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第44話 リエリナの供に
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ザガードは護衛をしつつ、それでいて礼服に選んだ。
尻尾穴がある服を選ばないといけないので、少し時間が掛かった。
選んだ服を身に通して、急いでエントランスホールに向かう。
ザガードがエントランスホールに着くと、既にリエリナは居た。
「遅れて申し訳ありませんっ」
ザガードはリエリナの前まで来て、平謝りした。
「別に期しなくても良いわよ。そんな姿になったんだから、服を選ぶのも時間が掛かっただろうし、着替えるのも大変だったでしょう」
「ですがっ」
「別に気にしなくても良いわ」
「はぁ」
ザガードは心底済まなそうな声を出す。
表情筋が固い所為か、全く顔には出ないザガード。
だが、今は獣人になっているからか。
頭頂部かた生やしている耳がぺたーん伏せており、尻尾も元気無さそうに下がっている。
謝る前までは、耳はピーンと天に向かって立っており、尻尾も元気よく立っていたので、本当に申し訳ないと覆っているのが分かる。
(か、可愛い。・・・・・普段から表情を変えないから、こういう反応が見えるのは良いわ)
無表情とは言わないが、表情筋が固いのか、クールな印象を抱かせるザガード。
なので、こういう反応が見えるのは分かりやすかった。
「朝食まだでしょう? わたしもまだだから、馬車の中で一緒に食べましょう」
リエリナはそう言って、手に持っているバスケットを見せた。
「いえ、自分は別に」
そう言いながらも、ザガードの尻尾が左右に動いていた。
「・・・・・・今日はベーコンとトマトとアボガドとレタスを挟んだ物と鶏肉で作ったハムを挟んだサンドイッチがあるわよ」
「自分の分は要りません。すべて、お嬢様がお食べ下さい」
そう言いながら、ザガードの尻尾は立って元気よく動いていた。
それを見て、リエリナは好きなんだと分かった。
「わたし一人だけ食べると味気ないから、一緒に食べましょう」
「ですが」
「良いから・・・ね。」
「・・・お嬢様がそういうのであれば」
ザガードは食べれて嬉しいのか、先程よりも激しく尻尾を振っていた。
ザガード達は馬車に乗り込み、朝食を食べ終えると、茶を飲んだ。
「そう言えば、今日はどなたの御屋敷に行くのですか?」
「今日はシーリアの所に行くわ」
「シーリア様の所ですか」
ザガードは茶を飲みながら、これから行く屋敷へと思いはせる。
シーリア=フォン=ドラゴニア。
ドラゴニア伯爵の一人娘。
シーリアの父親であるアースンはオイゲン古くからの友人でその関係で仲良くしている。
シーリアとリエリナは同い年だが、リエリナとは別の学校に行っている。
同い年という事で、二人の仲は良い。
リエリナの護衛をしているので、必然的にザガードとも顔見知りである。
「ごめんなさいね。本当は昨日、言うつもりだったのだけど、言うのを忘れていたわ」
「はぁ、そうですか・・・・・・」
昨日、散々追い駆け回して忘れたのでは?と思いながらも、ザガードは口には出さなかった。
言っても詮無き事だからだ。
その後、二人は、屋敷に着くまで茶を飲みながら他愛の無い話をしていた。
数時間後。
ドラゴニア伯爵の屋敷に着いた。
玄関前に着くと、先にザガードが降りてから、踏み台を出した。
「お嬢様。準備が出来ました」
『分かったわ』
ザガードが馬車のドアを開ける。
リエリナが身体を半分だけ出して、そこから手を伸ばす。
ザガードはその手を取る。
リエリナは前に乗り出して、踏み台に足を掛けて、そのまま降りた。
地面に降りたのを見て、ザガードはリエリナの手を離した。
「・・・・・・じゃあ、行きましょうか」
「はっ」
リエリナは少し残念そうな顔したが、直ぐに微笑みながらザガードに言う。
リエリナが歩き出そうとしたら、玄関のドアが豪快な音を立てて開いた。
「久しぶりね。リナっ‼」
そう言って、ドアを開けた人物が両手を広げて走り出して、リエリナの元まで来た。
そして、リエリナを抱き締めた。
「久しぶりね。元気だった?」
「ええ、わたしは元気よ。リア」
リエリナも抱き締め返した。
二人は同い年なので、お互いを「リナ」「リア」と呼んでいた。
一頻り、再会を喜ぶと、シーリアは体を離して、ザガードを見る。
「ザガードも久しぶり・・・・・ね・・・・・・」
「ご無沙汰しております。シーリア様」
ザガードは頭を下げた。
それにより、頭から生えている耳と尻尾が良く見えた。
「あんた。どうしたの?」
シーリアは目をパチクリさせながら訊いてきた。
そんな親友の反応を見て、笑うリエリナ。
「ふふ、相変わらず顔に出るわね。リア」
「ちょっ、リナ。これはどういう事⁉」
心底分からないという顔をするシーリア。
「ふふふ、ちゃんと話すから、とりあえず屋敷に入りましょう」
「え、ええ・・・・・・」
チラリとザガードを見たが、直ぐにリエリナと一緒に屋敷に入って行った。
ザガードも当然の如く、その後に付いて行った。
尻尾穴がある服を選ばないといけないので、少し時間が掛かった。
選んだ服を身に通して、急いでエントランスホールに向かう。
ザガードがエントランスホールに着くと、既にリエリナは居た。
「遅れて申し訳ありませんっ」
ザガードはリエリナの前まで来て、平謝りした。
「別に期しなくても良いわよ。そんな姿になったんだから、服を選ぶのも時間が掛かっただろうし、着替えるのも大変だったでしょう」
「ですがっ」
「別に気にしなくても良いわ」
「はぁ」
ザガードは心底済まなそうな声を出す。
表情筋が固い所為か、全く顔には出ないザガード。
だが、今は獣人になっているからか。
頭頂部かた生やしている耳がぺたーん伏せており、尻尾も元気無さそうに下がっている。
謝る前までは、耳はピーンと天に向かって立っており、尻尾も元気よく立っていたので、本当に申し訳ないと覆っているのが分かる。
(か、可愛い。・・・・・普段から表情を変えないから、こういう反応が見えるのは良いわ)
無表情とは言わないが、表情筋が固いのか、クールな印象を抱かせるザガード。
なので、こういう反応が見えるのは分かりやすかった。
「朝食まだでしょう? わたしもまだだから、馬車の中で一緒に食べましょう」
リエリナはそう言って、手に持っているバスケットを見せた。
「いえ、自分は別に」
そう言いながらも、ザガードの尻尾が左右に動いていた。
「・・・・・・今日はベーコンとトマトとアボガドとレタスを挟んだ物と鶏肉で作ったハムを挟んだサンドイッチがあるわよ」
「自分の分は要りません。すべて、お嬢様がお食べ下さい」
そう言いながら、ザガードの尻尾は立って元気よく動いていた。
それを見て、リエリナは好きなんだと分かった。
「わたし一人だけ食べると味気ないから、一緒に食べましょう」
「ですが」
「良いから・・・ね。」
「・・・お嬢様がそういうのであれば」
ザガードは食べれて嬉しいのか、先程よりも激しく尻尾を振っていた。
ザガード達は馬車に乗り込み、朝食を食べ終えると、茶を飲んだ。
「そう言えば、今日はどなたの御屋敷に行くのですか?」
「今日はシーリアの所に行くわ」
「シーリア様の所ですか」
ザガードは茶を飲みながら、これから行く屋敷へと思いはせる。
シーリア=フォン=ドラゴニア。
ドラゴニア伯爵の一人娘。
シーリアの父親であるアースンはオイゲン古くからの友人でその関係で仲良くしている。
シーリアとリエリナは同い年だが、リエリナとは別の学校に行っている。
同い年という事で、二人の仲は良い。
リエリナの護衛をしているので、必然的にザガードとも顔見知りである。
「ごめんなさいね。本当は昨日、言うつもりだったのだけど、言うのを忘れていたわ」
「はぁ、そうですか・・・・・・」
昨日、散々追い駆け回して忘れたのでは?と思いながらも、ザガードは口には出さなかった。
言っても詮無き事だからだ。
その後、二人は、屋敷に着くまで茶を飲みながら他愛の無い話をしていた。
数時間後。
ドラゴニア伯爵の屋敷に着いた。
玄関前に着くと、先にザガードが降りてから、踏み台を出した。
「お嬢様。準備が出来ました」
『分かったわ』
ザガードが馬車のドアを開ける。
リエリナが身体を半分だけ出して、そこから手を伸ばす。
ザガードはその手を取る。
リエリナは前に乗り出して、踏み台に足を掛けて、そのまま降りた。
地面に降りたのを見て、ザガードはリエリナの手を離した。
「・・・・・・じゃあ、行きましょうか」
「はっ」
リエリナは少し残念そうな顔したが、直ぐに微笑みながらザガードに言う。
リエリナが歩き出そうとしたら、玄関のドアが豪快な音を立てて開いた。
「久しぶりね。リナっ‼」
そう言って、ドアを開けた人物が両手を広げて走り出して、リエリナの元まで来た。
そして、リエリナを抱き締めた。
「久しぶりね。元気だった?」
「ええ、わたしは元気よ。リア」
リエリナも抱き締め返した。
二人は同い年なので、お互いを「リナ」「リア」と呼んでいた。
一頻り、再会を喜ぶと、シーリアは体を離して、ザガードを見る。
「ザガードも久しぶり・・・・・ね・・・・・・」
「ご無沙汰しております。シーリア様」
ザガードは頭を下げた。
それにより、頭から生えている耳と尻尾が良く見えた。
「あんた。どうしたの?」
シーリアは目をパチクリさせながら訊いてきた。
そんな親友の反応を見て、笑うリエリナ。
「ふふ、相変わらず顔に出るわね。リア」
「ちょっ、リナ。これはどういう事⁉」
心底分からないという顔をするシーリア。
「ふふふ、ちゃんと話すから、とりあえず屋敷に入りましょう」
「え、ええ・・・・・・」
チラリとザガードを見たが、直ぐにリエリナと一緒に屋敷に入って行った。
ザガードも当然の如く、その後に付いて行った。
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