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第二十五話

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 俺がこういう目に遭うのは、少しだけ時間を遡る。

 俺は作業場で砥石を研いでいた。
 刃物などを研いでいると、砥石は形が歪になってしまう。
 正方形の形をしていないと、ちゃんと研げない。
 なので、形を整える必要がある。

 丁度、仕事が無いので、砥石を研いでいた。
 誰も居ない作業場で石を研ぐ。
 研ぐ音だけ響く作業場。
 久しぶりに静かな時に、俺は何にも考えずに研いでいた。
 刃物を研ぐときは、角度、力加減などを考えて研がねばならない。

 何も考えないで手だけ動かすというのは、何と言うかクリアな気分になれる感じだ。
 そろそろ、金も溜まって来たし、都市に行けるかな。
 金は無限収納の中に仕舞っているので、誰にも取られる事が無い。
 村長に借りた礼を含めて、幾ばくかの金を渡して、村を出るか。
 
 そんな事を思っていると、扉が音を立てて開かれた。
 あまりに大きな音なので、作業の手を止めて振り返る。
「誰だか知らないが、もっと静かに扉を開けてくれないか」
 逆光で顔が見えない相手に声を掛ける。

 シルエットしか分からないが、二人いる様だ。
 徐々に光が目に慣れて来たので、その二人が誰なのか分かった。
 二人共女性の様だ。右の女性は白い肌。左の黄色い肌と二人共肌色は違ったが、着ている服は何かの動物の毛皮で作られたビキニ水着みたいな衣装であった。
 二人の身長は百七十はあった。
 右の女性は吊り上がった目に整った顔立ちをしていた。くすんだ金髪を肩まで伸ばしていた。
 大きな胸。六つに分かれた腹筋がある骨太な腰。大きいが筋肉質な尻を持っていた。
 左側の女性は切れ長の目に精悍な顔立ちをしていた。栗色の髪をポニーテールにしていた。
 こちらは、程よく大きな胸。引き締まった腰。胸よりも小さいが程よく肉が付いた尻を持っていた。
 二人の手には槍と斧を持っていた。
 仕事の依頼かなと思っていると、右側の女性が話しかけて来た。
「お前がこの村の刃物を研いだのか?」
 
 そう訊ねる所を見ると、仕事の依頼かな。
「ああ、そうだ。俺は研磨だけは出来るからな」
 本当は鍛治が出来れば良いんだが、そんなスキルが無いからな。
 まぁ、この場所だと炉もないから鉄を溶かす事も出来ないから無理なんだけどな。
 俺の言葉を訊くなり、女性達はボソボソと小声で話し出した。
 何だ? 何が目的で来たんだ?
 そう思いながら見ていると、女性の一人が球状の錘が付いた縄を取り出した。
 そして、その縄を俺に向けて投げた。
「ちょっ、なにを」
 投げられた縄は俺に絡みつき拘束された。

「良し。連れて行くとしよう」
「うむ」
 女性の一人がそう言って、俺を荷物を抱える様に持った。
「おぉいっ、いったい、何のつもりだっ」
「お前のスキルが必要だから連れて行く。それだけだ」
「だからって、こんなっ」

 いきなり、こんな風に連れて行く必要がある訳ない。
 と言うか、もっと理由を話せよっ。
「大丈夫だ。悪い様にはしない」
 そう言われても、途轍もない不安しかないんだけど。
「と言うか、何をさせるつもりだよっ」
「行けば分かる」
 そう言って、俺を荷物の様に運んで行く。
 俺がどれだけ暴れても、拘束が解かれる事は無かった。 
 村を出て行く途中、村人達が荷物の様に連れて行かれるのを見るなり、声を掛けて止めるが。
 
「邪魔をするな。こいつが必要だから貰うだけだ」
「だからって」
「邪魔立てするのなら、蹴散らしてでも通るぞ」
「痛い思いをしたくないのなら、退け」
 切れ長の目の女性がそう言うと、村人達は及び腰になった。
 まぁ、戦闘力から考えると、こっちの方が強そうだからな。そういう反応になるのは仕方が無いな。
 村人達も余所者である俺を其処までして助けたいと思わないのか、身体をずらして道を作った。
 村人達は無言で、視線を下に向けた。
 
 罪悪感を感じているのが、見ているだけで分かった。
 まぁ、それだけでも十分だな。
 村人達の妨害が無くなった女性達は村人達を一瞥すると、自分達が乗って来た馬の下まで行き、俺を脇に抱えて馬に跨り、村の外へ出て行った。
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