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第13話 試合結果
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魔導剣闘術部の歓声で迎えられたザガードは、部員に肩や背中を叩かれたりした。
その歓迎を受けながら、ザガードはリエリナの下に行く。
「お手間を掛けて申し訳ありません」
「いえ、気にしないくていいですよ」
「はっ。ありがとうございます」
ザガードが頭を下げる。
主従が話しをしていると、横から声を掛けられる。
「いやぁ、見事な腕前ですね。ザガード君」
フィリックがザガードを褒め称える。
「君が相手をした者は、剣術部でも上から数えた方が早いくらいの実力者。それを倒すとは、見事ですね」
「ありがとうございます」
「素晴らしい体裁き、それに太刀筋。見た所、東方の剣術ですね」
「その通りです」
「流派を聞いても宜しいですか?」
「はい。わたしの流派は覇極始天流です」
「覇極始天流っ⁉ あの『武神』イータ=アルカイドが創始した流派か」
フィリックは驚いた顔をする。
覇極始天流とは。
イータ=アルカイドは元々は天流を学んでいたが、東方を旅していると、ある者から覇極流という流派を相伝した。その両方の流派の利点を創意工夫して、新しい流派を設立した。
イータは高名だが漂泊の武人と知られている。
ある時、公爵家に逗留する事があり、その際、ザガードはイータを師事して、覇極始天流を学んだ。
ザガードの筋が良かったのか、イータの教えを受けて、メキメキと実力を上げていった。
イータは公爵家を出る時にはザガードに奥義を伝授して、免許皆伝の印を授けた。
「それは凄いですね。あの流派で目録を得た者は、皆、高名な武人ですよ。その中に貴方も入っているとは」
「恐縮です。自分は兄弟子達に比べたら、若輩者です」
「おや、貴方は謙虚なのですね」
ザガードは頭を下げるだけで、何も言わない。
顔を上げると、ザガードはリエリナを見る。
「お嬢様。そろそろ、お暇しませんか?」
「ええ、でも、もう少し此処に居ても」
「早くここを出ませんと買い物が」
「そうですね。では、行きましょうか」
リエリナはそう言って、椅子から立ち上がる。
「じゃあ、ローザアリア様に一言言って、帰りませんと」
「っ⁉ ローザアリア様が居られるのですか?」
試合に集中していた所為か、ザガードはローザアリアが居る事に気付かなかった。
「ええ、ほら、あちらに」
リエリナが指差した先には、ローザアリアは隣にいるティルズと話しをしていた。
二人は笑顔を浮かべながら、楽しく話している姿がザガードの目に入った。
その光景を見ていると、何故かザガードの心がざわつきだした。
(何で、こんなに心がざわつくんだ?)
自分の事なのに、何故か分からないザガード。
何故か、心がモヤモヤしていると、剣術部から声が聞こえてきた。
「こ、こんな勝負は、やり直しだ!」
「一戦して疲労したのだから負けたのだっ。日を改めてやり直しを要求するっ」
剣術部の部員達が騒ぎ出す。
そう声が上がる度に、魔導剣闘術部の部員達は白けた空気をだす。
このままだと、また面倒な試合をする事になるなと思うザガード。
(面倒な連中だ。さて、どうしたものか?)
ここはフィリックに一言言って、静かに帰ってもらおうかと考えていると。
「いい加減にしなさい。貴方達」
静かだが、今にも噴火しそうな山のような圧迫感を感じさせる怒りを含んだ声が聞こえる。
ザガードはその声の主を見る。
「ローザアリア様っ」
「く、クラートゲシャップ家の令嬢が、何故ここに⁉」
この場に居る剣術部の部員は全員、貴族なのか、ローザアリアの顔を見知っているようだ。
「負けを認めず再戦を願うなど、恥知らずにも程があるわ」
「し、しかし」
「我らにも誇りが」
「誇りね。そんなちっぽけな誇りにすがるくらいなら、さっさと捨てなさいっ」
ピシャリと言うローザアリア。
親に叱られた子供の用に、身を竦める剣術部の部員達。
「これ以上、迷惑を掛けるのであれば、わたしにも考えがあるわよ」
ローザアリアがそう言うと、顔を青ざめる剣術部の部員達。
「「「し、失礼しましたっっっ」」」
剣術部の部員達は逃げるように、部屋から出て行った。
「ふん」
ローザアリアは剣術部の部員達の後姿を鼻で笑う。
「帰るわよ。シオーネ」
「はい。お嬢様」
ローザアリアはお供のシオーネを連れて部屋を出て行った。
ローザアリアが部屋を出て行き、少しすると魔導剣闘術部の部員達が話し出す。
「あれ以上、ごねられるのも問題だけど」
「だな。あのキツイ言い方はどうかと思うぜ」
「貴族が誇りを捨てろとか、無理だろう」
「言えてる。でもよ。あいつら大丈夫か?」
「クラートゲシャップ家に睨まれた家は、没落するっていう噂があるからな」
「ああ、聞いた事があるぜ」
部員達はそんな風に話しをしていると。
「はいはい。皆さん。明日の演舞に向けて、練習を再開ですよ」
フィリックが手を叩いて、部活を再開させる様に促した。
その声を聞いて、部員達は部活動を再開した。
「さて、俺もちょっと汗を流すか。お前はどうする?」
ティルズはザガードに声を掛けると、リエリナが答えた。
「わたし共は、そろそろ帰ろうと思います。良いですね。ザガード」
「承知しました」
リエリナがフィリックに頭を下げ、部屋を出て行った。
その後を、ザガードは付いて行った。
余談だが、試合がかなり長時間になった所為か、買い物の時間が無くなった。
お蔭でリエリナは一日中、目が笑っていない笑顔を浮かべていた。
その歓迎を受けながら、ザガードはリエリナの下に行く。
「お手間を掛けて申し訳ありません」
「いえ、気にしないくていいですよ」
「はっ。ありがとうございます」
ザガードが頭を下げる。
主従が話しをしていると、横から声を掛けられる。
「いやぁ、見事な腕前ですね。ザガード君」
フィリックがザガードを褒め称える。
「君が相手をした者は、剣術部でも上から数えた方が早いくらいの実力者。それを倒すとは、見事ですね」
「ありがとうございます」
「素晴らしい体裁き、それに太刀筋。見た所、東方の剣術ですね」
「その通りです」
「流派を聞いても宜しいですか?」
「はい。わたしの流派は覇極始天流です」
「覇極始天流っ⁉ あの『武神』イータ=アルカイドが創始した流派か」
フィリックは驚いた顔をする。
覇極始天流とは。
イータ=アルカイドは元々は天流を学んでいたが、東方を旅していると、ある者から覇極流という流派を相伝した。その両方の流派の利点を創意工夫して、新しい流派を設立した。
イータは高名だが漂泊の武人と知られている。
ある時、公爵家に逗留する事があり、その際、ザガードはイータを師事して、覇極始天流を学んだ。
ザガードの筋が良かったのか、イータの教えを受けて、メキメキと実力を上げていった。
イータは公爵家を出る時にはザガードに奥義を伝授して、免許皆伝の印を授けた。
「それは凄いですね。あの流派で目録を得た者は、皆、高名な武人ですよ。その中に貴方も入っているとは」
「恐縮です。自分は兄弟子達に比べたら、若輩者です」
「おや、貴方は謙虚なのですね」
ザガードは頭を下げるだけで、何も言わない。
顔を上げると、ザガードはリエリナを見る。
「お嬢様。そろそろ、お暇しませんか?」
「ええ、でも、もう少し此処に居ても」
「早くここを出ませんと買い物が」
「そうですね。では、行きましょうか」
リエリナはそう言って、椅子から立ち上がる。
「じゃあ、ローザアリア様に一言言って、帰りませんと」
「っ⁉ ローザアリア様が居られるのですか?」
試合に集中していた所為か、ザガードはローザアリアが居る事に気付かなかった。
「ええ、ほら、あちらに」
リエリナが指差した先には、ローザアリアは隣にいるティルズと話しをしていた。
二人は笑顔を浮かべながら、楽しく話している姿がザガードの目に入った。
その光景を見ていると、何故かザガードの心がざわつきだした。
(何で、こんなに心がざわつくんだ?)
自分の事なのに、何故か分からないザガード。
何故か、心がモヤモヤしていると、剣術部から声が聞こえてきた。
「こ、こんな勝負は、やり直しだ!」
「一戦して疲労したのだから負けたのだっ。日を改めてやり直しを要求するっ」
剣術部の部員達が騒ぎ出す。
そう声が上がる度に、魔導剣闘術部の部員達は白けた空気をだす。
このままだと、また面倒な試合をする事になるなと思うザガード。
(面倒な連中だ。さて、どうしたものか?)
ここはフィリックに一言言って、静かに帰ってもらおうかと考えていると。
「いい加減にしなさい。貴方達」
静かだが、今にも噴火しそうな山のような圧迫感を感じさせる怒りを含んだ声が聞こえる。
ザガードはその声の主を見る。
「ローザアリア様っ」
「く、クラートゲシャップ家の令嬢が、何故ここに⁉」
この場に居る剣術部の部員は全員、貴族なのか、ローザアリアの顔を見知っているようだ。
「負けを認めず再戦を願うなど、恥知らずにも程があるわ」
「し、しかし」
「我らにも誇りが」
「誇りね。そんなちっぽけな誇りにすがるくらいなら、さっさと捨てなさいっ」
ピシャリと言うローザアリア。
親に叱られた子供の用に、身を竦める剣術部の部員達。
「これ以上、迷惑を掛けるのであれば、わたしにも考えがあるわよ」
ローザアリアがそう言うと、顔を青ざめる剣術部の部員達。
「「「し、失礼しましたっっっ」」」
剣術部の部員達は逃げるように、部屋から出て行った。
「ふん」
ローザアリアは剣術部の部員達の後姿を鼻で笑う。
「帰るわよ。シオーネ」
「はい。お嬢様」
ローザアリアはお供のシオーネを連れて部屋を出て行った。
ローザアリアが部屋を出て行き、少しすると魔導剣闘術部の部員達が話し出す。
「あれ以上、ごねられるのも問題だけど」
「だな。あのキツイ言い方はどうかと思うぜ」
「貴族が誇りを捨てろとか、無理だろう」
「言えてる。でもよ。あいつら大丈夫か?」
「クラートゲシャップ家に睨まれた家は、没落するっていう噂があるからな」
「ああ、聞いた事があるぜ」
部員達はそんな風に話しをしていると。
「はいはい。皆さん。明日の演舞に向けて、練習を再開ですよ」
フィリックが手を叩いて、部活を再開させる様に促した。
その声を聞いて、部員達は部活動を再開した。
「さて、俺もちょっと汗を流すか。お前はどうする?」
ティルズはザガードに声を掛けると、リエリナが答えた。
「わたし共は、そろそろ帰ろうと思います。良いですね。ザガード」
「承知しました」
リエリナがフィリックに頭を下げ、部屋を出て行った。
その後を、ザガードは付いて行った。
余談だが、試合がかなり長時間になった所為か、買い物の時間が無くなった。
お蔭でリエリナは一日中、目が笑っていない笑顔を浮かべていた。
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