ふ~ん。動かせるのね」
興味深そうにザガードの耳と尻尾を見るシーリア。
シーリアの屋敷には、獣人の使用人もいるのだが、ザガードみたいに人間寄りではなく、獣寄りの姿なので、人間の姿で耳と尻尾を生やしているザガードは新鮮なのだろう。
ザガードも久しぶりに見るシーリアを見て、綺麗になったなと内心で思った。
凛々しい顔立ち。切れ長の目に空の様に青い瞳。その瞳と同じ色の髪は腰まで流していた。
身長は女性からしたら高身長。スレンダーの体型だが、女性の象徴もなかなかに大きく育っている。
腰は柳の様に細く、尻もキュッと締まっていた。
「もう、リア。久しぶりに会いに来た友達よりも、その従者の方が気になるの? 悲しいわ。やっぱり、女の友情は男人の前では霞の様に儚いものなのね」
ハンカチを出して、目元に当てながら、ヨヨヨっと泣く真似をするリエリナ。
「もう、拗ねないでよ。リナ。悪かったわよ」
泣く真似とは言え、友人にそんな事をさせるのは悪いと思ったのか謝るシーリア。
「ふふ、そうやってちゃんと謝ってくれるから、大好きですよ。リア」
リエリナはニッコリと笑う。
その笑顔を見て頬を膨らませるシーリア。
(本当に仲が良いな。この二人は)
微笑ましい会話を聞きながら、ザガードはほっこりしていた。
普通の令嬢の茶会は、誰かの醜聞や自分の自慢話などするものだ。
だが、この二人は楽しく茶飲みながら話をしていた。
近況報告や身近にあった楽しい話などを面白おかしく話している姿を見ていると、仲が良いのだなという事がよく分かる。
凛々しい見た目に反して、直情的で正義感が強いシーリア。
大人しそうな見た目で、実は腹黒く計算高いリエリナ。
似てないからこそ、この二人は仲が良いのだろう思うザガード。
「ああ、そうだわ。ザガード。喉は渇いた?」
「いえ、わたしは」
「突っ立ているだけでも、喉も乾くでしょう。今、貴方の分の茶を淹れてあげる」
シーリアはザガードに分を淹れようしてくれたので、ザガードは要らないと言おうとしたが、リエリナから視線を感じた。
ザガードは首を向けると、リエリナは微笑んだ。
(好意なのだから受けなさい)
そういう風に言っている様な笑みであった。
なので、ザガードは茶を飲む事にした。
「さぁ、どうぞ」
「頂戴します」
ザガードは一言言って、まだ湯気立つティーカップを手に取り茶を喉に流し込んだ。
その瞬間。耳と尻尾がピーンと立った。
(熱かったのね)
(ちょっと熱すぎたかしら?)
ザガードの反応を見て、リエリナ達はそう思った。
「どう、茶の味は?」
シーリアが訊ねると、ザガードはカップから口を離して。
「とても、美味しかったです。適温でするりと喉に流し込めました」
「熱くなかった?」
「いえ、大丈夫です」
ザガードは顔色変えずに答えたが、身体は正直であった。
頭頂部から生えている耳が、シーリアの言葉に同意するかのように、ピコピコと動いた。
それを見て、二人は微笑んだ。
「詳しくは分からないけど、恐らくビースト・クォーターが獣化する影響の名残みたいなものじゃないかしら?」
「日常生活には問題ないのでしょう? だったら、いいんじゃない」
「ええ、だからわたしも父様達も特に気にしてないわ」
シーリアの屋敷に通され、そのままシーリアの部屋に案内されたザガード達。
そして、二人は茶を飲み、リエリナがザガードがこうなっている経緯を話した。
「ねぇ、ザガード。その耳も尻尾は動くの?」
「はい。動かせますよ」
そう言って、ザガードは耳とピコピコと、尻尾は左右に揺らした。
「ふ~ん。動かせるのね」
興味深そうにザガードの耳と尻尾を見るシーリア。
シーリアの屋敷には、獣人の使用人もいるのだが、ザガードみたいに人間寄りではなく、獣寄りの姿なので、人間の姿で耳と尻尾を生やしているザガードは新鮮なのだろう。
ザガードも久しぶりに見るシーリアを見て、綺麗になったなと内心で思った。
凛々しい顔立ち。切れ長の目に空の様に青い瞳。その瞳と同じ色の髪は腰まで流していた。
身長は女性からしたら高身長。スレンダーの体型だが、女性の象徴もなかなかに大きく育っている。
腰は柳の様に細く、尻もキュッと締まっていた。
「もう、リア。久しぶりに会いに来た友達よりも、その従者の方が気になるの? 悲しいわ。やっぱり、女の友情は男人の前では霞の様に儚いものなのね」
ハンカチを出して、目元に当てながら、ヨヨヨっと泣く真似をするリエリナ。
「もう、拗ねないでよ。リナ。悪かったわよ」
泣く真似とは言え、友人にそんな事をさせるのは悪いと思ったのか謝るシーリア。
「ふふ、そうやってちゃんと謝ってくれるから、大好きですよ。リア」
リエリナはニッコリと笑う。
その笑顔を見て頬を膨らませるシーリア。
(本当に仲が良いな。この二人は)
微笑ましい会話を聞きながら、ザガードはほっこりしていた。
普通の令嬢の茶会は、誰かの醜聞や自分の自慢話などするものだ。
だが、この二人は楽しく茶飲みながら話をしていた。
近況報告や身近にあった楽しい話などを面白おかしく話している姿を見ていると、仲が良いのだなという事がよく分かる。
凛々しい見た目に反して、直情的で正義感が強いシーリア。
大人しそうな見た目で、実は腹黒く計算高いリエリナ。
似てないからこそ、この二人は仲が良いのだろう思うザガード。
「ああ、そうだわ。ザガード。喉は渇いた?」
「いえ、わたしは」
「突っ立ているだけでも、喉も乾くでしょう。今、貴方の分の茶を淹れてあげる」
シーリアはザガードに分を淹れようしてくれたので、ザガードは要らないと言おうとしたが、リエリナから視線を感じた。
ザガードは首を向けると、リエリナは微笑んだ。
(好意なのだから受けなさい)
そういう風に言っている様な笑みであった。
なので、ザガードは茶を飲む事にした。
「さぁ、どうぞ」
「頂戴します」
ザガードは一言言って、まだ湯気立つティーカップを手に取り茶を喉に流し込んだ。
その瞬間。耳と尻尾がピーンと立った。
(熱かったのね)
(ちょっと熱すぎたかしら?)
ザガードの反応を見て、リエリナ達はそう思った。
「どう、茶の味は?」
シーリアが訊ねると、ザガードはカップから口を離して。
「とても、美味しかったです。適温でするりと喉に流し込めました」
「熱くなかった?」
「いえ、大丈夫です」
ザガードは顔色変えずに答えたが、身体は正直であった。
頭頂部から生えている耳が、シーリアの言葉に同意するかのように、ピコピコと動いた。
それを見て、二人は微笑んだ。
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