悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

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第34話 放課後

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 キンコンカーンコーン。

 鐘の音が響いた。
「では、今日は此処まで。クラス委員。号令」
「起立。礼」
 フィオナが号令が終ると、今日の最後の授業の先生が教室から出て行った。

 先生が居なくなったことで、教室の空気が一気に緩んだ。
 オベランが来るまで雑談に興じるクラスメート達。
「お疲れ様でした。お嬢様」
「貴方もね」
 ザガードが声を掛けると、リエリナは前髪を弄りながら答えた。

 別に風が吹いて髪型が乱れた訳ではなく、ただ、前髪を弄っていた。
 ザガードはリエリナが前髪を弄るのを見て、首を傾げた。
(はて? お嬢様が前髪を弄るのは、何か面白くない事がある時にする癖だったが、この後、何かあったか?)
 ザガードは今日の予定を思い出す。
「・・・・・・ああ、そうか」
 今日の予定を思い出したザガードは、何でリエリナがどうして前髪を弄るのか分かった。
「そんなに行きたかったですか? 部活」
「ええ。つまらない社交パーティーに出るよりも遥かに」

 今夜、公爵家と縁がある貴族がパーティ―を行う。
 本来はリエリナの父が出るのだが、その日は用事があるので出席できなかった。
 では、代わりに母親のコウリーン出ても良いのだが、そのコウリーンも用事があるので出席できない。
 其処でリエリナと姉のゼノミティアが代理に出席する事となった。

 パーティーに出席するという事で、部に行けなくなった。
 その事については、昼休みの時に部長のチゼッタに言ってあるので問題はない。
「お嬢様。不貞腐れるのは止めた方が良いと思いますよ」
「・・・・・・ふん。別に良いでしょう」
「誰が見ているか分からないのです。そのような顔をされたら、何事かと思われますよ」
「別に良いわよ。そんなに気にする事ではないでしょう」
「そうかもしれませんが」
 ザガードはどうしたら機嫌を直してくれるかなと思っていると。

 教室のドアが開いて、オベランが入って来た。
「はい。ホームルームを始めますよ。立っている人は座って下さいね」
 オベランにそう言われて、立って話をしていた級友達は自分の席に座っていった。
 全員が座るのを確認してから、オベランは口を開いた。
「今日の報告事項ですが。一週間後なんですが、今日の内に言っておきますね。一週間後。一年生だけレクリエーションとして、一泊二日の遠足に行きます」
「「「遠足⁉ やったあああああっ‼」」」
 オベランの言葉を聞いて、殆どのクラスメート達が手を挙げて喜んだ。
「はい。静かに、説明が出来ないので」
 オベランがそう言うと、騒いでいたクラスメート達は一瞬で静かになった。

「場所については、学園近くにある宿泊施設に行きます。学園設立時からお世話になっている所ですので、皆さん行儀よくしてくださいね」
「先生。聞いても良いですか?」
 男子のクラス委員であるマクスインが手を挙げた。
「はい。マクスイン君」
「その宿泊施設の名前を教えて頂けるでしょうか? 後、その施設はは何処にあるのか教えて頂けますか?」
「今、それを言いますので、ちょっと待ちなさい。で、その施設の名前ですが『アースランドホテル』です」
「ええ⁉ 『アースランドホテル』だって⁉」

 クラスメートの一人が驚きの声をあげた。
「知っているのか?」
「ああ、この国のホテルの中じゃあ、星一つを獲得している有名ホテルだぞ。プロルシア王国内ホテルランキングベスト百選の中でも上位に入るホテルだぞっ」
「良く知ってるな。お前」
「親戚がホテルしているから知っているんだ。ちなみに、その親戚が経営しているホテルは毎年、ランキングには入ってないから」
 微妙に身内の情報が入っているが、ザガード達が向かう宿泊施設がどんな所か分かった。

「おほん。ええ、来週にそのホテルに行きますので、各自準備は整えておくように。以上」
 オベランがマクスインを見る。
「起立。礼」
 オベランは教室から出て行くと、教室は賑やかになった。
 クラスメート達で宿泊するのが楽しみなのだろう。
「お嬢様。早く行きましょうか」
「そうね」
 そんな中で、ザガード達は静かに教室から出て行った。








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