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第14話 学園に初登校
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翌日。
朝日が部屋に差し込み、ザガードは目を覚ました。
「・・・・・・お嬢様。もう機嫌を直しておいてくれるといいのだが」
昨日、剣術部の試合をした所為で、買い物が出来なくなった。
それにより、リエリナは笑顔なのに怖いという顔をしていた。
ザガードがどれだけ宥めても、機嫌を直す事はなかった。
頼むから、機嫌を直してくださいと、神に祈りながら、ザガードは寝間着から制服に着換えた。
着換え終わると、姿見で寝癖が無いか、襟が立っていないか確認した。
その確認を終えると、ザガードは部屋を出た。
部屋を出たザガードは、そのまま公爵の家族が使うダイニングルームに向かう。
部屋の前に着くと、守衛に挨拶してから、部屋に通された。
だが、部屋にはリエリナは居なかった。
代わりに。
「あら、ザードじゃない。おはよう」
椅子に座っている女性は、ニッコリと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
ザガードは内心、ゲッと思いながら、顔はなるべく平静を装う。
「お、おはよう、ございます。奥様」
ザガードは頭を下げる。
ザガードが頭を下げた人物は、この館の主であるオイゲンの妻であるコウリーンだ。
娘と同じハニーブロンドの髪をアップヘアにして、笑うと頬に深い笑窪のできる優しい顔立ち。少し垂れた目。
深翠色の瞳。
そして、女盛りの豊満な肉体をしていた。
「貴方も朝食かしら?」
「え、ええと、そのつもりでしたが、お嬢様がまだのようなので、わたしは起こしに参ります」
適当な理由をつけて、逃げ出そうとザガードは背を向けた。
「そんな役は別の人にやらせなさいな。それよりも、早く朝食を取らないと、学園に行くのに遅れますよ」
「で、ですが。お嬢様よりも先に頂くなど、家人としてそれはどうかと思いますので、・・・・・」
ザガードは何とか逃げ出そうと、あれこれ理由をつける。
「先に食べていることぐらいで、あの子が目くじらを立てる事などないわよ。むしろ、そんな事で目くじらを立てるのだったら、わたくしが説教してあげるわ」
「いえ、そんな⁈ 奥様が説教する程の事ではないと思いますので」
「でしょうね。だったら、早く席に着きなさいな」
「・・・・・・はい」
そう言われては、ザガードは逆らう事も出来ず、しぶしぶ椅子に座る。
その様子は、まるで主人に構い過ぎて疲れた忠犬のようであった。
(ふふ、何か可愛いわ)
コウリーンはそんな様子のザガードを見て、ほくそ笑む。
ザガードは何時も座っている席に座り、朝食が来るのを待っていた。
コウリーンは朝食に手をつけながら話かける。
「どう? 学生になった気分は」
「・・・・・・そうですね。正直、学ぶ事が出来るというのは幸福だと思います」
「そう、ね。貴方の立場だったらそうでしょうね」
コウリーンも同意した。
この国では、平民でも文字を読むことが出来ない人は多い。まして、奴隷ならば猶更だ。
公爵家に拾ってもらい、こうして人並みの生活を送れるのだから、文句のつけようがないと思うザガード。
ただ、自分を過剰に構うのは止めて欲しいと思うのであった。
「それでそれで、クラスメートはどんな子が居るのかしら?」
「クラートゲシャップ家の御令嬢が同じクラスです」
「ああ、ローザちゃんね。あの子も可愛いわよね~。時々、ギュウって抱き締めたくなるわよね~」
ニコニコと笑いながら、そんな事を言うコウリーン。
公爵家の御令嬢を「ちゃん」づけで呼ぶなど、普通の人はまず言わない。
(こういう怖いもの知らずな所は、ゼノミティア様に受け継がれたんだろうな)
内心でそう思うザガード。
その後は、ザガードの朝食が届いたので、二人は朝食を食べながら話し続けていると。
部屋のドアが開いた。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは顔を入り口に向ける。
其処にはリエリナが居た。
「これは、お嬢様。おはようございます」
ザガードはナプキンで口元を拭いて、椅子から立ち上がり、朝の挨拶を交わした。
リエリナはザガードを見るなり笑顔を浮かべたが、直ぐにコウリーンを見て顔を驚く。
「…母様。おはようございます。ザガードも」
「おはよう。リエリナ」
「もう、お帰りでしたか。お帰りは明日だったと聞いていましたが」
「予定よりも早く終わったから、昨日帰って来たのよ。そ・れ・と・リ・ナ・ちゃん♥」
「は、はい」
「クラスメートにローザちゃんが居るそうじゃない。仲良くしてる?」
「そうですね。それなりにですね」
リエリナは母親の顔を見て、何かよからぬ事を考えている顔をしているので、弱冠、引いていた。
「そう、そうなの。うふふ」
コウリーンはあくどい笑みを浮かべた。
「か、母様?」
「い~え、何でもないわ。さてと」
コウリーンはナプキンで口元を拭い、席を立った。
「じゃあ、わたくしは仕事があるから、これでね。二人共、学園から帰ったら話を聞かせてちょうだい」
そう言ってコウリーンは部屋から出て行った。
二人は何も言えないまま、その後姿を見送った。
ザガード達は朝食を食べ終わると、そのまま学園に向かった。
学園に向かう道すがら、ザガードはリエリナに問い詰められていた。
コウリーンに何を話したのかを。
ザガードは昨日あった事を、脚色もしないであるがままに話した。
(そう言えば、ローザアリア様の事を話していたら、何か目が光った様な気がしたが?)
一瞬だったので、ザガードは気のせいかと思い、その時は特に気にしなかった。
やっと、学園に着くと、ザガードは一息ついた。
リエリナがしつこく訊ねてくるので、精神的に疲れていたのだ。
馬車から降りた二人は御者に一言礼を言って、教室へと向かった。
教室からは賑やかな声が聞こえて来た。
既に、教室にいるクラスメート達が、仲の良い者達と話しをしているのだろう。
ザガード達がドアを開けて、教室に入ると、騒がしかった室内がいきなり静かになり、クラスメート達がザガード達を見ている。
(何だ?)
ザガードは不思議に思い、リエリナと顔を見合わせた。
リエリナも意味が分からないのか、首を傾げていた。
とりあえず、此処にいては、教室に入って来るクラスメート達の邪魔になると思い、ザガード達は自分の席に向かう。席に向かっている間、ザガード達は好奇と羨望が混じった視線を感じていた。
ザガード達が席に座ると、男子達がザガードに寄って来る。
「何か用か?」
「あ、ああ、お前さ、昨日、魔導剣闘部と剣術部との試合に出て、部員のティガロ先輩に勝ったって聞いたんだけど、本当か?」
「ティガロ?」
内心、それは誰だ? と思うザガード。
昨日の試合という事で、昨日対戦した剣術部の部員の一人だろうと予想したが。
(二戦したからな、どっちだろうか?)
ザガードがそう考えているのが分かったのか、リエリナが顔を近づけてザガードの耳元で話す。
「最後の試合で戦った相手よ」
それで誰なのか分かったのか、ザガードは頭を頷かせた。
「ああ、そうだ」
ザガードが認めると、男子達は「おおっ」という歓声をあげた。
「すげえな。あの先輩。去年は『学園無差別格闘大会』で優勝した実力者なんだぜっ」
「二年生の男子の中じゃあ、最強の剣術使いだって言われている先輩だよな?」
「ああ、そうだ。その先輩を倒すなんて」
男子達は、ザガードを羨望の目で見る。
(あれで、二年生最強の使い手か。もっと強い奴は居ないと考えるべきか?)
そう思っていたが、ふと先程の言葉を聞いて違和感を覚えた。
(先程は『男子の中じゃあ』っと言った。という事は、女性の方がもっと出来る奴が居るのか?)
その言葉を聞いて、そう察した。
其処の所はどうなのか、もう一度訊ねようとしたら。
また、扉が開く音がした。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは首を向ける。
そこに居たのは、ローザアリアであった。
お供のシオーネを連れて教室に入って来た。
ローザアリアが入るなり、シンっといきなり教室内が静かになった。
そして、ローザアリアがザガードの方に顔を向けると、クラスメート達は離れていき、自分の席に戻る。
(ふぅ。あんなに人が居たら話をするの一苦労だったから助かった)
ザガードはローザアリアに御礼を込めて頭を下げた。
ローザアリアは気付いていないようで、そのまま自分の席に座る。
シオーネも席に座る。
それから少しして、始業を告げる鐘が鳴りだした。
クラスメート達は席に座り、担任のオベランが来るのを待った。
鐘が鳴り終わると、オベランが教室のドアを開けて入って来た。
教室に入ると、そのまま教壇に向かい、皆を見る。
「はい。皆さん。お早うございます」
オベランがそう言うと、ザガード達は「おはようございます」と言ったり、頭を下げるだけに留めたりと、人それぞれであった。
「今日は授業と言っても、午前中はオリエンテーションとクラス委員を決めます。午後からは昨日の講堂で、部活紹介が行われます。その部活紹介で入る部活を決めるか、もしくは部活を見学して入る部活を決めて下さい」
オベランはそう言い終えると、黒板に何か書きだした。
「まずは、クラス委員を決めたいと思います。自薦他薦構いませんので、誰かしたい者はいませんか?」
オベランがそう言うと、男子の一人が手を挙げた。
「先生っ」
「はい。何でしょうか。マクスイン君」
オベランに名前を呼ばれた生徒は椅子を立つ。
藍色の髪を七三分けにし、吊り上がった目をしていた。
緑色の瞳。黒縁の眼鏡を掛けている。中肉中背。
何処か神経質的な雰囲気を出していた。
「そのクラス委員は一人ですか?」
「そうですね。男女の組にしたいので、二人にしたいと思います」
「分かりました。では、男性の方は自分がしたいと思います」
「そうですか。他になりたい人はいますか?」
オベランが訊ねると、クラスメートの男子は周りの男子を見るだけで、誰も手を挙げない。
「では、男子のクラス委員はマクスイン君に決定しました」
オベランが拍手すると、クラスメート達も拍手した。
マクスインは拍手に包まれながら席に座る。
「では、女子の方のクラス委員を選びたいと思います。誰かいますか?」
オベランがそう言うが、女子の方は誰も手を挙げなかった。
これは時間が掛かるなとザガードは思った。
朝日が部屋に差し込み、ザガードは目を覚ました。
「・・・・・・お嬢様。もう機嫌を直しておいてくれるといいのだが」
昨日、剣術部の試合をした所為で、買い物が出来なくなった。
それにより、リエリナは笑顔なのに怖いという顔をしていた。
ザガードがどれだけ宥めても、機嫌を直す事はなかった。
頼むから、機嫌を直してくださいと、神に祈りながら、ザガードは寝間着から制服に着換えた。
着換え終わると、姿見で寝癖が無いか、襟が立っていないか確認した。
その確認を終えると、ザガードは部屋を出た。
部屋を出たザガードは、そのまま公爵の家族が使うダイニングルームに向かう。
部屋の前に着くと、守衛に挨拶してから、部屋に通された。
だが、部屋にはリエリナは居なかった。
代わりに。
「あら、ザードじゃない。おはよう」
椅子に座っている女性は、ニッコリと笑顔を浮かべながら挨拶をする。
ザガードは内心、ゲッと思いながら、顔はなるべく平静を装う。
「お、おはよう、ございます。奥様」
ザガードは頭を下げる。
ザガードが頭を下げた人物は、この館の主であるオイゲンの妻であるコウリーンだ。
娘と同じハニーブロンドの髪をアップヘアにして、笑うと頬に深い笑窪のできる優しい顔立ち。少し垂れた目。
深翠色の瞳。
そして、女盛りの豊満な肉体をしていた。
「貴方も朝食かしら?」
「え、ええと、そのつもりでしたが、お嬢様がまだのようなので、わたしは起こしに参ります」
適当な理由をつけて、逃げ出そうとザガードは背を向けた。
「そんな役は別の人にやらせなさいな。それよりも、早く朝食を取らないと、学園に行くのに遅れますよ」
「で、ですが。お嬢様よりも先に頂くなど、家人としてそれはどうかと思いますので、・・・・・」
ザガードは何とか逃げ出そうと、あれこれ理由をつける。
「先に食べていることぐらいで、あの子が目くじらを立てる事などないわよ。むしろ、そんな事で目くじらを立てるのだったら、わたくしが説教してあげるわ」
「いえ、そんな⁈ 奥様が説教する程の事ではないと思いますので」
「でしょうね。だったら、早く席に着きなさいな」
「・・・・・・はい」
そう言われては、ザガードは逆らう事も出来ず、しぶしぶ椅子に座る。
その様子は、まるで主人に構い過ぎて疲れた忠犬のようであった。
(ふふ、何か可愛いわ)
コウリーンはそんな様子のザガードを見て、ほくそ笑む。
ザガードは何時も座っている席に座り、朝食が来るのを待っていた。
コウリーンは朝食に手をつけながら話かける。
「どう? 学生になった気分は」
「・・・・・・そうですね。正直、学ぶ事が出来るというのは幸福だと思います」
「そう、ね。貴方の立場だったらそうでしょうね」
コウリーンも同意した。
この国では、平民でも文字を読むことが出来ない人は多い。まして、奴隷ならば猶更だ。
公爵家に拾ってもらい、こうして人並みの生活を送れるのだから、文句のつけようがないと思うザガード。
ただ、自分を過剰に構うのは止めて欲しいと思うのであった。
「それでそれで、クラスメートはどんな子が居るのかしら?」
「クラートゲシャップ家の御令嬢が同じクラスです」
「ああ、ローザちゃんね。あの子も可愛いわよね~。時々、ギュウって抱き締めたくなるわよね~」
ニコニコと笑いながら、そんな事を言うコウリーン。
公爵家の御令嬢を「ちゃん」づけで呼ぶなど、普通の人はまず言わない。
(こういう怖いもの知らずな所は、ゼノミティア様に受け継がれたんだろうな)
内心でそう思うザガード。
その後は、ザガードの朝食が届いたので、二人は朝食を食べながら話し続けていると。
部屋のドアが開いた。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは顔を入り口に向ける。
其処にはリエリナが居た。
「これは、お嬢様。おはようございます」
ザガードはナプキンで口元を拭いて、椅子から立ち上がり、朝の挨拶を交わした。
リエリナはザガードを見るなり笑顔を浮かべたが、直ぐにコウリーンを見て顔を驚く。
「…母様。おはようございます。ザガードも」
「おはよう。リエリナ」
「もう、お帰りでしたか。お帰りは明日だったと聞いていましたが」
「予定よりも早く終わったから、昨日帰って来たのよ。そ・れ・と・リ・ナ・ちゃん♥」
「は、はい」
「クラスメートにローザちゃんが居るそうじゃない。仲良くしてる?」
「そうですね。それなりにですね」
リエリナは母親の顔を見て、何かよからぬ事を考えている顔をしているので、弱冠、引いていた。
「そう、そうなの。うふふ」
コウリーンはあくどい笑みを浮かべた。
「か、母様?」
「い~え、何でもないわ。さてと」
コウリーンはナプキンで口元を拭い、席を立った。
「じゃあ、わたくしは仕事があるから、これでね。二人共、学園から帰ったら話を聞かせてちょうだい」
そう言ってコウリーンは部屋から出て行った。
二人は何も言えないまま、その後姿を見送った。
ザガード達は朝食を食べ終わると、そのまま学園に向かった。
学園に向かう道すがら、ザガードはリエリナに問い詰められていた。
コウリーンに何を話したのかを。
ザガードは昨日あった事を、脚色もしないであるがままに話した。
(そう言えば、ローザアリア様の事を話していたら、何か目が光った様な気がしたが?)
一瞬だったので、ザガードは気のせいかと思い、その時は特に気にしなかった。
やっと、学園に着くと、ザガードは一息ついた。
リエリナがしつこく訊ねてくるので、精神的に疲れていたのだ。
馬車から降りた二人は御者に一言礼を言って、教室へと向かった。
教室からは賑やかな声が聞こえて来た。
既に、教室にいるクラスメート達が、仲の良い者達と話しをしているのだろう。
ザガード達がドアを開けて、教室に入ると、騒がしかった室内がいきなり静かになり、クラスメート達がザガード達を見ている。
(何だ?)
ザガードは不思議に思い、リエリナと顔を見合わせた。
リエリナも意味が分からないのか、首を傾げていた。
とりあえず、此処にいては、教室に入って来るクラスメート達の邪魔になると思い、ザガード達は自分の席に向かう。席に向かっている間、ザガード達は好奇と羨望が混じった視線を感じていた。
ザガード達が席に座ると、男子達がザガードに寄って来る。
「何か用か?」
「あ、ああ、お前さ、昨日、魔導剣闘部と剣術部との試合に出て、部員のティガロ先輩に勝ったって聞いたんだけど、本当か?」
「ティガロ?」
内心、それは誰だ? と思うザガード。
昨日の試合という事で、昨日対戦した剣術部の部員の一人だろうと予想したが。
(二戦したからな、どっちだろうか?)
ザガードがそう考えているのが分かったのか、リエリナが顔を近づけてザガードの耳元で話す。
「最後の試合で戦った相手よ」
それで誰なのか分かったのか、ザガードは頭を頷かせた。
「ああ、そうだ」
ザガードが認めると、男子達は「おおっ」という歓声をあげた。
「すげえな。あの先輩。去年は『学園無差別格闘大会』で優勝した実力者なんだぜっ」
「二年生の男子の中じゃあ、最強の剣術使いだって言われている先輩だよな?」
「ああ、そうだ。その先輩を倒すなんて」
男子達は、ザガードを羨望の目で見る。
(あれで、二年生最強の使い手か。もっと強い奴は居ないと考えるべきか?)
そう思っていたが、ふと先程の言葉を聞いて違和感を覚えた。
(先程は『男子の中じゃあ』っと言った。という事は、女性の方がもっと出来る奴が居るのか?)
その言葉を聞いて、そう察した。
其処の所はどうなのか、もう一度訊ねようとしたら。
また、扉が開く音がした。
誰が入って来たのだろうと思い、ザガードは首を向ける。
そこに居たのは、ローザアリアであった。
お供のシオーネを連れて教室に入って来た。
ローザアリアが入るなり、シンっといきなり教室内が静かになった。
そして、ローザアリアがザガードの方に顔を向けると、クラスメート達は離れていき、自分の席に戻る。
(ふぅ。あんなに人が居たら話をするの一苦労だったから助かった)
ザガードはローザアリアに御礼を込めて頭を下げた。
ローザアリアは気付いていないようで、そのまま自分の席に座る。
シオーネも席に座る。
それから少しして、始業を告げる鐘が鳴りだした。
クラスメート達は席に座り、担任のオベランが来るのを待った。
鐘が鳴り終わると、オベランが教室のドアを開けて入って来た。
教室に入ると、そのまま教壇に向かい、皆を見る。
「はい。皆さん。お早うございます」
オベランがそう言うと、ザガード達は「おはようございます」と言ったり、頭を下げるだけに留めたりと、人それぞれであった。
「今日は授業と言っても、午前中はオリエンテーションとクラス委員を決めます。午後からは昨日の講堂で、部活紹介が行われます。その部活紹介で入る部活を決めるか、もしくは部活を見学して入る部活を決めて下さい」
オベランはそう言い終えると、黒板に何か書きだした。
「まずは、クラス委員を決めたいと思います。自薦他薦構いませんので、誰かしたい者はいませんか?」
オベランがそう言うと、男子の一人が手を挙げた。
「先生っ」
「はい。何でしょうか。マクスイン君」
オベランに名前を呼ばれた生徒は椅子を立つ。
藍色の髪を七三分けにし、吊り上がった目をしていた。
緑色の瞳。黒縁の眼鏡を掛けている。中肉中背。
何処か神経質的な雰囲気を出していた。
「そのクラス委員は一人ですか?」
「そうですね。男女の組にしたいので、二人にしたいと思います」
「分かりました。では、男性の方は自分がしたいと思います」
「そうですか。他になりたい人はいますか?」
オベランが訊ねると、クラスメートの男子は周りの男子を見るだけで、誰も手を挙げない。
「では、男子のクラス委員はマクスイン君に決定しました」
オベランが拍手すると、クラスメート達も拍手した。
マクスインは拍手に包まれながら席に座る。
「では、女子の方のクラス委員を選びたいと思います。誰かいますか?」
オベランがそう言うが、女子の方は誰も手を挙げなかった。
これは時間が掛かるなとザガードは思った。
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