18 / 88
第18話 色々な意味で頑張る
しおりを挟む
ザガードは何とも言えない表情で、自分が引いたクジの文字に書かれている調理台に向かう。
其処には、全員、一年の女生徒が三人程いた。
「……よろしくお願いします」
ザガードはまずは挨拶した。それが初めてあう人にする礼儀だと教わったからだ。
ザガードは深く息を吐いて切り替える事にした。
そして、側にいなくてもフォローする様にしようと考えた。
幸いなのは、隣の台なのでしようと思えば出来る距離だ。
「「「よ、よろしく」」」
女生徒たちはこの部室に居る少ない男子生徒が目の前に居るので、ドキドキしていた。
更に、ザガードはイケメンの部類に入る。
黒い髪。この国では、あまり見られない上に、まるで、濡れた鴉の羽のような色をしていた。
白哲の肌で、顎の線が細いので女性のような印象を抱かせていた。
ザガードは女性達の視線を気にも留めず、部室の一番奥にある台に居る部長を見る。
「はい。皆さん。改めて初めまして、料理部部長のチゼッタ=ラクシーンと申します。今日はよろしくお願いしますね」
そう言って、ニッコリと笑うチゼッタ。
赤茶色の髪を腰まで伸ばし、パッチリとした目。緑色の瞳。
制服の上から黒いエプロンを着ていた。
「今日は体験入部ですけど、もし料理に興味を持ちましたら、どなたでも入部をお待ちしますね」
微笑みながら言うチゼッタ。
「本日はパウンドケーキを作ります。レシピはこちらです」
チゼッタは黒板にレシピを張り付けた。
「では、作りますね」
チゼッタは料理台に置かれていた材料を見せながら調理を始めた。
パウンドケーキとは、同量の小麦粉、バター、砂糖、卵を混ぜ合わせて型に流し込み作るバターケ―キの一種。
お菓子の中では材料が少ないので作りやすいお菓子だ。
だが、ザガードの内心はしたら不安でいっぱいであった。
チゼッタはまずはボウルに卵を入れて溶く、砂糖を少しづつ加えて混ぜていく。
これは砂糖を完全に卵に溶かすためだ。
一気に入れると、ボウルの底に溶け切らない砂糖が残るのを防ぐためだ。
「卵に砂糖を混ぜてますと、最初は黄色ですが。だんだんよ混ぜていくと」
チゼッタが話しながら混ぜて行くと、最初は黄色だった卵がだんだんと白っぽくなっていった。
「ここまで白くなりますと、砂糖は完全に解けました。此処に振るった小麦粉を入れて更に混ぜます。目安は粉っぽさがなくなるまで」
粉っぽさがなくなると、今度は溶かしたバターを卵と混ぜた小麦粉の中に入れて混ぜた。
「はい。バターを入れたら、それほど混ぜなくても結構です。軽く混ぜるだけ十分です。後は用意されている型にこの生地を流し込んで、軽く型を叩いてから、予熱したオーブンに入れて焼き上がれば出来上がりです。生地が出来ましたら、各々お好きなアレンジをしていいですよ」
チゼッタが手で示した先には、色々な材料があった。
アーモンド、チョコレート、ドライフルーツ、変わった所で食用花などのトッピングが沢山用意されていた。
女子生徒達は、皆、黄色い悲鳴をあげていた。
「では、調理を始めてください」
チゼッタがそう言うと、皆、調理台に置かれている自分の分のケーキの材料をボウルに入れて混ぜていた。
混ぜながら、自分は何をいれるかなどを話していた。
「わたしはチョコかな。貴方は?」
「わたしも」
「じゃあ、スライスされたアーモンドを入れよう」
と、自分のケーキに好きな物を入れる話をしている。
ザガードはその話しを聞きながら、自分の分の材料を手早く混ぜていく。
テンポよく無駄のない動きで。
(懐かしいな。師匠にもこうして、よくデザートを作っていた)
ザガードの師匠であるイータ=アルカイドはいかつい見た目に反して、甘党でよくザガードに作らせていた。
なので、料理は一通りできるザガード。
本職の料理人に比べても遜色ない手つきに、料理などに慣れていない女子生徒達から黄色い悲鳴があがる。
「凄い。まるで、料理人みたいっ」
「同じ一年生よね。何処のクラスかしら?」
「確か、一年A組の人よ」
自分の事を話されている中でも、ザガードは気にも留めず料理を作っていた。
手を動かしながら、チラチラとリエリナを見ていた。
(お嬢様は大丈夫だろうか?)
そんな思いが胸中を支配していた。
そのリエリナだが、今の所、失敗らしい失敗はしていない。
今回の料理は混ぜて焼くだけという簡単な料理だ。
しかし、リエリナの手に掛かれば、何が起こるか分からない。
ザガードは自分のパウンドケーキには何を入れるか考えながら、リエリナを注視している。
ザガードの視線に気づいているのか、リエリナは顔にこそ出さないが、内心は不満そうであった。
(もう、わたしがそんなに失敗しないか心配なのね)
リエリナは内心憤慨していた。
(見てなさい。今日こそ、料理下手の汚名返上してみせるわ)
そんな思いで燃えるリエリナであった。
其処には、全員、一年の女生徒が三人程いた。
「……よろしくお願いします」
ザガードはまずは挨拶した。それが初めてあう人にする礼儀だと教わったからだ。
ザガードは深く息を吐いて切り替える事にした。
そして、側にいなくてもフォローする様にしようと考えた。
幸いなのは、隣の台なのでしようと思えば出来る距離だ。
「「「よ、よろしく」」」
女生徒たちはこの部室に居る少ない男子生徒が目の前に居るので、ドキドキしていた。
更に、ザガードはイケメンの部類に入る。
黒い髪。この国では、あまり見られない上に、まるで、濡れた鴉の羽のような色をしていた。
白哲の肌で、顎の線が細いので女性のような印象を抱かせていた。
ザガードは女性達の視線を気にも留めず、部室の一番奥にある台に居る部長を見る。
「はい。皆さん。改めて初めまして、料理部部長のチゼッタ=ラクシーンと申します。今日はよろしくお願いしますね」
そう言って、ニッコリと笑うチゼッタ。
赤茶色の髪を腰まで伸ばし、パッチリとした目。緑色の瞳。
制服の上から黒いエプロンを着ていた。
「今日は体験入部ですけど、もし料理に興味を持ちましたら、どなたでも入部をお待ちしますね」
微笑みながら言うチゼッタ。
「本日はパウンドケーキを作ります。レシピはこちらです」
チゼッタは黒板にレシピを張り付けた。
「では、作りますね」
チゼッタは料理台に置かれていた材料を見せながら調理を始めた。
パウンドケーキとは、同量の小麦粉、バター、砂糖、卵を混ぜ合わせて型に流し込み作るバターケ―キの一種。
お菓子の中では材料が少ないので作りやすいお菓子だ。
だが、ザガードの内心はしたら不安でいっぱいであった。
チゼッタはまずはボウルに卵を入れて溶く、砂糖を少しづつ加えて混ぜていく。
これは砂糖を完全に卵に溶かすためだ。
一気に入れると、ボウルの底に溶け切らない砂糖が残るのを防ぐためだ。
「卵に砂糖を混ぜてますと、最初は黄色ですが。だんだんよ混ぜていくと」
チゼッタが話しながら混ぜて行くと、最初は黄色だった卵がだんだんと白っぽくなっていった。
「ここまで白くなりますと、砂糖は完全に解けました。此処に振るった小麦粉を入れて更に混ぜます。目安は粉っぽさがなくなるまで」
粉っぽさがなくなると、今度は溶かしたバターを卵と混ぜた小麦粉の中に入れて混ぜた。
「はい。バターを入れたら、それほど混ぜなくても結構です。軽く混ぜるだけ十分です。後は用意されている型にこの生地を流し込んで、軽く型を叩いてから、予熱したオーブンに入れて焼き上がれば出来上がりです。生地が出来ましたら、各々お好きなアレンジをしていいですよ」
チゼッタが手で示した先には、色々な材料があった。
アーモンド、チョコレート、ドライフルーツ、変わった所で食用花などのトッピングが沢山用意されていた。
女子生徒達は、皆、黄色い悲鳴をあげていた。
「では、調理を始めてください」
チゼッタがそう言うと、皆、調理台に置かれている自分の分のケーキの材料をボウルに入れて混ぜていた。
混ぜながら、自分は何をいれるかなどを話していた。
「わたしはチョコかな。貴方は?」
「わたしも」
「じゃあ、スライスされたアーモンドを入れよう」
と、自分のケーキに好きな物を入れる話をしている。
ザガードはその話しを聞きながら、自分の分の材料を手早く混ぜていく。
テンポよく無駄のない動きで。
(懐かしいな。師匠にもこうして、よくデザートを作っていた)
ザガードの師匠であるイータ=アルカイドはいかつい見た目に反して、甘党でよくザガードに作らせていた。
なので、料理は一通りできるザガード。
本職の料理人に比べても遜色ない手つきに、料理などに慣れていない女子生徒達から黄色い悲鳴があがる。
「凄い。まるで、料理人みたいっ」
「同じ一年生よね。何処のクラスかしら?」
「確か、一年A組の人よ」
自分の事を話されている中でも、ザガードは気にも留めず料理を作っていた。
手を動かしながら、チラチラとリエリナを見ていた。
(お嬢様は大丈夫だろうか?)
そんな思いが胸中を支配していた。
そのリエリナだが、今の所、失敗らしい失敗はしていない。
今回の料理は混ぜて焼くだけという簡単な料理だ。
しかし、リエリナの手に掛かれば、何が起こるか分からない。
ザガードは自分のパウンドケーキには何を入れるか考えながら、リエリナを注視している。
ザガードの視線に気づいているのか、リエリナは顔にこそ出さないが、内心は不満そうであった。
(もう、わたしがそんなに失敗しないか心配なのね)
リエリナは内心憤慨していた。
(見てなさい。今日こそ、料理下手の汚名返上してみせるわ)
そんな思いで燃えるリエリナであった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる