悪役令嬢に恋した黒狼

正海広竜

文字の大きさ
上 下
34 / 88

第34話 放課後

しおりを挟む
 キンコンカーンコーン。

 鐘の音が響いた。
「では、今日は此処まで。クラス委員。号令」
「起立。礼」
 フィオナが号令が終ると、今日の最後の授業の先生が教室から出て行った。

 先生が居なくなったことで、教室の空気が一気に緩んだ。
 オベランが来るまで雑談に興じるクラスメート達。
「お疲れ様でした。お嬢様」
「貴方もね」
 ザガードが声を掛けると、リエリナは前髪を弄りながら答えた。

 別に風が吹いて髪型が乱れた訳ではなく、ただ、前髪を弄っていた。
 ザガードはリエリナが前髪を弄るのを見て、首を傾げた。
(はて? お嬢様が前髪を弄るのは、何か面白くない事がある時にする癖だったが、この後、何かあったか?)
 ザガードは今日の予定を思い出す。
「・・・・・・ああ、そうか」
 今日の予定を思い出したザガードは、何でリエリナがどうして前髪を弄るのか分かった。
「そんなに行きたかったですか? 部活」
「ええ。つまらない社交パーティーに出るよりも遥かに」

 今夜、公爵家と縁がある貴族がパーティ―を行う。
 本来はリエリナの父が出るのだが、その日は用事があるので出席できなかった。
 では、代わりに母親のコウリーン出ても良いのだが、そのコウリーンも用事があるので出席できない。
 其処でリエリナと姉のゼノミティアが代理に出席する事となった。

 パーティーに出席するという事で、部に行けなくなった。
 その事については、昼休みの時に部長のチゼッタに言ってあるので問題はない。
「お嬢様。不貞腐れるのは止めた方が良いと思いますよ」
「・・・・・・ふん。別に良いでしょう」
「誰が見ているか分からないのです。そのような顔をされたら、何事かと思われますよ」
「別に良いわよ。そんなに気にする事ではないでしょう」
「そうかもしれませんが」
 ザガードはどうしたら機嫌を直してくれるかなと思っていると。

 教室のドアが開いて、オベランが入って来た。
「はい。ホームルームを始めますよ。立っている人は座って下さいね」
 オベランにそう言われて、立って話をしていた級友達は自分の席に座っていった。
 全員が座るのを確認してから、オベランは口を開いた。
「今日の報告事項ですが。一週間後なんですが、今日の内に言っておきますね。一週間後。一年生だけレクリエーションとして、一泊二日の遠足に行きます」
「「「遠足⁉ やったあああああっ‼」」」
 オベランの言葉を聞いて、殆どのクラスメート達が手を挙げて喜んだ。
「はい。静かに、説明が出来ないので」
 オベランがそう言うと、騒いでいたクラスメート達は一瞬で静かになった。

「場所については、学園近くにある宿泊施設に行きます。学園設立時からお世話になっている所ですので、皆さん行儀よくしてくださいね」
「先生。聞いても良いですか?」
 男子のクラス委員であるマクスインが手を挙げた。
「はい。マクスイン君」
「その宿泊施設の名前を教えて頂けるでしょうか? 後、その施設はは何処にあるのか教えて頂けますか?」
「今、それを言いますので、ちょっと待ちなさい。で、その施設の名前ですが『アースランドホテル』です」
「ええ⁉ 『アースランドホテル』だって⁉」

 クラスメートの一人が驚きの声をあげた。
「知っているのか?」
「ああ、この国のホテルの中じゃあ、星一つを獲得している有名ホテルだぞ。プロルシア王国内ホテルランキングベスト百選の中でも上位に入るホテルだぞっ」
「良く知ってるな。お前」
「親戚がホテルしているから知っているんだ。ちなみに、その親戚が経営しているホテルは毎年、ランキングには入ってないから」
 微妙に身内の情報が入っているが、ザガード達が向かう宿泊施設がどんな所か分かった。

「おほん。ええ、来週にそのホテルに行きますので、各自準備は整えておくように。以上」
 オベランがマクスインを見る。
「起立。礼」
 オベランは教室から出て行くと、教室は賑やかになった。
 クラスメート達で宿泊するのが楽しみなのだろう。
「お嬢様。早く行きましょうか」
「そうね」
 そんな中で、ザガード達は静かに教室から出て行った。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

処理中です...