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第30話 妙な縁が出来た
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「ありがとう。助かったわ」
カトリーヌはザガードに感謝を述べて立ち上がった。
そして、自分の制服に変な所が無いか確認しだした。
「……どこも変になっていないわね」
自分の制服を何処も変じゃない事が分かり、ホッとした。
「ええっと、失礼ですけど、貴方は?」
「これは、失礼いたしました。わたしはザガード=ヴォルデモートルクと申します」
「そうでしたか。わたしはカトリーヌ=フォン=トランバートリーです」
カトリーヌは頭を下げた。
「助かったわ。ザガードさん」
「いえ、わたしは大した事はしていません」
ザガードはカトリーヌが落ちて来た踊り場を見た。
特に何処か壊れていたり足を滑らせ物などが撒かれている様に見えなかった。
「どうして、踊り場から落ちて来たのか聞いても良いですか?」
「はい。階段を上がっていると、突然強い風が吹いて、その風の強さに足を滑らせて」
「成程」
室内で強い風が吹く事などあり得ない。
では、何故起こったのかと言うと。
「誰かが、風の魔法を使ってトランバートリー様に危害を加えたという事になりますね」
「でも、誰が」
「あら、そんなの簡単ではないですか」
ザガード達が話をしていると、話に割り込んできたリエリナ。
「お嬢様。それはどういう意味ですか?」
「分からないの? 風の魔法を使ったという事は、その術者はカトリーヌ様が見える所に居たという事になるわ。それはつまり」
リエリナはそこで言葉を区切って周りを見た。
「犯人は、この中に居るという事よ」
リエリナの言葉を聞いて、周りに居る人達は、雷に当たったかのような顔をした。
その言った本人はドヤ顔をしていた。
その顔を見てザガードは呆れていた。
(また、変な本の影響を受けたな?)
リエリナは本を読むのが好きなので、よく本を取り寄せてくる。
ジャンルについては、恋愛ものや娯楽ものから純文学や大衆文学など様々だ。
(そう言えば、最近は推理小説に嵌っていたな)
ザガードはリエリナが最近よく読んでいる小説を思い出した。
そして、よく「いつか、この小説に出て来る台詞を言ってみたいわね」と言っていた事を思い出した。
その小説を台詞を言えて、嬉しそうな顔をしているリエリナ。
この後は、リエリナが犯人を捜し出すだろう。
だが、ザガードは既に犯人は誰か分かっていた。
「この中で、風魔法が得意な者は前に出なさい。それだけでも、犯人が誰なのか絞れる・・・うん?」
言葉を言っている最中のリエリナの肩が叩かれた。
叩いたのは、ザガードであった。
「なに、ザガード。今、犯人を捜そうとしているのよ」
「お嬢様。あちらをご覧ください」
ザガードが天井の一角を指差した。
リエリナやカトリーヌやその場に居た生徒達が指差された先を見た。
其処には、全身を緑色の肌をして、肌色と同じ色の鳥の羽を持った小人が居た。
掌に乗れるサイズの小人は、ザガード達が見ている事に気付いて、赤い目を細めてケラケラと笑い出した。
そして、自分の周りに風を起こしたと思ったら消えた。
「・・・・・・あれって、風の精霊ね」
「はい。そして、風の精霊はその特性から、何処にでも入り込む事ができて、更に風の精霊達は悪戯好きと言う性格です。恐らくですが、トランバートリー様の身体を押した強い風を吹かせたのは」
「あの、風の精霊ね」
「その通りでございます」
ザガードは正解とばかりに頭を下げた。
「「「おおおっ⁉」」」
ザガードの推理を聞いて、皆、感嘆していた。
「むぅ、これが答えのようね」
リエリナは何処か不満そうな顔をしていた。
その顔を見て、ザガードは苦笑した。
(自分の推理を披露できなくなって不満なのだろうな)
ザガードはリエリナの顔を見て、そう感じ取った。
ザガードの推理を聞いて、周りの人達はもう話は終わったと分かったので離れて行った。
「はぁ、わたし達も教室に行きましょうか」
「そうですね」
リエリナが気持ちを切り替える為に、溜め息を吐いた。そして、ザガードと共に教室に向かおうとしたら。
「ああ、リエリナ様とザガードさん」
カトリーヌが二人を呼び止めた。
「助けてくれてありがとうございます。この御礼はいずれ」
「いえいえ、別に大した事はしていませんので」
「ですが」
「お気になさらずに。では、御機嫌よう」
リエリナが頭を下げで、カトリーヌのから離れて行く。
ザガードも一礼して、リエリナの後を追った。
カトリーヌから離れたザガード達は、教室に向かいながら周囲に誰も居ない事を確認した。
そして、誰も居ない事を確認して、話出した。
「先程の風の精霊だけど、どう思う?」
「わたしには何とも言えません」
リエリナの問い掛けに、ザガードは首を横に振る。
「風の精霊の殆どは悪戯好きなのは分かるわ。時には、人に危害になる悪戯をする事もあるわ。人間の考えと価値観を持たない精霊にはよくある事ね。でも」
リエリナは足を止めて、ザガードを見る。
「どうして、この校舎に風の精霊が居るのかしら? 偶々入って来て、それで偶々カトリーヌ様に悪戯をしたというのは偶然では言い切れない程の出来過ぎね」
「確かに、その通りです」
「あの時見た風の精霊は、精霊の中でも下級だったわ。という事は、精霊を呼び出す魔法を使って、誰かが故意にカトリーヌ様に危害を加えるとも考えられるわね」
「お嬢様。周りに誰も居ないとは言え、そのような考えを口に出すのは、些か不用心かと思います」
「大丈夫よ。だって」
リエリナはザガードの目を見る。
「貴方が居るじゃない。ザガード」
リエリナは断言した。
その目は、どんな事があっても、ザガードが居たら問題ないと言っているようだ。
「過分なお言葉です。お嬢様」
ザガードは頭を下げた。
「そうかしら」
微笑むリエリナ。
「まぁ、故意か偶然かどちらにしても、わたしに実害はないでしょうね」
「恐らくは、もしあれば」
ザガードはそれ以上、何も言わず胸を叩いた。
わたしにお任せを。
言葉に出さなくても、そう言っているのが分かった。
リエリナもそれを見て頷いた。
「さて、何時までもここで立ち話をしていると授業に遅れるわ。行きましょうか」
「はっ」
リエリナが歩き出した。そして、ザガードはその後を付いて行った。
カトリーヌはザガードに感謝を述べて立ち上がった。
そして、自分の制服に変な所が無いか確認しだした。
「……どこも変になっていないわね」
自分の制服を何処も変じゃない事が分かり、ホッとした。
「ええっと、失礼ですけど、貴方は?」
「これは、失礼いたしました。わたしはザガード=ヴォルデモートルクと申します」
「そうでしたか。わたしはカトリーヌ=フォン=トランバートリーです」
カトリーヌは頭を下げた。
「助かったわ。ザガードさん」
「いえ、わたしは大した事はしていません」
ザガードはカトリーヌが落ちて来た踊り場を見た。
特に何処か壊れていたり足を滑らせ物などが撒かれている様に見えなかった。
「どうして、踊り場から落ちて来たのか聞いても良いですか?」
「はい。階段を上がっていると、突然強い風が吹いて、その風の強さに足を滑らせて」
「成程」
室内で強い風が吹く事などあり得ない。
では、何故起こったのかと言うと。
「誰かが、風の魔法を使ってトランバートリー様に危害を加えたという事になりますね」
「でも、誰が」
「あら、そんなの簡単ではないですか」
ザガード達が話をしていると、話に割り込んできたリエリナ。
「お嬢様。それはどういう意味ですか?」
「分からないの? 風の魔法を使ったという事は、その術者はカトリーヌ様が見える所に居たという事になるわ。それはつまり」
リエリナはそこで言葉を区切って周りを見た。
「犯人は、この中に居るという事よ」
リエリナの言葉を聞いて、周りに居る人達は、雷に当たったかのような顔をした。
その言った本人はドヤ顔をしていた。
その顔を見てザガードは呆れていた。
(また、変な本の影響を受けたな?)
リエリナは本を読むのが好きなので、よく本を取り寄せてくる。
ジャンルについては、恋愛ものや娯楽ものから純文学や大衆文学など様々だ。
(そう言えば、最近は推理小説に嵌っていたな)
ザガードはリエリナが最近よく読んでいる小説を思い出した。
そして、よく「いつか、この小説に出て来る台詞を言ってみたいわね」と言っていた事を思い出した。
その小説を台詞を言えて、嬉しそうな顔をしているリエリナ。
この後は、リエリナが犯人を捜し出すだろう。
だが、ザガードは既に犯人は誰か分かっていた。
「この中で、風魔法が得意な者は前に出なさい。それだけでも、犯人が誰なのか絞れる・・・うん?」
言葉を言っている最中のリエリナの肩が叩かれた。
叩いたのは、ザガードであった。
「なに、ザガード。今、犯人を捜そうとしているのよ」
「お嬢様。あちらをご覧ください」
ザガードが天井の一角を指差した。
リエリナやカトリーヌやその場に居た生徒達が指差された先を見た。
其処には、全身を緑色の肌をして、肌色と同じ色の鳥の羽を持った小人が居た。
掌に乗れるサイズの小人は、ザガード達が見ている事に気付いて、赤い目を細めてケラケラと笑い出した。
そして、自分の周りに風を起こしたと思ったら消えた。
「・・・・・・あれって、風の精霊ね」
「はい。そして、風の精霊はその特性から、何処にでも入り込む事ができて、更に風の精霊達は悪戯好きと言う性格です。恐らくですが、トランバートリー様の身体を押した強い風を吹かせたのは」
「あの、風の精霊ね」
「その通りでございます」
ザガードは正解とばかりに頭を下げた。
「「「おおおっ⁉」」」
ザガードの推理を聞いて、皆、感嘆していた。
「むぅ、これが答えのようね」
リエリナは何処か不満そうな顔をしていた。
その顔を見て、ザガードは苦笑した。
(自分の推理を披露できなくなって不満なのだろうな)
ザガードはリエリナの顔を見て、そう感じ取った。
ザガードの推理を聞いて、周りの人達はもう話は終わったと分かったので離れて行った。
「はぁ、わたし達も教室に行きましょうか」
「そうですね」
リエリナが気持ちを切り替える為に、溜め息を吐いた。そして、ザガードと共に教室に向かおうとしたら。
「ああ、リエリナ様とザガードさん」
カトリーヌが二人を呼び止めた。
「助けてくれてありがとうございます。この御礼はいずれ」
「いえいえ、別に大した事はしていませんので」
「ですが」
「お気になさらずに。では、御機嫌よう」
リエリナが頭を下げで、カトリーヌのから離れて行く。
ザガードも一礼して、リエリナの後を追った。
カトリーヌから離れたザガード達は、教室に向かいながら周囲に誰も居ない事を確認した。
そして、誰も居ない事を確認して、話出した。
「先程の風の精霊だけど、どう思う?」
「わたしには何とも言えません」
リエリナの問い掛けに、ザガードは首を横に振る。
「風の精霊の殆どは悪戯好きなのは分かるわ。時には、人に危害になる悪戯をする事もあるわ。人間の考えと価値観を持たない精霊にはよくある事ね。でも」
リエリナは足を止めて、ザガードを見る。
「どうして、この校舎に風の精霊が居るのかしら? 偶々入って来て、それで偶々カトリーヌ様に悪戯をしたというのは偶然では言い切れない程の出来過ぎね」
「確かに、その通りです」
「あの時見た風の精霊は、精霊の中でも下級だったわ。という事は、精霊を呼び出す魔法を使って、誰かが故意にカトリーヌ様に危害を加えるとも考えられるわね」
「お嬢様。周りに誰も居ないとは言え、そのような考えを口に出すのは、些か不用心かと思います」
「大丈夫よ。だって」
リエリナはザガードの目を見る。
「貴方が居るじゃない。ザガード」
リエリナは断言した。
その目は、どんな事があっても、ザガードが居たら問題ないと言っているようだ。
「過分なお言葉です。お嬢様」
ザガードは頭を下げた。
「そうかしら」
微笑むリエリナ。
「まぁ、故意か偶然かどちらにしても、わたしに実害はないでしょうね」
「恐らくは、もしあれば」
ザガードはそれ以上、何も言わず胸を叩いた。
わたしにお任せを。
言葉に出さなくても、そう言っているのが分かった。
リエリナもそれを見て頷いた。
「さて、何時までもここで立ち話をしていると授業に遅れるわ。行きましょうか」
「はっ」
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